労働条件の引き下げに同意してしまった。どうしよう? | はぎた弁護士の法律相談

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こんにちは、弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
庭先のミカンの木にはアゲハの幼虫がたくさんいて、もうしばらくしたらサナギになりそうです。
 
今回は、労働条件の引き下げについて、しかたなく同意してしまった場合でも、あとで何とかなることをお話しします。
 
最近、大事な裁判例がでたので紹介です。
 
同意至上主義?
 
労働条件の引き下げは、一般的に、労働者が個別に同意すれば有効であると考えられてきました。
 
裁判所も、基本的に、同意があれば労働条件引き下げは有効という立場でした。同意至上主義です。
 
そのため、労働者からすると、いったん同意するとお手上げでした。
 
山梨県民信用組合事件・最高裁判決(平成28年2月19日労判1136-6)
 
ところが、退職金の減額の同意があった事件で、最高裁判所は次のように言いました。
 
「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく,当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容および程度,労働者により当該行為がされるに至った経緯およびその態様,当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等に照らして,当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも,判断されるべきである。」
 
長いですが、要するに、
 
・労働者の同意があっても,それだけでは法的に有効な同意があったとは認められない。
 
・労働者がその自由な意思に基づいて同意したといえるような合理的な理由が客観的にあったかどうかから検討する必要がある。
 
ということです。
 
表面上は同意をしていても、労使関係の中で同意するしかない場面も出てきます。
 
そういうときにまで同意(労働条件引き下げの同意)が有効とならないことがあるというので、これまでの裁判所の考え方から大きく変わったといえるでしょう
 
労働者から相談を受ける立場にある弁護士にとって重要な判決です。