新型コロナウィルス感染拡大の影響による自粛で、歌舞伎の上演が止まって

いるのは、現在の状況で、5・6・7月の團十郎襲名の延期と、7月松竹座そして

国立劇場の7月歌舞伎鑑賞教室までだ。国立劇場は、どの役者さんが主演で

何の演目を演るのかすら発表していない。ただ、6月鑑賞教室は尾上松緑丈が

自身が主役・長兵衛を勤め、坂東亀蔵丈が文七の「人情話文七元結」と発表したが。

尾上松也丈と中村梅枝丈の9月の巡業さえ、早々と中止になってしまっている。

 

そして再開が見込まれるのは、既に発表がされている公演として、8月1日からの

坂東玉三郎丈の南座の舞踊公演がある。京鹿子娘道成寺、鷺娘、楊貴妃を、

映像を交えて舞うという意欲公演だ。歌舞伎の危機を、颯爽と玉三郎丈が救う、

そんな流れになるのも、歌舞伎らしくていいと思う。まだ発表されてもいないが、

歌舞伎座の八月納涼歌舞伎も考えられるが、初日が8月に入って少しした後と

思われる。ゆえに現時点で最速は、8月1日の玉三郎丈ということになるだろう。

 

團十郎襲名が延期と発表された際、ウェブ報道で「9月からにずらして襲名を実施

する」という案が浮上していると、見かけた。コロナが収束していることを見込み、

また酷暑の炎天下を避ける具合によるのだろうか。八月納涼歌舞伎をやって、

九月から晴れて襲名を、という運びなのか。ただのウェブ報道だが、それもいいなと

僕は思った。そこに歌舞伎らしさを感じたからだ。昭和20年9月1日に、戦後初の

歌舞伎が二代目市川猿之助一座により東劇で再開されたから。第二次世界大戦に

続く危機というコロナショックの後の歌舞伎再開が「9月1日」というのも、歌舞伎の

因縁のようで、しっくりくるのだ。つまり團十郎襲名再開は2020年9月1日となるか。

八月納涼歌舞伎を心待ちにする歌舞伎関係者、贔屓筋には失礼な話かもだがね。

 

さらに言えば、既に発表されている歌舞伎興行で、尾上松也丈を座頭にした巡業が

8月31日から始まる。中村梅枝丈を相手に「毛谷村」と「二人椀久」を掛ける公演だ。

8月の酷暑と夏休みの賑わいを避ける配慮があるかもとして、玉三郎丈と納涼組に

失敬するとすれば、今回の歌舞伎の再開は、8月31日になる、とうのが僕の考えだ。

 

市川團十郎襲名が9月1日とすれば、その前日8月31日は、初日通りの舞台稽古が

無観客で行われる事となる。そこで強く提案するが、その舞台稽古を撮影・収録して、

千秋楽後から月の末日まで、Youtubeで無料配信して欲しい。舞台の上手から下手

まで見渡せ、花道の七三まで見える定点カメラの映像で結構だ。横長の映像になる

ので上下に画面の余裕があるから、字幕を「日本語」「日本語のローマ字」「英語」の

3点で付ける。そうすれば、世界中に歌舞伎を発信できる。例えるなら、外国人観客が

幕見席で歌舞伎を観て、激しい衝撃を受ける…そんな仕組みを作って欲しいのだ!

僕の4月25日のブログ「片岡愛之助丈とコロナ自粛と歌舞伎配信の提言」の通りに、

松竹株式会社にメールで、この提言を送信した。アドレスを貼っておくのでご覧あれ。

https://ameblo.jp/bentenko/entry-12592196340.html

コロナ対策の「新しい生活様式」のひとつとして、今回の歌舞伎再開を絶好の好機に、

ぜひに実現して下さることを、強く希望します!よろしくお願いします、松竹様サマ~

 

私事で恐縮だが、私、外郎童の誕生日も9月1日なので、十三代目團十郎白猿の

誕生を目撃できるのかと、手ぐすね引いて喜んでいる。ちなみに、市川海老蔵丈が

新之助時代に、初役で助六を勤めて初日に花道に登場した際、花道脇の客席で

中継画面の片隅に外郎童が登場している。助六の動きに合わせ絶妙に動いており、

例えば助六が下駄を「タン!」と鳴らすと、外郎童は見事ヘッドバンキングしている。

我ながらだが、あんなに瞳をランランとさせ歌舞伎を観る人を、僕は見た事がない。

NHKの中継映像をビデオに撮ってたが、実家で紛失してしまい、今では見られない。

 

話が脇道にそれたが、9月からの團十郎襲名再開だと、現在発表の5・6・7月公演が

そのままスライドする格好か。もともと9月は、中村吉右衛門丈が催す「秀山祭」で、

吉右衛門丈は「寿曽我対面」で工藤左衛門祐経の配役だが、初代の芸を受け継ぐと

いう趣向に沿うので問題は無いだろう。初代吉右衛門は昭和14年3月に歌舞伎座で

工藤を勤めているからだ。團十郎襲名と秀山祭のコラボとなり、二倍美味しい企画だ。

 曽我五郎は、菊之助丈の曽祖父の六代目だ!

