女性優位と女性支配の狭間で
町の有力者を父に持つ少女と同級になった少年の倒錯した恋愛事情。対立しながらも互いに惹かれあう二人。ゆがんだ生い立ちから男性に対し、支配と征服でしか愛情を表現できない少女の変化と成長。潰しにかかりながらもなぜか手を緩め,そして救いの手を差し伸べる少女の心模様は。少年の幼なじみの少女は救出のために一人乗り込む。そして自らも変身し、闘いを挑む中で、不思議なシンパシーを感じ始め、共同して母校の改革に挑む。それを見守るfemale supremacy信者の女性教諭達の手を借りて、いよいよプロジェクト遂行の時が訪れた。 |
桜の花びらが強い春風に舞う季節、始業式を終えた生徒達が賑やかに帰りの準備を始めていた。
生活指導の教諭達と並んで、前年度クラス委員を務めていた道人は生徒の様子を眺めながら、何やら思案していた。
人口が五万人そこそこのこの町に、私立翠蘭高校が設立されたのは比較的最近のことであった。
町立高校もあるにはあるが、校舎がおんぼろで、設備も古く、当然教諭たちの意欲も上がらず、定員割れの状況で、私立校ができることは町民たっての願いであった。
美少女
道人はこの町に生まれ、親のことを除いては何の問題なく、過ごしてきたのだが、中三年の夏休み明けに東京から女子の転校生がやってきて以来、すべてが暗転し、ことごとく対立してきた。
女子のグループを率いて、男子を威圧し、反旗を翻した道人には籠絡、懐柔、脅迫様々な手で支配の試みがなされ、うんざりしながらも残りの学校生活を送った。
道人の成績なら,県内のトップレベルの進学校に行くことも叶いそうであったが,父親の事業不振のため、地元の高校を選ばざるを得ず、さらには特待生の優遇が魅力的なこの新設校に出願したことが後々災いを彼にもたらした。
新設校故、レベルの維持向上は至上命題で、優秀な生徒を集めるため、成績がよく、経済的に苦しい生徒の家庭に様々アプローチが行われた、一方で、多額の寄付金を贈った町の有力者の子弟は在校生の中で、さながら特権階級の様な待遇を得て、わがまま一杯に振舞っていた。
今日から二学年の新学期が始まるというのに道人はいささか憂うつである。
ひとつにはこのところ父の帰りが毎晩遅く、しかもむっつりして黙り込んでいることが多い。
父ひとり子ひとりのただでさえ淋しい家庭が、春というのに暗い冬の木枯らしが吹き込んで来る様に寒々と感じられた。
父の事業が行き詰まり、金策に駈け廻っているらしいことが、時々洩らすつぶやきや頻繁にかかってくる金融業者かららしい電話でのやりとりから道人にも察せられたが、他に身寄りのない悲しさで相談に行く所とてなく、唯、いらいらしながら見守るしかなかった。
ついてない時は仕方のないもので、今日発表された新しい学級編成名簿には、道人の氏名のすぐ上に彼の苦手な町切っての有力者である田端剛造の一人娘、美郷の名があった。
一年の時にも隣の組の美郷がとりまきのグループをひきいて女番長よろしく我がもの顔に振舞っているのを、いつも苦々しく、時には憎しみをこめて眺めていたものだった。
美郷自身は鼻筋の通った色白の美人で、大柄なスラリとしたグラマーな肢体はもう一人前の女である。
中学生の頃から、道人の前でスカートをさらっと開いてみせ、誘惑しているのか,楽しんでいるのか、道人の視線を楽しんでいた。
あんな生意気で、乱暴な女なんか大嫌いだ、と自身にも友人にも言いながら、夜な夜な美郷のスカートがめくれ上がった瞬間のワンショットを思い出しては、青春の熱い放出を繰り返していた。
そんな調子で,口など聞きたくはないが、顔貌も乳房も腰も脚もすべてフィジカルな面では道人の好みど真ん中の美郷には頭が上がらない思いも持いもあった。
道人の新しいクラスにはその美郷だけでなくその取巻きの女子達の名前を次々に見つけ、道人の憂うつは一層その度を増した。
道人が美郷とそのグループに決定的ともいえる反感を抱いたのは昨年の夏に遡る。
夏休みの宿題を片付けるため図書室で勉強しての帰途、人気のない校庭を横切って裏門への近道をたどり運動具等の入れてある倉庫の前を通りかかった時のことである。
内部から何かすすり泣きの様な声と、何やらざわついた人の気配を感じて、道人は何げなく戸の隙間から中をのぞき込んではっとした。
