今月は、
ミステリー 「 誰のための綾織 」、
古典 短篇集 「 ホフマン短篇集 」、
ミステリー 「 殉教カテリナ車輪 」 の 3冊。
「 誰のための綾織 」 飛鳥部勝則
本格ミステリー 作品。
ブログで 気になった 作家で、初めて読みます。
名前は 知ってはいたんですが、本屋や 近場の 図書館で 見掛けず
スルー してました…。
「 罪を認めさせるため 」 孤島に 拉致された 女子高生と教師たち。
夜、日本家屋で 殺人が 起こるが、その部屋の 三方の部屋には
それぞれ人が、もう一方の窓には鍵が掛かっていた…。
初めて読む作品 にしては “アレ” な感じもしますが、とても
面白かったです。
終盤で 気持ちよく 騙されましたね。
一応、違和感は 感じて、確認も したんだけど、そこから 続かなかった…。
“似た トリック” は 3作品くらいで 体験済み?だったんですけどね…。
構成も 工夫があったし、ドラマ性も ありました。
“タイトル” も 終盤 効いてきましたね。
“あの推理” も 結構 好きです。
あと、ホラーな要素も 少しあり、アルジェント作品を 彷彿とさせる場面や、“チャッキー” の名が出たのも 地味に 嬉しいな~。
好みの作品で かなり 面白かったですね。
「 ホフマン短編集 」 E.T.A.ホフマン
短編集で、全6篇。
「 砂男 」( 1817年 発表 ) 目当てで 読みました。
他に 「 クレスペル顧問官 」、 「 G町のジェズイット教会 」、
「 ファールンの鉱山 」、 「 廃屋 」、 「 隅の窓 」。
小林泰三 の 「 ○○殺し 」シリーズ ( 「 トカゲのビル 」シリーズ? )の
1作目( アリス )と 3作目( ドロシイ )は 比較的 なじみの作品が
モチーフ で、作品世界に 入り易かったのですが、
2作目 の 「 クララ殺し 」 の モチーフ は
ホフマン の 「 砂男 」 や 「 くるみ割り人形と鼠の王様 」 などで、
なじみがなく、いまいち ノレなかったんですよね…。
で、その 「 砂男 」 が 面白そうで 気になってました。
「 砂男 」 は 数年前 再販 されていますが、今回 読んだのは
84年版 で、字が小さく、読むのに時間が 掛かってしまいました…。
それと、「 くるみ割り人形と~ 」 は バレエ 「 くるみ割り人形 」 の原作ですが、
「 砂男 」 も バレエ 「 コッペリア 」 のモチーフ になってるんですね。
( 明るい内容らしい )
「 砂男 」の 軽いネタバレ 記載 あり。
「 砂男 」 は、簡単にいえば 「 男が狂う 」話。
主人公・ナタナエル の子供の頃 聞いた “砂男”の話 があったり、
不気味な 人物、コッペリウス と コッポラ のほか、
「 自動人形 」 も 出てきます。
序盤は ナタナエル の 子供時代の話( 手紙 ) で、
“砂男”=コッペリウス と 思い込む きっかけになった 出来事が
悪夢のようで 雰囲気が ありましたね。
作家の 傾向を 知ったうえで 読みたかったので、
この作品は 最後に 読んだのですが、他の作品より 幻想、幻覚的で、
夜、父の部屋に現れる “砂男” を 確認する ナタナエル が
目撃した、錬金術?な描写は なかなか 異様で、好きな場面です。
中盤、スパランツァーニ教授 の娘、オリンピアの 目撃から、
下宿先の火事、 「 望遠鏡 」を 売りに来た コッポラ など、
意図や 運命を 感じて、不穏さが 高まります。
実は ナタナエル が 恋した オリンピア が 「 自動人形 」 なんですが、
全然 気づかないんですね。
周りの人も オリンピアの ぎこちない動きに いぶかしむも 気づかないのが 面白い。
オリンピア の「 不自然さ 」 を 全く 気にしない ナタナエル に、
彼の 狂気の発露 が窺える…かな?