 

しかし、10月公演にあたる元の6月公演に問題がある。夜の部の歌舞伎十八番「鳴神」に

鳴神上人を勤める片岡愛之助丈が、既に発表されている通り、10月は大阪松竹座にて

「GOEMON」に主演する。まさか團十郎襲名に合わせて「GOEMON」中止は無いだろう。

 

僕が言いたいのは、ここからだ。つまり最初から、愛之助丈の6月團十郎襲名出演自体が

あくまで僕的にだが、よろしくないのだ。まず、演目から。「鳴神」の鳴神上人を愛之助丈が

演るのは、市川海老蔵丈が大阪松竹座で掛けた際に怪我で休演して、代役として勤めた

のが初役だったからだ。しかも、「鳴神」の前の「外郎売」は、堀越勸玄丈が新之助襲名を

襲名する大切な演目なのに、これまた海老蔵丈が暴力事件に巻き込まれ降板となった

外郎売役の代役を、愛之助丈が勤めているのだ。おめでたい襲名であり、しかも6月は

暫、外郎売、鳴神、勧進帳と、成田屋お家芸の歌舞伎十八番4連発なのに、代役上演を

思い出させる愛之助丈に「鳴神」をさせなくてもよいではないだろうか。そんな細かい事は

いいだろうという向きが多いだろうが、僕はそう思うのだ。せっかく鳴神を出すのならば、

新・團十郎丈に所縁ある役者の方がいいだろう。尾上菊之助丈が勤めるのが良いと思う。

菊之助丈は未来に、八代目菊五郎を襲名する際に、父君・七代目菊五郎丈が「助六」を

「助六曲輪菊」として出したのに倣い、当然に八代目にも演って欲しい。歌舞伎十八番に

ある「助六」を演る前に、菊之助丈が未経験の歌舞伎十八番の主役を、まずは「鳴神」で

手掛けて欲しい。相手役の絶間姫は、ナウシカとインド歌舞伎で相棒の中村七之助丈。

團十郎襲名に相応しい配役ではないだろうか。「菊之助の鳴神はニンじゃ無い」という

向きもあろうが、例えば十代目坂東三津五郎丈は、初役で鳴神を打診された際に自分の

ニンじゃないと断ったが、永山会長は「お前は鳴神のような線の太い役をやるべきだ」と

諭され、実際に演じてみたら自分の突破口となった、と語っている。尾上菊之助丈にも

同じことが言えると僕は思う。6月團十郎襲名の「鳴神」は、菊之助上が演るべきだった。

 

しかし6月は、菊之助丈が博多座出演が予定されていた。このこと自体が間違いだった。

6月博多座は、中村梅玉丈を座頭に、尾上菊之助丈が加わり、立女方を中村時蔵丈が

勤める座組だ。菊之助丈は、「團菊祭」もあるように、市川團十郎と所縁が深く、しかも

菊之助丈と海老蔵丈は同い年で、昔から切磋琢磨した仲だ。海老蔵丈が以前に雑誌

「SWITCH」で、「仁左衛門さんがいる、玉三郎さんがいる、勘三郎さんがいる、そして

俺には菊之助がいる」と語っている。しかしその後、二人が相棒として歩んでいる様子は

見えないが…。菊之助丈はNHK「スタジオパークこんにちは」で、市川海老蔵丈を称して

「実にシチ面倒臭い奴ですね」と、眉間にシワを寄せて力説していた。笑っちゃったが。

とどのつまり、菊之助丈は團十郎襲名に出ずっぱりして欲しいのが、僕の考えだ。

 

ならば6月博多座は、どうすれば良かったのか。中村梅玉丈と片岡愛之助丈を中心とした

座組にすれば良かったのだ。僕は愛知県住まいで、御園座改修の5年間は金山にある

市民会館で顔見世興行が行われたのを観たが、立ち上げの初年は福助・橋之助兄弟で、

座頭が吉右衛門、菊五郎、仁左衛門と続いたが、最終年は梅玉&愛之助であった。

僕は当然にラストは幸四郎で、四大幹部が全員来てくれると期待していたのだ。実に

悪い口でいえば、梅玉&愛之助を「あてがわれた」感じさえするのだ。しかし、そこは

我らが愛之助丈である。永楽館やシスティーナで掛けた演目を、大興行に昇華させる

手腕を持つ彼だから、「梅玉・愛之助一座」を他の大劇場に持っていって欲しいのだ。

 

それが今年6月の博多座大歌舞伎。例によって時間が無いので、駆け足で書いていく。

座頭・梅玉で、愛之助に、相棒の壱太郎、そして梅玉の養子となって襲名した莟玉だ。

これは、養子が三人揃うという、実に面白い座組である。演目をささっと書いていこう。

 

昼の部

 

【番町皿屋敷】

青山播磨  愛之助

お菊     莟玉

 

【封印切】

忠兵衛   梅玉

梅川     壱太郎

八右衛門  愛之助

 

【新口村】

忠兵衛   梅玉

梅川     壱太郎

孫右衛門  梅玉

吹替     愛之助

 

夜の部

 

【鈴ケ森】

権八     莟玉

長兵衛    梅玉

 

【蜘蛛糸梓弦】 愛之助

 

【沼津】

十兵衛 愛之助

お米   壱太郎

平作   梅玉

 

こうである。愛之助丈は金山で「皿屋敷」が掛かった際、「梅玉にいさんの播磨、好き

なんですよね~」と語っていたので、可憐なお菊に莟玉を伴って、演って欲しいのだ。

「封印切」の忠兵衛は、梅玉丈の中にある和事味を存分に発揮して欲しい。孫右衛門は

金山で掛けた際「梅玉丈は孫右衛門を、ことのほかお気に入りの様子」と、竹本葵太夫が

語っていたので、せひ再演して欲しい。「鈴ケ森」の権八は、父君の梅玉丈と対峙して

莟玉丈に博多で披露して欲しい。愛之助丈に華やかな蜘蛛の舞踊を魅せて欲しい。

「沼津」は孫右衛門の老け役がお気にの梅玉丈に、雲助平作を滑稽味に演じて欲しい。

「敵は九州・相良~!」と、ご当地・九州でビシッと締めて、観客を満足させて欲しい。

 

以上である☆