中央正面に立ちはだかった美郷の前に、一人の男生徒がひきすえられている。
”片山芳信だ”
美郷のとりまきがその周りをかこみ、男子の腕を二人がかりでねじ上げていた。
思わず息をのんだ道人の目に、男子生徒の頭に足をのせ踏みにじる美郷の形の良い足が、そしてミニスカートからこぼれた白いたくましい太ももが飛び込んで来た。
ハーフではないかと噂のあったエキゾチックな美郷の美しい顔が幾分上気して、誇らしげに足の下の男を見下ろしている。
その様は映画の女賭博師の姉御が見得を切っている様な凄艶な感じさえあった。
同級生がリンチに遭いそうな場面なのに動転した道人は中へ入って注意するどころか、片山君を助けもせずにその場を離れた。
宿直室の教師を伴って再び倉庫へ戻ってくるまでものの5分とかからなかったであろう。
教師が扉を引き開け、
「そこで一体何をしているんだ! すぐ外へ出ろ!」
と一同に命じると、彼女は悪びれもせず足もとに横たわる男生徒にひと蹴りをくれて悠々と戸口の教師の所に近づいて来た。
教師の後にかくれる様に後ずさりした道人にじろりといちべつをくれると、
「先生、私達何も悪いことなんかしてないわ。あの男が私の下着を盗んだので皆でお仕置していた所よ。それとも先生はそんな男生徒の味方をするつもり?」
「いや、しかし、まあほどほどにしてほしいな」
理事長の娘であることをみてとった教師はもう叱りつけるどころか逃げ腰であった。
「ちょっと待って」
教師のあとからすごすごと帰りかけた道人はギクッとして足をとめた。
「谷田君、あなたが御注進に及んだってわけね。いずれ借りを返してあげるわ。覚えていらっしゃい!」
キラキラ輝く大きな目で見据えられ、道人は何やら背筋がぞくぞくと寒くなる思いだった。
「道人さぁん。待ってぇ!」
あれこれ考えながら家路をたどっていた道人はハッと我に返って後を振り返った。
濃紺のセーラー服のスカートが風にまくられるのを防ぎながら小走りに追いかけてくる柳美子の姿が目に入った。
とたんに彼の憂うつな心にパッと明るい光が差し込んだ様であった。
「また一緒の組になれたわね! よかったぁー」
丸顔のふっくらとした柳美子の顔には邪気のない笑みが溢れている。
美人というよりまだどこか子供っぽい所の残っている"可愛い少女"と表現するのがぴったりの彼女だが、体つきはもうめっきり大人びて、胸元からこぼれる白い肌とふっくらとした胸のふくらみ、それに豊かな腰まわりが幼馴染みの道人にも何となくまぶしかった。
「本当だ! そういえば柳美ちゃんとは中学時代からずっと一緒の組だなあ」
家が近所同志で昔から親しくつきあっていたためか、ひとりっ子の道人にとって柳美子とは身内同然の仲だったが、めっきり大人びた柳美子がこの頃何かにつけ姉さん振るのが何となくしゃくの種だった。
「でも、田端さん一派がごっそり入って来たなんて、がっかりね。道人さんもなるべく彼女には近寄らない方がいいわよ」
「何だい、もう今から妬いているのか」
からかう様な道人の言葉に柳美子はかすかに頬を染めて、
「まさか! 道人さんが彼女に誘惑されて家来にされてしまわない様に注意してあげてるのよ。彼女すごいんだから。噂では今まで男の生徒が何人か彼女に泣かされてるって話よ」
「判ったよ! 大きなお世話さ。それより今度の日曜には映画でも見に行かないかい?この頃、おやじも留守ばっかりでくさくさしているんだ」
対立
田端美郷との対立は道人の予感通り間もなく現実のものとなった。
新学期早々の最初のホームルームでのクラス委員の選出の折である。
委員は学校の生徒側代表として、生徒会もメンバーとなり、町の教育委員会に出席したり、公式行事に招待される等華々しい存在となる。
そのため生徒間では表向きは禁じられている事前の票集め工作が行われ、問題となっていた。
ずばぬけて学業成続が良く、人気のある道人が一年時に引き続き選出されたのは当然ともいえる結果だったが、問題はもう一名の女生徒側の委員である。
蓋を開けてみると一票の差で田端美郷が桜田柳美子を抑えて当選したのだが、この数日の美郷一派の票集め工作は目にあまっていた。
さすがに腹に据えかねていた道人は、議長役の教師に異議を申し立てたのである。
