民法466条の5(2020年4月1日施行予定) | 司法試験で検証してみた仮説 弁護士が語る勉強法+α

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受験生時代にセオリーを無視しがちだった弁護士が、自分の体験をもとに若干変わった勉強法その他を紹介します。

(預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力)
第466条の5 預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権(以下「預貯金債権」という。)について当事者がした譲渡制限の意思表示は、第466条第2項の規定にかかわらず、その譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
2 前項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた預貯金債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。

(e-Gove法令検索より)

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail/129AC0000000089_20200401_429AC0000000044/0?revIndex=4&lawId=129AC0000000089

 

下線部は、法務省のページにある「新旧対照条文」に付されているものです。

(■ 新旧対照条文 【PDF】)

http://www.moj.go.jp/content/001242222.pdf




預貯金債権についての、例外的な取扱いです。

確認した限りでは、預貯金債権には譲渡制限特約が付けられています。

預金・貯金について1点ずつ挙げておきます。

いずれも同じような文言です。


【預金】規定集:三井住友銀行

http://www.smbc.co.jp/kojin/sougou/regulation/

(普通預金規定 PDF(190KB))

http://www.smbc.co.jp/kojin/sougou/ippan/pdf/futsu.pdf

10【譲渡、質入れ等の禁止】
(1)この預金、預金契約上の地位その他この取引にかかるいっさいの権利および通帳については、譲渡、質入れその他第三者の権利の設定、もしくは第三者に利用させることはできません。
(2)当行がやむをえないものと認めて質入れその他第三者の権利の設定を承諾する場合には、当行所定の書面により行います。


【貯金】貯金等規定一覧:ゆうちょ銀行

https://www.jp-bank.japanpost.jp/kitei/kti_index.html

(2.通常貯金規定(PDF/106KB))

https://www.jp-bank.japanpost.jp/kitei/pdf/tuujyou-tyokin.pdf

13 譲渡、質入れ等の禁止
(1) この貯金、貯金契約上の地位その他この取引に係る一切の権利及び通帳は、譲渡、質入れその他第三者の権利を設定すること又は第三者に利用させることはできません。
(2) 当行がやむを得ないものと認めて質入れを承諾する場合には、当行所定の書式により行います。


466条2項(2020年4月1日施行予定、以下略)※によると、預貯金債権を譲渡しても有効です。

しかし、預貯金債権には本条が適用され、譲渡を無効としています。

理由として考えられるのは下記①-③です。

①預貯金債権の債務者である金融機関において、弁済の相手方を固定させることで、いわゆる預金担保貸付(貸金を返せない場合に預貯金と相殺する)が可能となる

②譲渡を無効としておけば払戻しが円滑に行えて、結果として預(貯)金者等の金融機関の利用者にメリットがある

③債権譲渡を可能としているのは基本的に資金調達のためで、資金そのものといえる預貯金債権を敢えて譲渡して資金調達するという迂遠な方法は行われない(=有効として保護する必要性がない)

(以上についいて一問一答p172)

もっとっも上記③について、預貯金債権が譲渡担保の目的とされることがあったようです(我妻担保物権p671)。

※(466Ⅱ)当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。

本条2項で466条の4※が適用され(我妻コンメンタールp909)、預貯金債権の差押えは可能です。


※(譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え)
第466条の4 第466条第3項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
2 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。


預貯金に言及している条文は他に477条、666条3項があります。


(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)
第477条 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。 
(消費寄託)
第666条 略
3 第591条第2項及び第3項の規定は、預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。 

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