血槍富士 | 活動弁士は七変化

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映画はかつて無声で、生の語りで説明者がいたのです!

ラピュタ阿佐ヶ谷で22日からスタートした

~東映ビック・スタア大行進~

「痛快!時代劇まつり」のオープニングは千恵さん主演の

「血槍富士」だというので、いそいそとラピュタへ・・・

 

 

 

ラピュタは錦之助映画祭り以来で、一年のご無沙汰でした。

 

弁士になりたての頃(2001年~)に、

東映等の時代劇は都内名画座や国立映画アーカイブやレンタルビデオで

一時期狂ったように観てました。

新宿の昭和館や中野の武蔵野ホールなどがギリギリ間に合って、

(次々と閉館してしまった~涙)

戸惑うような客層(怪しげな老人の坩堝に感じてた!)の狭間で、

どきどきしながら錦ちゃんの「宮本武蔵」五部作や

月形の「水戸黄門」シリーズを楽しんでました。

 

最初に「血槍富士」を観たのはアーカイブ?いや新文芸坐かも・・・

その頃千恵さんといえば

無声映画時代の「瞼の母」を代表とする千恵プロ作品や、

トーキー直後の「忠臣蔵 天の巻・地の巻」などで演じていた

眉目秀麗なる武家もしくは渡世人の印象しかなかったのだけれど、

(「赤西蠣太」は観てたのに!忘れてましたね)

 

「血槍富士」(1955年)での千恵さんは、

人柄はいいけど酒癖の悪い若様に仕える

強く優しい槍持ち。

東海道を江戸に向かいながら、

そこに絡む様々な人たちが織り成す所謂ロードムービーなのかなと、

タイトルから想像する内容とは裏腹な

時に笑って時にホロリとさせられる群像劇に浸っていると・・・

クライマックスにはとんでもない大立ち回りの展開が待っている。

 

(ネタバレなしでラピュタへ観に行って頂きたいなと思っていたら、

「血槍富士」は一日二回の上映があったので昨日で終了してました!

DVDも出ているけど、出来れば最初はスクリーンでご覧頂きたいな。

・・・この後にはネタバレありです。)

 

 

 

 

 

 

 

身分の貴賎を問わない人格を持つ主人・小十郎。

その優しき主人の一凶が酒癖の悪さ、ここがもう何とも人間くさい。

本来は美徳である筈の小十郎の人格、優しさが全て裏目に出るシーンに

何とも胸が痛む。

 

「正しいものが勝つとは限らない」

 

何とも理不尽な奴らにあっけなく奪われる聡明ないのち。

主君の仇を討たんと槍を振り回す千恵さんの立ち回りも、

勧善懲悪で主役が活躍して大団円の東映時代劇ではない。

 

同宿になったゆきずりの娘が女衒に売られるのが不憫で、

自らの天下の宝槍を質に入れようとする優しき武士、

身分の貴賎に疑問を抱く聡明さがありながら、

その酒癖の悪さで身を滅ぼす小十郎の島田照夫が秀逸だと思っていたら、

戦前の無声映画時代から千恵プロで活躍していた尾上華丈の息子であったと!

(今回初めておじさま達に教えて頂きました。)

 

権八と同じく小十郎に仕える下郎・源太役の加東大介がまたいい!

(前年に「七人の侍」で七郎次を演じてこの時は槍をぶんまわしてましたね。笑)

しかも東宝所属なのに東映の本作品で主要人物を演じ

この年二回目のブルーリボン助演男優賞を受賞してます。

長門裕之と津川雅彦の叔父、澤村國太郎と澤村貞子の弟である事は有名ですが、

この源太役は加東大介以外に考えられないと思うくらいのハマリようです。

 

子役が二人出てきますが、どちらも千恵さんの実子です。

特に浮浪児の次郎・植木基晴との掛け合いが最高。

次郎が権八からもらった金で暴食して腹を壊すシーンは、

まるで小津の「出来ごころ」での突貫小僧のようです。

 

そう言えば、

この作品の企画協力に小津安二郎・伊藤大輔・清水宏などの

ビックネームが並んでいる。凄いな。

(伊藤大輔のセルフリメイク作品「下郎の首」も同じ1955年作品。)

 

戦後やっと日本に復員してきて十三年ぶりに撮った内田吐夢作品は、

親友だった前年に亡くなった井上金太郎の戦前作品「道中悲記」をリメイクとあるが、

フィルムは現存せず。

その時の権八役である月形龍之介は、今回も重要な役で出演。

最初に押入れから出てきた時は、

どんな悪いことしたんや!?と疑って悪うございました。

 

 

 

 

・・・とりとめもなく、つらつら書いてきてしまいました。

とどのつまりが「血槍富士」名作です。

内田吐夢作品は現存しているものはほぼ観てますが、

最も好きな一本です。

 

今回ラピュタでは上映終了してしまいましたが、

未見の方は是非次の機会にご覧下さいませ。

待ちきれない方はDVDで!!笑

 

「痛快!時代劇まつり」は5月23日(土)まで。

濃厚接触に気をつけながら、

また伺いたいと思っております。

プログラム&時間はコチラから

http://www.laputa-jp.com/laputa/program/toei-jidaigeki02/

※コロナの影響で上映スケジュールは変更する可能性がありますので、

直前にも確認する事をお勧め致します。

ラピュタ阿佐ヶ谷公式HP

http://www.laputa-jp.com/

 

 

三本一緒に観て下さった

愛するおじさま達と撮った写真も再度UPしておきます。笑

 

右から

 画家の桜井宏さん、脚本家の石森史郎先生、縁寿、

今回の企画をプロデュースした藤井秀男さん。

 

 

三本観たのだから他の映画の事も書けよ!!笑

 

 

ひばり&千代ちゃんも良かったけど、

千原しのぶ様演ずる尾上の立居振舞いが美しかった。

千恵さんの娘である子役の植木千恵が重要な二役を演じていて

ええ仕事してました!

 

 

あとから考えたらやっぱりこの作品一度観ていたみたい。

弥次喜多モノも沢山あるのでごっちゃになってますが・・・

映画館ではなくVHSだったようにも思います。

 

勲ちゃんが珍しくおちゃらけた役で可愛い!