一票差の勝利にいささか興奮気味で周囲の仲間達と歓談しながら上機嫌の美郷は、道人の発言に顔色を変え、立ち上がって応戦した。
「谷田さん、事実無根のことで選挙の結果にケチをつけるのは止めてちょうだい! 一体何を証拠にそんな言いがかりをつけるの?」
気色ばんだ美郷の剣幕に、立ち合いの教師は"まあまあ"となだめにかかる。
しかし道人はひるまなかった。
「事前の選挙運動は違反の筈です。証拠はありませんが、皆が自由意志で田端さんに投票したとは思えないんです。そこでひとつ提案ですが、無記名で運動の事実に関し、全員にアンケートに答えて貰ってはどうでしょうか」
正論とも言える道人の意見に反対する教師はいなかった。
その結果は美郷の悪辣な買収が露見し、失格となり、次点の桜田柳美子がくり上げ当選となったのである。
解散後、廊下に出た道人は美郷に呼びとめられた。
「谷田さん! あなた、私にうらみでもあるの? 覚えてらっしゃい。私にこんな恥をかかせて、無事にすむと思わないで!」
まともに取り合わず背を向けた道人は、背後に怒りに然える美郷の視線が突き刺さって来るのを感じていた。
それから3ヶ月余り経った、梅雨空け間近のことである。
帰宅した道人に父が改まって話があると言うのである。
憔すいした父の思いつめた様な顔を見ると、道人は胸をしめつけられる様な不安を感じた。
ぽつりぽつり口ごもりながらの父の話は、果してそれを裏書きする様なものだった。
事業の手詰まりから高利貸しに手を出し、借金が雪だるま式に増え、せっぱつまった父は保証人の印を偽造して、他の金融業者から多額の融資を受け一時しのぎをしたのだが、得意先が倒産し,二週間後に迫った返済期限に対応するすべもなく、手形不渡りは秒読み状態であった。
このままだと破産は当然として、詐欺の罪で刑事事件に発展し、刑務所送りが目に見えていた。
父は一時、自殺すら真剣に考えたと告白した。
あまりの深刻な事態に、道人はただ茫然とするばかりだった。
ところが、それからの父の話の意外な展開に思わず耳を疑った。
昨日父は意外にも資金を融通しても良いとの申し出を受け、しかも更に意外だったのは、それが父とは殆んど面織のない田端剛造だったというのである。
「田端さんはね、私の文書偽造の件も金融筋を通じて御存知でね、話によっては私の負債をそっくり肩代わりしてやろうとおっしゃるんだ。聞けば、お嬢さんがお前と同級で、そのお嬢さんから懇願されたそうだ。本当に地獄に仏のだよ。これもお前のおかげだ、良い息子を持って私も幸せだが、田端さんへの御恩も一生忘れちゃいかん」
"そ、そんな筈がない。美郷がそんなことをしてくれるなんて!"
道人は心の中で叫んだ。
「しかも田端さんは私に九州の知人の会社で仕事を斡旋して下さり、今晩すぐにも先方の所へ発ってくれとのことなんだ。向うでの仕事の様子が判るまで二~三ヶ月くらいは帰れないかも知れんが、その間お前の面倒まで見て下さるそうだ。急なことでお前も面食らっただろうが、今晩から早速田端さんのお宅へ伺ってくれ」
「そ、そんなことを急に言ったって。第一、お父さんがいなくたって、三ヶ月くらい僕ひとりでこの家で暮すくらい別に不自由ないさ。食事は外食すればよいし、いざとなったら柳美ちゃんの所で世話になっても良いんだから」
「とにかく、私は今晩の汽車で出発するからお前はこれから田端さんのところへ伺って、向うのお嬢さんにもよくお礼を言うんだ。しばらく田端さんの所に置いて頂くか、この家で暮すかは向こうで良く相談すれば良いじゃないか」
父を駅まで見送ったあと、田端家へ向う道人の足どりは重かった。
父の危難があやうく救われた模様にホッとしたものの、美郷の真意が計りかね、何やら不吉な予感にいたたまれなかった。
田端家の豪華な客間に招じられた道人は、落着かない思いで家政婦の運んで来た茶菓子にも手をつけず、身を固くしたままだった。
「やあやあ、よく来たね、谷田君。そんなに堅くならないで、さあ、もっと楽にしてくれたまえ」
でっぷり太った赤ら顔の田端剛造は人の良さそうな笑みを浮かべ、立ち上がって挨拶する道人を如才なくあしらって、どっかりと腰を下ろした。
「固くるしい挨拶は抜きにしてと、オイ、美郷、何をしているんだ。早くここへ来て谷田君のお相手をせんか」
