弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
2021年9月15日、過労死認定基準が初めて改定されました。
また、その前の2018年に制定された働き方改革関連法は、初めて残業時間の上限を法定しました。ただし労使協定によって月80時間の残業上限を認めることにしたので、「過労死するまで働かせるお墨付きができた」という批判も出ました。
ともあれ、このように残業規制が進む中で、個別の産業では、過労死するまでの残業の規制が不十分と言われていた分野があります。
医師と運転手です。
医師は、年1860時間までの時間外労働が容認されており、コロナの中でヘトヘトになっています。
運転手もコロナの中で物流の中心となって、ヘトヘトとなっています。
このような中で、運転手の労働時間規制について、最近大きな動きがありました。
厚生労働省内の労働政策審議会・バス作業部会は、運転手・運転労働者の労働時間ルールの改定作業を現在進めています。
運転手の労働時間規制は、現在、告示によって、
・1日の休息時間
継続8時間以上
・1日の拘束時間
13時間を超えないものとし、拘束時間を延長する場合でも最大拘束時間は最長16時間。1日の拘束時間が15時間を超える回数は1週間に2回以内
・4週間平均した1週間当たりの拘束時間
65時間を超えないものとする
となっています。これでは過労死してしまいます。
そこで、部会では改善を進めようとし、1日の休息時間を11時間に拡大しようとしていました。画期的でした。
ところが、使用者側委員からの横やりが入り、1日当たりの休息時間の延長に対する強い反対が出ました。
このように、労働者・公益代表VS使用者という対立のなかで、結局、使用者側に譲歩することになりました。
部会の最終案はこのようになりました。
・1日の休息時間
継続11時間を与えるようつとめることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする
・1日の拘束時間
13時間を超えないものとし、拘束時間を延長する場合でも最大拘束時間は15時間。1日の拘束時間が14時間を超える回数は1週間に3回以内
・52週間の総拘束時間が3300時間、かつ4週間平均した1週間当たりの拘束時間が65時間を超えないものとする
1日の休息時間は少し延びましたが、拘束時間はむしろ改悪されています。
運転事故の温床となる過労運転、それを撲滅しようという意気込みが感じられません。
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