それから約十年後、私はNHK朝の連続テレビ小説『ひらり』を書くことになった。
先生(橋田壽賀子)は大喜びされ、一席設けて下さった。
私は暮色の熱海が一望できる一室(橋田の仕事場)で、
たったひとつだけアドバイスを頂いた。
「出し惜しみしちゃだめよ」
これは強烈だった。さらにおっしゃった。
「半年間も続くドラマだから、ついついこの話は後に取っておこうとか、
この展開はもう少ししてから使おうとか考えがちなの。
でも後のことは考えないで、どんどん投入するの。
出し惜しみしない姿勢で向かえば、後で窮しても必ずまた開けるものよ」
実はその時、私はすでに半年分の大まかなストーリーを作り終えていた。
出し惜しみと水増しのストーリーだった。
熱海から帰った夜、私はそれを全部捨てた。
向き合う姿勢が間違っていたと思った…
文 内館牧子
ートランベール 第21巻第11号2頁下段よりー
