秘匿されると尋問が難しい | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

民事裁判で住所氏名秘匿制度が始まっています(2023年2月20日施行)。
住所氏名を訴状に記載することで社会生活を営むのに支障が生じるおそれがあることを裁判所に疎明(簡単な証明)をすることで、相手方当事者に秘匿できるのです。

刑事裁判でもかなり前から秘匿決定が増えています。

裁判は、秘匿・秘匿・秘匿・・・増えています。
特に、性犯罪に関する事件です。

以前ブログで、安易に当事者の権利(フェイクか調査したり反論したりする権利)を奪うことはできないので利用にあたって注意すべきことは多い、と述べたことがあります。

秘匿事件は、証人尋問がかなり大変です。

たとえば、目撃場所・目撃状況の正確性を尋問するためには、その位置から本当に見えるのか確認する必要があります。
しかし、場所を秘匿され、尋問で説明できないと、本当に見えるか見えないか、弾劾しようがありません。
実際(実例を超大幅アレンジ)、この高層ビルから見えるかどうかは隣の建物がどんなものがあるかなど周辺情報を聞きたいのですが、それを聞くと場所が特定されてしまい秘匿ができません。

また、依頼者が「●●」という言葉を発し動機や経緯を問うためには、相手方との関係や言葉の意味を質問しないといけませんが、2人の関係がレアな趣味を通じての関係で●●も趣味にまつわる単語だった場合、ありのまま答えることによって当事者の特定が容易になってしまいます(これも実例を超大幅アレンジ)。
秘匿を理由に、尋問を拒否されたり裁判官が介入すると、証人尋問がストップしてしまいます。

このように秘匿するというのは尋問権を制限します。

抽象的な解決方法としては準備を十分すればいいのでしょうが、実際の尋問は相手方の回答次第で流動的です。

実際に秘匿事件をやってみると、あまりに尋問を制約されることを痛感しました。

したがって争う立場としては、秘匿決定について争うまたは修正させるよう求めなければなりません。


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