『日本海海戦とメディア 秋山真之神話批判』『坂の上の雲』 『 海軍と日本 』 (つづく) | 鞭声粛粛、夜本を読む

『日本海海戦とメディア 秋山真之神話批判』『坂の上の雲』 『 海軍と日本 』 (つづく)

   戦争の世紀を予告することになった日露戦争。虚構のロマンには自省的であっていいと思う―。 こうして冷静に筆を運ぶ良書が『 日本海海戦とメディア 秋山真之神話批判 (木村勲著、講談社)


  じっくり書いた推理小説を驚きながら読み解くような、 あるいは「歴史はその時動いた」の100倍面白いと言っていいような、そんな本。 あがめ立てて、 松山市にある銅像に詣でたこともある私のような輩には、 なかなか手厳しい本でもあります。 鞭声粛粛、夜本を読む 面白い本のガイド


サーチ『 坂の上の雲 』 連載終了後に陽の目 極秘公文書


  筆者によると、 海軍軍令部が作成した史料は 「 極秘明治三十七八年海戦史 全116巻 」と、 軍事機密を伏せた一般向けの公刊書 「 明治三十七八年海戦史 上下 」の2バージョンがあった。

  「 極秘… 」 は大部のため艦隊司令長官らから“職場”への配布を敬遠され、 死蔵されることになった、 といいます。 現在、 「 極秘海戦史 」の原本は防衛研究所図書館と米議会と書簡に1セットずつ保管されているそうです。


  筆者によると、 『 坂の上の雲 』(文藝春秋)のサンケイ新聞(現・産経新聞)連載が終わった数年後の1980年ごろから 「 極秘海戦史 」 の閲覧が可能になりました。 これをもとに、数々の真相が分かった、 というのが『…とメディア 』の真骨頂でしょう。


  つまり…

鞭声粛粛、夜本を読む 面白い本のガイド  国民的大著『…雲』は、取材に長けた司馬遼太郎氏でさえ真相に触れられずに書かざるを得なかった、ということになります。 読んでいると何かしら奮い立ち、 国家の盛衰と自らの人生を一体化して考えるような文字の力を存分に示した作品ではありますが。鞭声粛粛、夜本を読む 面白い本のガイド


  また、 「 極秘海戦史 」 が死蔵され、 軍部でさえ有効利用できなかったことは確かです。 海軍の精神的硬化の背景や、国家・国民を死の淵に追い込んだ責任を追究した 『 海軍と日本 』 (中公新書)の著者で、海軍兵学校出身の池田清・元東北大教授も、 戦闘が開始されて30分で勝敗が決したと、ヒロイックな話を史実として認識せざるをえなかったのです。

(つづく URLは以下の通りです。http://ameblo.jp/benseishukushukuyoruyomu/entry-10200790880.html