気まぐれ厨房「親父亭」落語編⑨~河豚 | 気まぐれ厨房「親父亭」

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落語に見る食の風景~ふぐ

   「河豚は喰いたし 命は惜しし」
BENのブログ 福岡市「活魚料理王将」のフグの刺身


江戸古川柳に「雪の河豚 豈(あに)一命を惜しまんや」とあります。

フグは秋から春に食べられますが、なんと言っても旬は真冬で、寒い日のフグがいかに旨いかをかくも見事に表現した句はありません。

フグを食べると「たまにあたる」ので「弾に当たる」にかけて、関西ではフグのことを鉄砲といい、フグ刺しを「てっさ」フグちりを「てっちり」といいます。

元は上方落語の演目で、後に東京でも演じられるようになった「らくだ」は故・立川談志も時々高座にかけていました。

真面目で働き者の屑屋がある長屋に入っていくと「屑屋!」と呼び止められたのが「らくだ」というあだ名で呼ばれる男の家です。

その男は酒飲みで乱暴者のとんでもないやつで、長屋の誰からも嫌われていました。

屑屋を呼ぶ声は「らくだ」ではなくその兄貴分で、「らくだ」を訪ねるとフグを食べて死んでいたと言うのです。

博打をしてすってんてんに取られて1銭も持ち合わせが無い兄貴分は、屑屋に「らくだ」の弔いを出す手伝いを命じます。

大家や長屋の連中のところに行って、香典や酒肴を用意させるための使い走りをさせられますが、これまで「らくだ」には散々迷惑をかけられていますので、「らくだが死んだ」と言って喜ぶ者はいても、そんな申し入れを誰も受け入れるわけがありません。

それを兄貴分に伝えると、「いやだったら死人にカンカンノウを踊らせるぞ!」と言って脅すように無理難題を押し付けられます。

気の弱い屑屋ですが、「死人がカンカンノウを踊る」という一言はすごい効果で、誰もが素直に従います。

香典や酒や料理が揃ったので「私はこれで・・・」と屑屋が商売に行こうとすると、兄貴分から「1杯飲んで行け!」と酒を強いられます。

しぶしぶ1杯あおって出かけようとすると「もう1杯!」ということに。

3杯飲むと屑屋は酔いが回って「おい、もう1杯注げよ!」と、その兄貴分を怒鳴りつけて絡み始め、予想外の展開に兄貴分が「そろそろ、商売に行ったほうがいいんじゃないか」と言う始末。

その後火葬場まで「らくだ」を運んでいくという噺ですが、長いので最後まで演じられることは少なくて、サゲは演じる人によって異なります。

「ふぐ汁」という小噺があります。

両国橋の近くで、若い男たちがなにやら騒いでいます。

通りかかった兄貴分が「どうしたんだ」と訊ねると、「フグをもらったのだが、怖くて誰も食べようとしない」と言います。

「そんなことなら、橋の上の乞食に、毒味をさせたらどうだ?」「なるほど。そいつは、うまい考えだ」

ということで、大鍋にいっぱいのふぐ汁を作り、乞食のところへ持って行きました。

「よう、寒いねえ。出来たてのふぐ汁を持ってきたが、食わねえか。体が温まるぞ」

「おありがとうございます」

乞食の出したお椀の中ヘふぐ汁を入れてやり、ニヤニヤしながらみんなのところに帰ってきました。

それからしばらくして、乞食の様子を見に行くと元気でピンピンしています。

「これなら、大丈夫だ。さあ食べよう」と、みんな安心してふぐ汁を食べました。

「ああ、うまかった」

「それにしても、フグはうまい魚だな」

「毒があっても、食べたがる気持ちがわかるよ」

その後、みんなで橋の上を歩いていると、先ほどの乞食が話しかけてきました。

「みなさん、もうふぐ汁をおあがりになりましたんで?」

「おお、食ったとも。いやはや、実にうまかった」

「それで、お体の具合は?」

「この通り、ピンピンしてるじゃないか」

 すると乞食が、ふぐ汁の入ったお椀を取り出して言いました。

「それじゃあ、わたしも安心していただきましょう・・・」

フグには肝や卵巣にはテトロドトキシンという強い毒があり、その毒性は青酸カリの約千倍といわれます。

19751月に歌舞伎俳優で人間国宝だった坂東三津五郎(8代目)が京都の料亭でトラフグの肝を4人前も食べて中毒死したのは、有名な話です。

フグといっても多くの種類があり、日本近海だけでも数百種に及ぶといわれます。

1983年に食品衛生法に基づいてフグ処理に関する通知を出し、食用にできるフグ22種類についてそれぞれ食べてよい部位を定めました。

しかも身と皮と白子(精巣)以外は食材として販売してはいけません。肝と卵巣は一部の塩蔵品を除き、すべてのフグで禁止されています。

さらに都道府県知事が認める「フグ調理師免許」を所有しなければ業務を行うことができません。
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元気に水槽で泳ぐトラフグ。肝はこんなにでかいんです。きちんと処分しなければいけません。特別に写真を撮らせてもらいました。


今日でもフグ中毒で亡くなる人のニュースを時々耳にしますが、ほとんどが釣ってきたものを素人が調理をしているようです。

そんなわけで、見様見真似と冒険的実践法で調理を覚えた私ですが、ことフグに関しては自分で捌くことは許されません。また、そういう勇気もありません。

私が20年以上お世話になっている、福岡市中央区清川にある「活魚料理 王将」の大将が調理したフグをカメラに収めましたので紹介します。

唐揚げや鍋もありましたがが、見てもらいたいのは刺身と冬ならではの白子焼きです。
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こんなでかい白子にはなかなか巡り会えませんよ。


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秋から冬にかけて、ショウサイフグ釣りが盛んです。

私も房総沖に出かけて行き、かなりの釣果がありました。

こちらも、陸に上がるとすぐに免許を持った船頭一家の人たちが捌いてくれます。

とくにショウサイフグは皮にも毒がありますし、トラフグに比べると小さいので、家に持ち帰って小さなものは唐揚げ、そこそこ大きなものは湯引きにしていただきます。
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漁師さんが、毒のある皮、肝、卵巣を処理してくれます。

それを自宅で湯引きにして食べました。美味しかったですよ。