南海を皮切りに幾つかのチームで監督を務めましたが、

阪神だけはダメでした。

野球は、点さえ取られなければ絶対に負けません。


逆に、10点取っても11点取られたら負け。

1対0の試合をいかに拾うかなんです。

0点で抑えるには守りが重要。その主役は投手です。


阪神で監督を引き受ける際、球団は全面的支援を約束してくれたので、

「即戦力の投手を年に1人ずつ補強してほしい。

そうすれば3年で優勝も狙える」と言いました。


でも球団は「10年に一度の逸材だから、いい野手を取った」とかいって

お願いをなかなか聴いてくれなかった。

それでパッとしなかったいい成績を残せず、

監督をクビになってしまいました(笑)。


選手を把握するのにはキャンプの期間が一番適しています。

この時ばかりは千湯の頭も真っ白なので、色んな指導ができる。

監督の時、私は練習後に毎晩1時間のミーティングをしていました。


「人間は世のため人のために生まれてきたんだ」などと、

社会人としての基本中の基本から説いていた。

ミーティングがあるから選手は遊びに行きたくても行けない。

そういう外出をさせない知恵も使っていました。


ヤクルトの海外遠征アリゾナのユマでした。

ここは本当に何もないところなんです。

24時間野球漬け。だからいいキャンプになる。

しかし古田(敦也)が監督になって、ユマキャンプを止めちゃった。

それで勝てなくなった。せっかくいい形を後進に残したつもりなのに・・・


現役時代、スランプになって全然打てなくなかったことがありました。

その時読んだのが、『バッティングの科学』(テンド・ウィリアムズ)という本。

投手には必ず癖があって、球種でモーションが微妙に変わることを知りました。


それからというもの必死で投手の癖を研究するようになった。

打率が一気に上がったが、どうしても稲尾(和久)だけは打てなかった。

それで彼の投球を8ミリに撮影して研究した。


この経験がのちのID野球のきっかけにもなりました。


野村克也 東北楽天ゴールデン・イーグルス名誉監督


TKC会報11月号 89頁



さすが含蓄のある話です。ボヤキの奥に真理あり。

この方の話も直に聞いてみたいと思いますが、謝礼はまた桁違いなんでしょうね。