「就職お祝い金」は公正な労働市場を阻害する | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

はるか以前には、職業紹介は、国の機関である職業安定所(いまのハローワーク)が行っていました。

ところが、職業紹介もカネになるということが分かってから、職業紹介に民間事業者がどんどん参入してきました。
求人雑誌、テレビコマーシャル、インターネットいろいろなところで目にします。

病院など恒常的に人手不足の事業所では、このような求人メディアで労働者(医師や看護師)の募集をすることが多い。

いまこういった求人メディアで問題となっているのは、求人情報に応じた転職者に「就職お祝い金」を渡す制度です。

厚生労働省は、「就職お祝い金」によって転職を推奨しているのが問題だと考え、「就職お祝い金」を規制しようとしています。
現在は、有料職業紹介事業者の「就職お祝い金」は禁止されています。
この禁止をさらに、募集情報等提供事業者まで拡大しようというのが厚生労働省の考え方です。

他方で「就職お祝い金」を禁止するのは転職の自由を阻害するという意見もあります(主に求人メディアの側からの意見のようです)。

人手不足の事業所では、求人メディアのカモになっているところもあります。
情報提供事業者のほうは、転職をあっせんする際に「○か月だけガマンしてまた転職してくれたらいいから」みたいに、転職・お祝い金もらう・転職・お祝い金もらう、を繰り返させるところもあるのではないかと思います。
「お祝い金」や情報提供事業者への手数料も当然、人手不足の事業所が最終的に負担するので、事業者としては踏んだり蹴ったりです。

このような不正常な転職行為は、雇用の安定を阻害するだけでなく、結局は公正な「労働市場」を破壊しダーティーな業者が労使双方を食い物にしていくおそれがあります。

たしかに転職の自由=職業選択の自由は憲法上保障されています。
しかし、それは人格的従属関係があった封建社会をうちこわし、近代社会を作るための原動力だったからです。不正な利益を得るための自由ではありません。
いま憲法では勤労者の権利も保障されています。公正な労働環境の構築こそ、最終的に労働者や使用者の利益になるはずです。

職業紹介を民間任せにしたことの弊害が出ているといえます。