二、非上場会社の会計基準に関する懇談会
このような議論は、ASBJを事務局とする「中小指針」の検討委員会とはまったく別に、金融庁の指導の下で本年3月に組織された「非上場会社の会計基準に関する懇談会」(以下、「懇談会」)においてなされてきた。また、これとは別に中小企業においても、この2月に「中小企業に関する研究会(以下、「研究会」)が9年ぶりに復活されていた。このように新しい組織が生まれたのも、先に述べた日本商工会議所が起こした激震の余波であったようだ。
国家行政において会計は金融庁の所管であるから、この「懇談会」での議論が最終的な方向を決めることになる。そこでは行政の垣根を越えて、「研究会」の意見も尊重されている。これは希有なことだろう。
4月7日の第2回には、参考人としてTKC全国政経研究会政策審議委員長の久田英詞先生(TKC中部会)が出席された。
この懇談会には、日税連と会計士協会から会長さんが出席されていた。両社ともに「中小指針」の普及を推進する立場である。
久田先生は税理士と公認会計士の資格を持たれている。ご自身の所属する職業団体の長を前にして、TKC全国政経研究会を代表して異なる意見を述べるのは、勇気の要ることであったと思われる(注:グーグルで「非上場会社の会計基準に関する懇談会」と「久田英詞」をキーワードに検索すれば、久田先生の意見の要旨を読むことができる)。
6月24日の第4回には、日税連殿からの要請により、ミロク情報サービスの内部監査室部長G氏が参考人出席している。
TKCだけが会計人を代表しているわけではない。他のメーカーも呼ぶべきだ。」という意見が日税連サイドからでたからだ。
しかし、参考人として出席した方はミロクの従業員なのであって会社を代表する人物ではなかった。ましてやミロク・システムを利用する会計人の代表ではないのである。
すると久田先生はTKCというメーカーの代理者として招聘されたことになるのだろうか。これは非常に失礼なことであると思う。
公開された記録によれば、そのG氏は、「中小企業の会計基準は1つが望ましく、企業の規模や特性に応じてその適用事項や適用範囲を選択できる、そういう指針が望ましい。システムベンダーとしては、会計基準が複数の場合、それに合わせて複数のシステム開発が必要になる。」と述べている。
だから、会計基準が複数できて、システムを何通りも作らなければならないのはベンダーとして手間が大変だといいたいらしい。
だが、これほど奇妙な話はない。
システムはあくまでツール(手段)なのであって、目的ではないのである。目的が変われば、はいはいと、次々と手段を作り、提供していくことがわれわれの仕事である。
だから、自由に、正しい会計の確立を目指してご議論を進めてください。結論が出たならわれわれはいかようにでもシステムを開発致します。私が参考人として呼ばれたならそのように答えたはずである。
三、会計パラダイムが再び変わった
昨年の秋までは、IFRSへの対応をめぐって、会計学会も実務界も「連結先行」の一色であった。それがどうであろう。今日では「連単分離」が常識となっている。わずか1年で一変したのである。
また、会計学会では「中小企業の会計」の分野が、新しいフロンティアとして俄然注目されるようになってきているという。
また、最近報道によれば、上場会社においても連結はやむなしだが、単体は日本方式で行くべしとの声も上がり始めている。
いま、会計パラグラムが再び変わりつつある。その中心軸は確定決算主義の堅持である。
日本商工会議所がその重要性に気付き、理論武装し、日本の中小企業の救済を目的としてIFRSに反旗を翻すきっかけを作ったのはごく少数の勇気ある人たちであった。
ここでキーマンのすべてを御紹介するわけにはいかないが、TKC全国会においては、
坂本孝司会員(TKC静岡会)
久田英詞会員(TKV中部会)
松﨑堅太朗会員(TKC関東信越会)
河崎照行会員(TKC全国会顧問)
であったことは特記すべきことである。
満腔の感謝を申し上げる次第である。
とこしえ 2010年11月号