飯塚毅先生は、職業会計人が巡回監査を実践する上での急所を残しておられます。

その一つが、「経営者の心にベルトをかけよ」

もう一つが、「経営者の心の指導ができなければならない」です。

税法のことも、会計のことも書いていないのです。

心のことしか説かれていません。ゆえに会計人は苦悩します。

入り口ではその意味がまったく分からないからです。

しかし巡回監査を四半世紀続けると、いつの間にかその真意が掴めるようになります。

「経営者の心にベルトをかけていなかったな」とわかる日が来るからです。

つまるところ、あるときは税法の改正部分をお伝えし、

またあるときは取引の処理方法を解説し、テクニックを説いていただけだった…

そのことにはたと気づくのです。気づいたときは、ショックです。

ああ自分の仕事はこんなものだったのか、という反省。

同時に、お客さまに裏切られた思いが込み上げます。

しかしやがてそこに気づけたことに幸福感を覚えます。

職業会計人の『基本講座』を繰り返し読んで来たから気づけたのだ、と悟るからです。

読んでいなければ、お客さまの現実を目の当たりにして、

「結局、職業会計人の仕事は、顧客の要求を満たすことだ」と理解して、

現実の泥に身と心を染めていくことになるのでしょう。

飯塚先生は「テクニックの指導は易しい」と言い切られています。

そのテクニックが仕事だと思ってしまうのです。

形の上では『基本講座』を読んでいるように思えても、

実はもぬけの殻だったという会計人を、幾人も見てきました。

そういう人たちは、いざというとき、気づけないのです。

「鍛錬」とはよく言ったものだなと、そうした現実に当たることで感じます。

飯塚先生は「修練」とも言いました。

日ごろ何もないときに、いかにして修練を続けけるか。

どれだけ本気で臨んだかが、いざというときに結果として現れます。

 

仕訳の山は、氷山の一角のようなものです。

見えるところがほんの少し。

海面の下には、途方もないほど巨大な氷の山が沈んでいます。

仕訳の山のことを会計では帳簿と呼びます。

帳簿で視覚化された情報は、ほんのわずか。

見えない氷の山に、無数の意思決定と行動が詰まっています。

それが経営者の心の様です。

そこを指導できる力を備えよと、先生は言い続けたのでした。

心の在り方が社会に向いていなければ、

企業を存続させ、成長させ、発展させることなどできません。

氷山の一角に過ぎない帳簿を見て、見えない山を浄化せよ、鍛えよと、

職業会計人の父は言い残したのです。

 

毎月、企業を訪問し、巡回監査を実施する。

TKC全国会の制定した、巡回監査チェックリストに基づいて、

取引事実の真実性と実在性と網羅性を確保していく。

そのデータを毎月締め切り、金融機関にも送信する。

決算になれば、税務監査証明書を添付して税務署に申告する。

こうした形式上の厳格性を追求していくのがTKC方式の会計ですが、

その厳格性が、次なる温床にもなりかねないという危険性も孕んでいました。

コロナで人心が大きく乱れています。本当は東日本大震災のときも乱れました。

その前にはリーマンショックで乱れました。

もはや乱れ慣れしているのが、

いまの経営者の実像でもある、という見方もできます。

 

ゆえに、職業会計人は、今まさに原点に立ち返るときなのです。

「経営者の心にベルトをかけよ」

「経営者の心の指導ができなければならない」

いよいよその領域に入る時が来たね!と皆で心を合わせた今週の会議でした。

 

すべては中小企業の「存続と成長と発展」のため!

いつもお読みいただきありがとうございます。