「初めての旅行 ㊤」

いくぶん機嫌の悪いパウロおじさんに急き立てられて、
パコ、アントン、アポロニアらとトラックに乗った。
小さなトラックなので、とても狭く、頭を動かすことも
ままならない。それにしても、なんて気持ちがいいんだろう。
そよ風を受けて、初めてみる景色は、みたこともない建物や
オリーブの木々が、どんどん流れてゆき、いくら見ていても
飽きない。あんまりスピードが速いので、アントンは気分が
悪いようで、ぐったりしている。
パコは興奮していて、アポロニアと交尾をしようと、体を動かす
のだが、あまりにも狭い荷台なので、空しく頭をあちこちにぶつけて
いる。たまに、アントンにパコの角がアタルると、彼は、不機嫌な
声を上げている。アポロニアは、そんなパコを気にもとめず、
うっとりと、初めて見る景色にみとれているようだ。
彼女の睫毛が、こころなしか潤っているようだった。
僕はというと、昨日4歳になったばかりだった。
メリーナおばさんに、丁寧にブラシをかけてもらったせいもあって、
自慢の栗毛が、心地よく風になびき、仕合わせいっぱいで、いったい
どこに向かっているのかと、わくわくしている。
病気なのか元気のないメリーナおばさんに、「行ってきます」と
僕らは、叫んだ。力なく、手をふる彼女。
トラックに乗り込むときに、彼女の寂しげな視線が今まで見たことのない
ものだったのは、なぜだろうか。