日曜日の麻生家のキッチン。夕食の支度。献立はクリームシチュー。妻は玉ねぎとにんじんをやや大きめに切り終えると夫に声を掛けた。まもなく、エプロン姿の夫が現れ、慣れた手つきで、ジャガイモの皮を剥き始める。この家ではジャガイモの担当は夫だ。元来、大雑把な妻がジャガイモを扱うと、原形の半分しか残せないため、煮込んでいる間に殆ど溶けてしまう。そのため、過去、数回、ジャガイモの入っていないシチューやカレーが食卓に上ったことがあった。妻に原因があるとわかってからは、夫がその仕事を引き受けるようになった。ロールキャベツ用のキャベツを破らずに剥がすことなど、総じて、丁寧さが求められる作業は夫が引き受けた。
 夫の仕事は妻が呆れるほどに丁寧だ。根気よくジャガイモを相手にしている夫の傍らで、妻はワインを飲みながら、読みかけの本のページを捲った。彼女は常に読みかけの本をもっており、夫の次に好きなものは読書と言えるほどの読者家だった。
 麻生家のいつもの風景。ちょっと羨ましくなる夫婦の一コマ。