「フフフ 谷田君、今晩は」
見馴れたセーラー服姿とは一変して派手なデザインの真紅のブラウス、それに黒ビロードのゆったりとしたスカートに身を包んで、ふわりと父の隣のソファに腰を下ろした美郷はまるで大輪の薔薇のようだった。
「どうも、この度は父が大変お世話になったそうで」
道人はまぶしい程あでやかな美郷に圧倒されて視線をそらすと、あわてて剛造に向かい、ぎこちなく挨拶した。
「わしの知合の金融業者から君のお父さんのことを聞いていたんだが、美郷がそれを聞きつけてね、どうしてもわしに助けてあげて欲しいっていうんだ。だからまあ礼を言うならこの美郷さ」
「そうだったんですか。美郷さん本当にどうも有難う」
道人は素直に美郷に頭を下げた。
動機は何にせよ、仮にも父の窮状を救ってくれたことに対しては、いくら感謝してもしたりない気持だった。
「あらあら、私にお礼を言うのは少し早くってよ。それじゃ言ってしまうけど、ただで谷田くんにこんなことしてあげる気はないのよ。ちゃんと私の交換条件を聞いてからになさったら如何が?」
「まあ、あとは二人でゆっくり話し合ってくれ。それからわしは来週から何ヶ月か商用で海外に出かけるから、留守中すべては美郷を通じて,わしの秘書たちが代行してくれるから心配はいらんよ」
剛造が席を立つのを見送ると、道人は美郷と二人だけで向い合う形になった。
美郷はテーブルから煙草を一本とると、カチッとライターを鳴らし、フーッと道人の頭上に煙を吐き出した。
足を高く組み、身をソファにひとしきり深く沈めると、いつもの高慢な美郷が顔を覗かせる。
「谷田君もいかが? そうそう、あなたみたいな品行方正な人に煙草なんか勧めちゃいけなかったかしら?」
「僕は吸えないんだ。お茶いただくよ」
美郷はじっとじらすように何も言わずに道人を眺めて煙草をくゆらしている。
たまりかねて道人が話しかけた。
「改めて、お礼を言います。父を救ってくれて本当にありがとうございます。さっきの交換条件っていうのを聞かせて下さい。できる限りのことをしますから」
「あら、その調子よ。これからは私にはすべて敬語を使うのよ。もちろん学校でもね。フフッ、聞きたい? それじゃ教えてあげようか。でもびっくりしないでちょうだいね」
美郷はニヤニヤ笑いながら、
「実はね、私、道人にはたくさんの恨みがあるのよ。判ってるわね。だから、あなたに思い知らせてあげるチャンスをずっと待っていたの。ずっとよ」
"やっぱりか"
不吉な予感が適中し、道人の胸はさわいだ。
"何をされるんだろう。でも父のためだ、何でも甘んじて彼女の言うなりになろう"
自分に言い聞かせた。
そんな道人の顔をのぞき込み、身体をのり出しながら、
「道人にはね、色々やってもらうつもりだけど、まず手始めにね、みんなの前で思い切り恥をかいてほしいの。それもうんと破廉恥な真似をして、皆に軽蔑されるのよ」
口許にうすら笑いを浮かべた美郷は、
「ちょっと、道人、顔を上げて。私、あなたにこのせりふを言う機会を待ちに待っていたのよ。あなたの反応を充分楽しみながらお話ししたいの。あら、何だか顔色が青くなったみたい。そりゃ、青くなるわよね。どんな風に赤っ恥をかかされるのか知りたい。それとも知るのがこわい」
美郷の態度はまるでねずみをなぶる猫のそれであった。
さっとカモシカのような脚を伸ばして脚を組むとどうしても道人の目線はスカートの奥に注がれ、美郷がそれを見とがめるようにスカートを抑えて,きっと睨まれるともはや逃げ道のない我が身に泣きそうな気分だった。
「シナリオがこれよ。あなたの役割はこのノートに全部書いてあるわ。せりふ一言でも間違えたり、ためらったりしたら取引きは御破算よ。判っているでしょう。あなたのお父さんは刑務所に行くことになるのよ」
美郷から手渡されたノートには何頁にも渡って何やらぎっしりと書き込んである。
走り読みして行くうちに道人の顔色がみるみる変っていった。
美郷は予期していたようにそんな道人をニンマリと笑みを浮かべながら覗き込んでいる。
「待って、ノートを閉じちゃダメ。最後までちゃんと読むのよ!」
突然ノートを引き裂きたい衝動にかられた道人は先手をとられ、血走った目を再びノートに戻した。
頁をめくる手がブルブルふるえ、
「ひどい。あんまりだ。こんな真似は死んでも出来ないよ」
