相部屋の隣の70代くらいのお婆さん、病院の規則でテレビはイヤホンで聴くことになってるのにそのまま音を垂れ流し。何度も看護師さんに注意されてもまた繰り返す。認知機能に問題のある方なのかもしれない。カーテン超しにテレビの音だけが聞こえて看護婦さんが消しにくるのイタチごっこ。しかも本人寝てる。ワールドカップラグビーの大歓声でバレてまた看護師さんが消しにきて。そんな深夜、次は部屋を徘徊しだした。その音を察知した看護師さんが「テレビは見ないでください!」と注意したところ、実際にはテレビをつけてなかったお婆さんは逆上しブツブツ独り言を言い出した。「私見てないのに、絶対お隣さんだわ!」と念仏のように唱え出した。自分は病院に来てからTV見てない。
深夜3時、カーテンが開く音が聞こえて恨めしそうな老女がこっちを睨んでる。
私 「なんですか?」
老女「あなたテレビ見てるでしょ。私見てないわよ。」
私 「私ここ来てからテレビ見てないですよ。」
老女「そんなハズないわ。私見てないし。時折あなたウーンとか唸ってるでしょ」
私 「それはテレビと関係ない話、今テレビの話をしてるんでしょ。手術直後の痛みで寝込んでるときのことを言われても困ります。」
一つ、我々は心身を錬磨し、確固不抜の心技を極めること。
たとえそれが幽霊であったとしても自分は動じない。
老女は恨めしそうにカーテン閉めてまた呪文を唱えながらまた部屋を徘徊しだした。
翌朝、病棟の看護婦さんにいきさつを説明したところ、丁寧な謝罪の後に部屋を変えてくれた。新しい部屋はテレビの音も徘徊音も聞こえない。響くのは耳の遠いお婆さんの大声と隣の集中治療室のうめき声。