プラハ行きの夜行列車の運賃が、およそ30ドル相当と知ると、
彼はホームでうなだれた。ロシアの相場なら、確かにこの距離
(クラコフからプラハ)なら、半額くらいかな。
僕は、その30ドルを払いたい気持ちを抑えていた。
それは、彼に失礼なことだから。

思い立った彼は、プラハまでヒッチハイクすることを宣言した。
駅のベンチで、僕とクラコフの地図を広げて、ポイントを決める。
そうですね、東京でいうと用賀インターの近くみたいなところに、
彼はトラムで行くことに決めた。
宿に戻り、小ぶりのバックパックを背負うと、彼は旅立った。
「もしも、ヒッチできなかったら、いつでも僕らの部屋に戻っておいで」
なぜか、僕はそう言って彼を見送った。
ステファンと、旅の話などしながらポーランドのビールを飲んでいた。
すると、彼が戻ってきた。
「残りの旅程のために、体力を温存することにしたよ」
そうあっさりと言いのけた。今晩の夜行列車で行くことにしたらしい。
30ドル相当払って。さっきまでの深刻さは感じられなかった。
ちなみに、ロシア人の年金生活者は1ヶ月30ドル前後の年金の
支給額だったはずだ。なぜか、今日は酔ってしまいたい気分だった。
まずいポーランドビールで。