「あら、そう。それじゃ、あなたの手でお父さんを牢やに入れることになるわね。それでいいの。あなたみたいに現孝行の息子がね。」
"ウッ"と道人の口からうめき声がもれた。
逃げ道をあれこれ考えても今日美郷を訪ねた時点で,決まっていたことで、抵抗から諦観に至り、受容を決断した。
「その代り、その代り、父の借金は本当にお願いできるんだね」
「そうよ、あなたが完全に役を演じたら、まず一次試験は及第よ。でもね、これはほんの手始めよ。その後もっともっとたくさん、立ち上がれないような恥ずかしい思いをさせてあげるわ。その代わり、あなたが私の命令に従っている限り、お父さんは安奉よ。判ったわね」
冷酷な美郷の宣告に道人は打ちのめされた。
ポロリと頬に涙が伝わり、諦観と絶望の淵に道人は低く頭を垂れた。
「どうやら納得できたみたいね。さすが頭の回転が速いわ。さて、ずいぶん厳しいこと言ったけど,これからしばらく二人暮らしみたいなものだから,仲良くしましょうね。」
道人は下を向いたまま言葉も出ない。
「仲良くするのは良いんだけど、道人が私を襲ってこないか心配なのよね」
「そんなことしませんよ」
「本当かしら。この間のパンティ泥棒もみたでしょ。道人って私をどう思ってるの。ただの嫌な女かしら」
道人は顔を上げ、思わず頬を赤らめながら、
「そんなこと、思っていません。素敵な人だとずっと思っていました」
「ふうん。でも男って信用できないのよね。じゃあね、証明して見せてよ」
「証明ですか」
「そう、証明して欲しいの。ほら、まず全部脱いで、それからそこに正座してごらん」
裸のまま外に出されて、朝まで立たされるとか、裸で町内を走ってくるとか、そんな無茶な命令を覚悟していると
「私をみて。そう、ちゃんとみて」
口さえ聞かなきゃ,ど真ん中直球のような好みの女性を前にじっとしているのは、高2の少年にはうれしい限りだが、とても間が持たなかった。
ふいに美郷がさっとスカートをまくり上げるとちらっとではあるが,脚の付け根の部分、白いパンティまで垣間見ることができた。
目をそらすことなどできず、その一点に目線が向かうのは,どうしたって避けられないことだった。
「あら、あら。なにおどおどしているのよ」
「いや、申し訳ありません」
顔を上げたらどれほどいやらしい表情を晒してしまうか、道人は怖くて、下を向いていた。
「顔を上げなさい」
少しだけ顔を上げ,上目遣いに美郷をみた。
「ほうら」
今度はバッとスカート全体をまくり上げ、太もも全体、パンティの腰の部分までさらけ出した。
道人は思わず,頭に血が上り、鼻血が出そうな、気が遠くなりながら、必死で興奮を抑えなければと慌てていた。
「ほら、みなさい。口では大丈夫とかいって、なあに、そのざまは」
股間はいきり立ち、収めるのは容易でなく、土下座し、
「本当に申し訳ありません。。どうかお許し下さい」
「だめよ。信用できない」
美郷が足を道人の正座した膝に乗せて、徐々に体重をかけていくと意外にも道人の反応はかえって良くなったのを見逃さなかった。
「道人って,こんなことされた方がうれしいのかしら。じゃ、こうしてやるわ」
美郷は道人を蹴り倒すようにフローリングに仰向かせ、スカートのまま顔をまたいで腕組みをしていた。
「やっぱりね」
道人の股間はいきり立ち、今にも爆発しそうになっていたが、美郷にそんなところを晒すのは、さっきみせられたシナリオより恥ずかしく、興奮を静めるのが本当に辛く,やっと解放され、使用人用の部屋に落ち着くと、疲れ果てて、深い眠りについた。
シナリオ通りに
梅雨がほぼ明け、歩いていても汗が噴き出る暑さであった。
父が出発して三日間があっという間に過ぎた。
美郷と向き合い、衝撃的な命令を受け、その日は宛がわれた部屋で休み、翌早朝帰宅してから、風邪を口実に学校を休んでいた道人にとって、今日は美郷に指定された”その日”の朝である。
帰宅後美郷から電話もなく、まるで精神統一するように静かな日を送っていたが,夜布団に入るとふと美郷が顔をまたいでいる感覚がよみがえり、股間を握りしめては何度も昇天し、いつしか心をすべて美郷に奪われているのを自覚せざるを得なかった。
彼女から渡されたノートをもう一度パラパラとめくって見る。
