「味は最高、でも設えは居酒屋。行ってみませんか?」

食通からありがたいお誘いをいただき、ご一緒しました。

ご一緒させていただくことになりました。

 

店主は50代。ここで10年修行しているという30代半ばの弟子がいました。

弟子を持つ料理人としては、お若い方だと思います。

しかし居酒屋と評されるだけあって、店内は地味。枯れた景色で、

蛍光灯はありません。油を焚いて明かりにしてもよさそうな風情です。

3代目か4代目なのかと想像しましたら、なんと初代。

店を出して、まだ16年だそうです。

ということは、居抜きで借りたのかと思いきやさにあらず。

出店にあたり、ご自身が造作したそうです。

答えは「杉」でした。

材料に杉を使うと、このように枯れた色がでるのが早いそうです。

杉の木肌は柔らかいので、色づきやすいとのことでした。

 

つまり緻密な計算なのですね。自分の料理をどういう空間で楽しませるか。

10年後、15年後の色を想像して造作する。

料理の腕は、日々の繰り返しで磨かれていくでしょうが、

店の枯れ具合が、渋さとなって、料理の価値をさらに高めてくれます。

店の暗さが、食材を光らせる。客の目は自ずと器の中に集中する。

すばらしい演出です。というより仕掛けですね。

 

時間と共に輝きを増す料理。店主がそれを設計したのです。

もう永遠ですね。模範の経営。拝見しました。

すべての中小企業に、こうした未来を創造していただきたいと願い、

案内してくれた食通に感謝した、週末散歩でした。

 

今週もお読みいただきありがとうございました。