「セルラー」
モロッコの草原。
羊飼いのアシュラフのある一日。
日も暮れかけた頃、1頭の羊「アトゥーネン」が見当たらない。
鼻に大きな傷のある、やんちゃな雄羊だ。
アシュラフは、顔色ひとつ変えず、汚れたズボンのポケットから、
ノキアの携帯を出して、短縮ボタンZを押す。
「サラマリコム、ザイード。うちの羊が1頭みあたらないんだけど、
そちらの群れにまぎれていないか?」
「えっ、そうそう鼻に傷のある雄羊。じゃあ、後で迎えに行くよ。
何、そうか、ありがとうザイード。その情報はありがたい、じゃあ」
電話を切ると今度は、短縮Y押すと、アラビア語ではなく英語で話し
はじめた。
「ハイ。富士通の株を、手持ちすべて売ってくれ。今すぐ!東証がひける
前に」
そして、汚いずた袋から、極小の手帳型パソコンを取り出す。
先ほど得たばかりの情報を、世界中の投資家たちに発信する。
送信後、となりのマキバに行ってしまったアトゥーネンを引き取りに、
きれいな夕焼けに照らされた、でこぼこした丘を、一人下ってゆくアシュラフ
青年であった。
◎ベールをかぶりつつも、極小携帯を利用する姿。
世界は小さく、均一化されてしまったと感じて、ラバトで書いたものです。
モロッコの草原。
羊飼いのアシュラフのある一日。
日も暮れかけた頃、1頭の羊「アトゥーネン」が見当たらない。
鼻に大きな傷のある、やんちゃな雄羊だ。
アシュラフは、顔色ひとつ変えず、汚れたズボンのポケットから、
ノキアの携帯を出して、短縮ボタンZを押す。
「サラマリコム、ザイード。うちの羊が1頭みあたらないんだけど、
そちらの群れにまぎれていないか?」
「えっ、そうそう鼻に傷のある雄羊。じゃあ、後で迎えに行くよ。
何、そうか、ありがとうザイード。その情報はありがたい、じゃあ」
電話を切ると今度は、短縮Y押すと、アラビア語ではなく英語で話し
はじめた。
「ハイ。富士通の株を、手持ちすべて売ってくれ。今すぐ!東証がひける
前に」
そして、汚いずた袋から、極小の手帳型パソコンを取り出す。
先ほど得たばかりの情報を、世界中の投資家たちに発信する。
送信後、となりのマキバに行ってしまったアトゥーネンを引き取りに、
きれいな夕焼けに照らされた、でこぼこした丘を、一人下ってゆくアシュラフ
青年であった。
◎ベールをかぶりつつも、極小携帯を利用する姿。
世界は小さく、均一化されてしまったと感じて、ラバトで書いたものです。