あちこち文字がにじんでいるのはこの三日間せりふを暗記しながら、あまりの情けない役割に思わず流した道人の涙の跡であった。
誰にも会わないよう、いつもよりかなり早く家を出て、学校へ向う道人の顔はこの三日間の苦脳にいささかやつれたものの、覚悟をきめたあとの安らぎさえ浮んでいた。
人影のまばらな運動場の片すみに腰を降ろしてぼんやり始業のベルを待っていると、後から、
「谷田さん、早いのね、今日も休むのかと思って心配してたのよ」
美郷のとりまきグループではリーダー格の一人である大柄なグラマーで、バレーぶの水野遙香と、これも美郷の腰巾着を自認している丸ぽちゃ型の山門尚子の二人がニヤニヤ笑いながら近づいて来た。
「谷田君が地獄に落ちるのをみられるっていうから、楽しみにしてたのよ」
"そうか。二人とも結構仲良しだったのにな。これでおしまいか"
今日の演技の当面の相手役がこの二人であることを思い出し、思わず赤くなった。
「フフフ、品行方正なクラス委員、谷田さんもとうとう今日でおしまいね。あしたからはいやらしい変態男って、みんなに軽蔑されるんだわ。さぞ口惜しいことでしょうね」
遙香はうつむいた道人の顔をのぞき込み、言葉をかける。
折しも始業五分前の予鈴に、道人は救われたようにほっとして二人の傍を離れた。
校内図書館の閲覧室の時計が三時をしらせた。
約束の時間だ。
道人は鉛のように重い足をひきずって外へ出た。
校舎をへだてて反対側の運動場から、スタートの合図のピストルの音とワーッというにぎやかなざわめきが伝わって来る。
午後からは学期末恒例の全校生による体育競技会が始まっていたが、風邪を理由に欠席した道人は図書室での自習組に加わっていたのである。
校舎に入った道人はあたりに気を配りながら、人気のない女子更衣室に入って行った。
奥から二列目の教えられた場所に、水野遙香のロッカーを探し当てると震える手で扉を開く。
折畳んだセーラー服の上に、道人を嘲笑うかの様に白いパンティがふわりと置いてあった。
道人は手に持ったパンティを広げ、股間を覆う部分を鼻に押し当て,匂いを嗅いでから、頭にかぶった。
そこにパタパタッと足音がし、更衣室がワッとざわめいた。
競技会が終って、皆が帰って来たらしかった。
山門尚子、座ったままの道人に声をかけた
「そこにいるのは誰。まあー、谷田さんじやない。なんで女子更衣室にいるのよ」
「いや、それは、その」
「いやだ、何頭にかぶってるのよ」
尚子の大声に、着替えをしていた女生徒達が一勢に集まって来て、道人をとりかこんだ。
尚子は隅に追い込まれた道人の頭からパンティをひったくるようにはがし、高くかざした。
「ほらごらんなさい。みんなこれ見てぇ。これを谷田さんが頭にかぶっていたのよ」
そして道人の方を振り向くと、
いやだあ、それ、私のだ」
と水野遙香がわざとらしく,声を上げた。
「ちょっとお、しゃれにならないわよ。遙香のパンティでなにをしてたのよ」
と尚子が詰問する。
あそこの臭いを嗅いで、そして舐めて、味をみて、それからお尻の部分の臭いを嗅いで」
顔を真っ赤にして、どもりどもり呟く道人の告白に、クスクス笑う声が広がった。
水野遙香が前に出て、
「私、もうお嫁に行けない」
とべそをかく仕草を見せ、尚子、同じバレー部の木元佐和子と石田あおいが肩をだき、背中をさすり,慰めていた。
尚子が更に追い打ちをかけるように
「ベトベトじゃない、これ」
道人はシナリオ通りに演じ続ける。
「しゃぶって、それから頭にかぶりました」
いつの間にか傍に来た美郷がその言葉を引きついで、
「谷田さん。顔を上げて。あなたよくこんな恥ずかしいことが出来たものね。あなた、女のパンティを舐めるのが趣味なのかしら。クラス委員の模範生が聞いてあきれるわ」
「あのう、女性のお尻を見ると吸い込まれなそうな感覚がして、もう抑えられないんです。お尻の臭いを嗅がせて下さいって口に出して頼むこともできなくて、いつもパンティを拝借して、それをしゃぶっているとなんとも言えない気分なんです」
美郷:「あきれたものね。気持ち悪ーい。変態」
道人:「もう我慢できなかったんです」
美郷:「身震いしてくるわ。でもね、私、女子みんなを護らなきゃって前から思っていたのよ。あなたみたいな女性の敵からね。いいわ、女子みんなを護るためなら私が犠牲になってあげる」