あと、「 目 」( 見る ) も 重要な要素。
“砂男” は 子供の目に 砂をどっさり 投げ込み その “目” を取るし、
ナタナエル は コッポラ から 買った 「 望遠鏡 」 で オリンピア を 覗くし、
誰も オリンピア が 「 人形 」だと 気づかないし…。
( “見ている” ようで “見えていない” のが 怖い )
コッポラ の名前も コッポ( 眼窩 )から 来ているみたいです。
他の作品でも 「 女神の夢を見たり 」、
「 手鏡で女性を見たり ( 覗いたり )」、 「 窓から 人々を観察したり 」 と、
“見る事” への 信頼や 懐疑( 現実と 非現実の 境界の曖昧さ )を
強く 感じるんですよね…。
最後は 一旦 収束してからの 狂気の再発 という、サイコ・ホラー らしい展開で、結構 ゾワゾワ しました。
コッポラ も 最後まで 異様な印象 で、不穏さが 消えない のも 好み。
そうそう、クララ は ナタナエル の婚約者で、聡明な 女性で、
チョットだけ(?)、エライ目に遭います。
この 「 砂男 」 が 6篇の中で 1番面白かったですね。
あと、良かった 2作品。
「 クレスペル顧問官 」 は、
若い女性・アントニエ と 一緒に暮らしている 変人のクレスペル が、
美声を持つ 彼女に 何故か 「 歌を歌わせない 」…という、
人間・ミステリー。
「 砂男 」 では 「 人形 」 を 「 心のある人間 」と思う男の話 でしたが、
この作品は 「 “見えない” 人の想い( 心 ) 」 を 描いた
「 心の苦しみ 」 の話…かな?
最後は やるせない 終わり方 でしたね。
「 ファールンの鉱山 」 は、
船乗りの エーリス が、謎の老人に 誘われ 鉱夫になるが…という話。
エーリス が “地の女神” に 魅入られる?「 怪奇譚 」 として
読みました。 ( 日本の 古典怪談っぽかった )
これも 切ない 最後でした。
囚われ(?)の老人は 結構 楽しそうだけど…。
好みの作品で、面白かったですね。
「 殉教カテリナ車輪 」 飛鳥部勝則
本格ミステリー作品で、「 鮎川哲也賞 」 受賞作 です。
学芸員・矢部 は 無名の画家、東条寺桂( とうじょうじ けい ) の絵に 興味を持つ。
彼の絵、「 殉教 」 と 「 車輪 」 から、自殺した 桂の心情や 想い、
創作動機 を探るが、その過程で 過去の 「 密室殺人事件 」 を知る。
こちらも 構成が いろいろと 工夫されているのが 良かったです。
タイトルも インパクトが ありますね。
序盤の 学芸員・矢部 の “驚き” から 「 図像解釈学 」 へ進み、
その後の 「 『 殉教 』、『 車輪 』 の 鑑賞と 解釈 」 から
「 殺人事件 」 への流れが スムーズ で 話に 引き込まれます。
専門的 な 「 図像解釈学 」 の 説明も 分かりやすい。
その 「 図像解釈 」 は、映画の 演出や描写 から、
監督や 制作側の “意図” を読む のと 似ているんですよね。
あと、2枚の絵 「 殉教 」と 「 車輪 」 も 載っているので、
絵の解釈( 謎解き )の場面は 知的な スリリングさ を 味わえ、
ここだけでも ミステリー として かなり 楽しめました。
「 殺人事件 」の方は、
2つの密室と 1つの凶器、ほぼ同時?殺人 と、興味をそそる 設定。
ここも 「 誰のための綾織 」 と 同じく、チョット違和感 を覚え、
確認も したのですが、推理には 活かせませんでした…。
最後は 「 図像解釈学 」 に戻って来るので、“桂の想い” も わかり、
絵画ミステリー としても 人間ミステリー( ドラマ ) としても スッキリ
しましたね。
「 誰のための綾織 」 には、ホラー映画作品 を 思わせる場面が
ありましたが、
今作でも 唐突に入る 「 『 昔の TVのマジック・ショー 』 の思い出 」 が、
( マジックで 女性が切断されるが そのまま 番組が 終わる )
ハーシェル・ゴードン・ルイス 監督の
「 血の魔術師 」※(70年)っぽかったですね~。
( ※ 魔術師が マジックと 称し、観客の目の前で 選ばれた客 を殺すが、誰も ( 選ばれた客すらも )それに 気づかない?…という作品。
最後は TV中継される のだが… )
ミステリーだけではなく、ドラマ性も あり バランス良く 楽しめました。
でも、“真相” が ダメな人は いそうだな…。