ダブルワークで解雇は許されない | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

先週、ダブルワークについての学習会の講師をしました。

実は、労働者のダブルワーク(副業・兼業)をめぐっては、副業・兼業を認めるべきか、その場合の労働法の適用関係はどうなるのか議論が噴出しています。

厚生労働省は、2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を出しており、今年2022年7月にはこのガイドラインが再改定されています。
厚生労働省は副業を認めることは当然という前提で、いくつかの職場を通算する場合に労働問題をどう処理するかということに苦心しているようです。

これに対して、副業・兼業を禁止した就業規則を作成している会社は多く、そのような会社では副業・兼業が発覚すると懲戒解雇するようなこともあります。

懲戒や解雇を基礎づける根拠は、一般的に「職務専念義務」です。

他方で、労働者には憲法で保障された職業選択の自由があります。また、労働時間以外の時間をどのように利用するかは労働者の自由です。

そのため、兼業禁止を理由とした解雇はかなり重大な問題をはらみます。

まず、代表的な裁判例を紹介します。

解雇有効の裁判例-小川建設事件
 (東京地裁昭和57年11月19日)
この会社では兼職は許可制でした。
会社の従業員が無断でキャバレーで働いたので、兼業を理由に解雇されました。
裁判所は、キャバレーでの仕事が毎日6時間の深夜労働であり、アルバイトの範囲を超えて本業への支障が大きいこと等を根拠に解雇を有効としました。
古典的な裁判例です。


解雇無効の裁判例-十和田運輸事件
 (東京地裁平成13年6月5日)
家電配送業務を行う会社です。
会社の従業員が、家電製品の払い下げを受けてリサイクルに持ち込んで対価を受けたことが、職務専念義務違反、就業規則違反だとして懲戒解雇されました。
裁判所は、アルバイト行為の回数が少ないこと(年に1、2回)、本業に支障が生じてはいなかったこと、会社も副業を知っていたこと等から、解雇を無効と判断しました。


このように、就業規則で兼業禁止を定めていれば解雇が有効となるというわけではありません。

厚生労働省のガイドラインは、副業・兼業を制限することが許されるのは、

(1)労務提供上の支障がある場合

(2)業務上の秘密が漏洩する場合

(3)競業により自社の利益が害される場合

(4)自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合


に該当する場合であると述べています。

(2)~(4)は何となく理解できると思いますので、(1)について補足説明すると、小川建設事件で裁判所が述べているように副業で長時間労働をしていると体力が回復せず、本業に支障が出る可能性があるからです。