200811291550000.jpg 紺ブレ300号!



それから約十年後、私はNHK朝の連続テレビ小説『ひらり』を書くことになった。
先生(橋田壽賀子)は大喜びされ、一席設けて下さった。
私は暮色の熱海が一望できる一室(橋田の仕事場)で、

たったひとつだけアドバイスを頂いた。

「出し惜しみしちゃだめよ」

これは強烈だった。さらにおっしゃった。
「半年間も続くドラマだから、ついついこの話は後に取っておこうとか、

この展開はもう少ししてから使おうとか考えがちなの。

でも後のことは考えないで、どんどん投入するの。

出し惜しみしない姿勢で向かえば、後で窮しても必ずまた開けるものよ」

実はその時、私はすでに半年分の大まかなストーリーを作り終えていた。
出し惜しみと水増しのストーリーだった。
熱海から帰った夜、私はそれを全部捨てた。
向き合う姿勢が間違っていたと思った…

文 内館牧子
ートランベール 第21巻第11号2頁下段よりー