周囲の女子達から、
「美郷さん」
と心配、感激、声援が上がった。
美郷:「さあ、私が目をつぶって,あなたがもうこんなことしないように指導してあげる。女子だけじゃなく,男子も護らなきゃって思っていたから。あなたみたいな変態でも私は護るのよ」
周囲から、美郷、美郷と声が上がる。
美郷:「谷田さん、恥ずかしくてこんなことしたくないけど、あなたを更生させるため,我慢してあげる。私目をつぶっているから。さあどうぞ」
美郷は笑いを堪えながら、恥じ入る少女を装い、意を決したようにくるりと道人に背を向けるとトレパンを素早くずり下げ、
花模様のパンティに包まれた、はち切れそうな双球を惜し気もなく露出する。
「さあ、どうぞ」
歯を食いしばって,恥辱に耐える乙女を演じる。
腰をぐっと後ろへ突き出し、首をねじって道人の表情を眺めながら、尻を左右にゆさゆさと振って挑発した。
挿絵
ロッカーに向かい,手をつき,腰を突き出して、スカートを上げ、パンティを着けた美郷の尻に顔を埋める道人。それを薄笑いしながら見下ろす美郷
美郷:「どお、変態さん。これを見るとたまらないんでしょ」
ぐっと胸にこみ上げるものを抑えながら、道人はそのヒップの前にひざまずく。
「道人さん! はれんちな真似は止めて!」
後ろでみていたのものの、たまりかねた桜田柳美子の悲鴨に似た声が人垣の後ろから道人の耳に響いたが、それを振り切る様に、彼は眼の前に突き出されたヒップの割れ目に顔を埋めた。
ムッとする饐えた尻臭が、汗と混って道人の鼻孔を満たす。
美郷:「いやー」
しっかりと道人の顔面を尻で受け、アヌスを鼻に押し当てるように位置合わせまでしながら、
「いや、恥ずかしい」
と両手で顔を覆い、涙をぽろっとこぼしてみせた。
美郷さん、美郷さんと気遣う声がたくさん上がった。
と同時にワーッという嘲笑の渦が沸き起こった。
美郷がなぶる様に尻をかすかに前後左右にゆすると道人の顔がぐらぐら揺れる。
顔が殿裂に食い込むのを避けているようにみせながら、アヌスは確実に道人の鼻を捉えて放さなかった。
”ふふ、たっぷり私のお尻を嗅いで、よーく覚えておくのよ。これで私は悲劇のヒロインよ。みんなの心もつかんだわ”
美郷は予想以上のできばえに笑い出したいところだが、道人をこれ以上ない恥辱の淵にたたき落とし、自分は女子の守り神になり、絶大な信頼を勝ち取った訳で、澄まして乙女を演じるのが一番と感じていた。
クスクス笑いながら誰かが後ろから道人の髪をつかんで、顔をしっかりと美郷のヒップに押しつけた。
美郷:「いやー」
と恥じらいをみせた。
それとは裏腹に強烈な異臭に頭がくらくらして、暫し時間の観念を失ったかのようだったが、やがてぐいと髪が後ろにひかれ頭が上向けに倒された。
美郷を含め何人かの顔がのぞき込む。
「あきれた。いつまで嗅いでるのよ。いやらしい」
言葉と共にビシッと道人の頬が鳴った。
痛みにハッとして目を聞くと意地悪い笑みを浮かべた美郷の顔が前にある。
「私がどれほど恥ずかしかったと思うのよ」
「あの、どうか、お尻をじかに舐めさせて下さい」
ピシリ、今度は反対の頬が鳴る。
「いやらしいひと。みんなが見てるのよ。少しは恥をお知り」
「どうかお願いです。美郷さんのお尻をしゃぶらせて下さい」
美郷は恥ずかしくて耐えられないという仕草を見せ、
「美郷さん、よく頑張ったわ。ありがとう。みんなとっても感謝しているわ。もう、いいよ、恥ずかしいけど、美郷さんの代りに私が舐めさせて上げる」
髪がさらに後ろに引かれて、抑向けに倒れた道人の顔を跨いで太り肉の山門尚子の尻が
スッと降り、道人の顔前でパンティがくるりとまくられ、いやらしい程大きな白い尻が視界に広がった。
ぐっと顔に重量がかかり、じっとり湿めった尻の割れ目が道人の顔面を覆う。
そしてプンと臭うアヌスがぴったりと唇に押しつけられた。
「さあ、美郷さんの代わりに恥を忍んで、私が相手してあげるから。女のお尻がどんな味がするかよく舐めるのよ」
今迄こらえにこらえていた口惜し涙が尚子の尻の下でどっと溢れ出た。
鳴咽がウッウッと喉の奥からこみ上げて来るが声にならない。
尚子の尻が前後に揺すられ、ねっとり濡れたアヌスが催促するように道人の唇を蹂躙する。
