巡回監査には、以下のように意義が定められています。
巡回監査とは、関与先を、毎月および期末決算時に巡回し、
会計資料ならびに会計記録の適法性、正確性、及び適時性を確保するため、
会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することである。
巡回監査においては、経営方針の健全性の吟味に努めるものとする。
期末決算時に行う決算巡回監査とに分けられる。
分解して実務に落とし込んでいくことが、すなわち事務所づくりになるのですが、
いま特に注目したいのはここです。
巡回監査においては、経営方針の健全性の吟味に努めるものとする。
「経営方針の健全性」?この文言に悩まされてきました。
さらに「吟味に努める」?この続く言葉も理解できませんでした。
経営が健全である、不健全であるは、決算書をみればわかりますが、
経営方針は、決算書には載っていません。
経営方針が健全であれば黒字になるし、自己資本も充実する。
不健全であれば、赤字になるし、借金体質にもなる。
結果として数字から読み取れるものだとしたら、見ればわかります。
つまり「吟味に努めるものとする。」というような、
漠然とした、曖昧模糊とした文言を使わなくてもよいはずです。
やはり、数字では見えないものを見なさいということなのですね。
このように約30年間、意義を読み続け、悩まされてきたわけです。
(略)
その答えになる飯塚毅先生のご指導があります。
「税法であれ、会計であり、テクニックの指導は易しい。
しかし、経営が人間による経営である限り、
結局は、その経営者の心を、どう方向づけ、
どう指導してゆくか、が最後に問われる所である。
会計人が、ビジネスドクターといわれる以上は、
会計人は、経営者の心の指導能力も、身につけて置かねばならない。
経営者という人間に方向を与えてゆく仕事、
それは子の世で最も偉大なる仕事であり、
会計人は、その任に耐えるだけの自己の人間性の錬磨に励まねばならぬ。
『TKC基本講座』<理念遍>第3版 158頁
会計人として最後に問われる所は、「経営者の心の方向づけ」であり、
「経営者の心の指導」だと結論づけておられます。
数字を見て、数字を見ず…という域に達することが願われています。
「経営方針の健全性の吟味」とは、
「経営者の心の健全性」を吟味せよということだったのです。
巡回監査に不断で取り組む職員さんは、確実にこの域に入っていきます。
本人も知らぬ間に、その境涯になってしまう…これが巡回監査です。
その境涯に達した職員さんの放つオーラは半端ではありません。
神々しいという他ない光彩で包まれた姿。
恐らく、お客さまは、拝んでいるのではないかとさえ思われるのです。
そのように成長してしまった職員さんを、心底尊敬する所長。仕合せ者です。
飯塚先生への感謝の思いは尽きません。
お客さまの健全な発展を願い、ますます全力で巡回監査に当たります。
すべては中小企業の「存続と成長と発展」のため!
いつもお読みいただきありがとうございます。