気をとり直し、シナリオ通り尚子の蕾のように堅くすぼまったアヌスを唇と舌を使ってねぶり吸った。
「フフフ、まるで蛸みたいに吸いついたわ。きゃあ、ぺロペロ舐めてるぅ」
どっと周囲の笑い声が爆発する。
アヌス周辺に付着していた滓が口の中に溶け込み、ほろ苦い軽い酸味のある味が口中一杯に広がり、鼻孔からはすえた異臭が遠慮なく侵入して来る。
「さ、もういいでしょ。あとはほかの人に舐めさせて貰いなさい。本当に恥ずかしかったわ」
すっと尻が上がり、道人をのぞき込んでいる幾つかの顔が、ぼんやりとした視界の中に浮かんだ。
あわてて立ち上がったものの、周囲からの刺す様な視線を意識して身を固くして立ちすくむ。
「あなたの念願がかなって良かったわね。尚子に良くお礼を言ったら、フン、その顔はなぁに? ベトベトになって、あら臭い。すっかりお尻の臭いがしみ込んだようね。みんなの前でこんなハレンチな真似をして恥ずかしくはないの」
美郷のあざけりの言葉にもうなだれるばかりである。
「顔を上げてごらんなさい。谷田君。どんな味だったの。山門さんのお尻は。もう、本当に恥ずかしかったわ。あなたみたいなのを女の敵っていうんだわ。これで更生できるのかしら」
周囲から美郷の勇気ある行動を褒め称える声が上がった。
誰かが道人の正面からペッと顔に唾を吐きかけた。
それが導火線になったと見え、次々と唾が浴びせかけられる。
美郷:「さあ、これ気が済んだでしょ。谷田さん、もう2度と女子に破廉恥なマネしちゃだめよ。きっと病気だと思うから、どうしても我慢できなくなったら、とっても恥ずかしいけど、私が犠牲になってあげるから。その時はちゃんといってちょうだい。約束できる」
道人:「田端さんのおかげで,僕は目が覚めました。自分が変態な事が皆さんに分かってもらい,かえって良かったと思います。これから皆さんのために一生懸命頑張りますので,どうか見捨てないで下さい。今日は本当にありがとうございました」
美郷:「さあ、皆さん、これで解散よ。ねえ、皆さん、谷田さんはとんでもない変態だけど,同級生なんだし、これからも一緒に頑張りましょうね」
みな、美郷に拍手喝采で、さらに褒め称える言葉をたくさん投げかけながら、体育館を出て行った。
その一方、残された道人はやり場なく、あわてて更衣室の外へ出て、手洗い場で女子の尻の臭いが染みこんだ顔を洗った。
幸い人気もなく、鏡に写る自分のみじめな顔を見ると先刻からの数々の屈辱が思い起され、道人は思わずポロポロ涙を流した。
顔を清めると誰にも会わないようにそっと校外へ抜け出し家へ急いだ。
自分の部屋に帰りつくとようやく緊張が解けて、ベッドに横たわり虚脱状態のままぼんやりと天井を眺めた。
この数日の心労で眠れず、いつのまにかぐっすり眠ってしまっていたところ、しつこく鳴り続ける玄関のベルに目を覚ました時はもうたそがれ時であった。
扉を開けるとそこには同級の木元佐和子と石田あおいが立っていた。
二人共、美郷のいわば親衛隊員で、先程のロッカールームの一件では、主役格の山門尚子や水野遙香と一緒に先に立って道人を罵倒した連中である。
「何をぼんやりしているの。私達をいつまでここに立たせておく気。」
あわてて後ずさりする道人を押しのける様に、佐和子が先に立ってズカズカと中へ入って来た。
「さ、早く仕度するのよ。当分ここへは帰れないんだから、身の廻りの物を持って行くのよ」
「仕度って、一体どこへ行くんだ。君達なんかに命令されてたまるか。すぐ出てってくれ」
気色ばむ道人の肩を、横からあおいがグイとばかり突きとばした。
「何を偉そうな口をきいてんの。さっきのざまを思い出してごらん。みんなの前でいい恥さらしたくせに。これからね、君は美郷さんの所に住むのよ。そうね、住むって言うより、飼われるって言った方がいいかしら」
あおいの言葉に続いて佐和子が、
「そして毎日毎晩、美郷さんや私達にたっぷりなぶられるの。どお、口惜しい。そして今晩はこれから私達も美郷さんの所へ集ってみんなで君を仕込んであげる。それから、いいこと、私達に反抗したりしたら、美郷さんと君の約束はフイになるのよ。判ってるでしょ」
道人は二人の前で力無くうな垂れた。
道人は戸棚の奥から旅行用のトランクを出し、着替えをつめ始めた。