
靴工具 ハンマーとベンチ&椅子 編
以前 PEN という雑誌の取材を受け ”ビスポーク靴の作り方とは?”という企画があった際、2週間程ライターの方とカメラマンの方が工房にいらしたのですが、その時に
「大川さんいつもハンマーで叩いてますね。」
と言われ、自分では全然気づかなかったのですが、言われてみればやたらとハンマー使うな。。。。と気づきました。やたらと打ってます
と言う訳で、今回はハンマー編です。
釘やタックスは基本ラスティング・ピンサー(ワニ)で打ちます。
ハンマーはピンサーで打った釘を寝かせる時か革を木型に吸い付くように叩いたり、ヒールの側面を〆るために叩いたりします。
ハンマーにも色々と種類がありますが、英国の靴職人が使用するのは”ロンドン・ハンマー”です。
↑マイ・ハンマー
日本のものと比べてかなり大きく重いです。
大きいので靴にアイロンがけをするように使用でき、重いのでタックスは一発で打ち込めます。
↑上が国産。下がロンドン・ハンマー
ハンマーの丸い方は普通にハンマーと呼びますが、平らな方は CAST IRON キャスト・アイロン と言います。
キャスト・アイロンはヒール周りを〆る時に基本使用しますが、その他にも革を押し込んだりと色々と使用できます。
私はベベルド・ウェイスト製法で作る際は、このキャストでヒール周りのソールを吸い付かせていくのに欠かせないです。
ハンマー類は必ず購入したら、エッジと面をサンドペーパーで整えて常に顔が映るようにピカピカにしておきます。こうしておくことで、繊細な革に傷をつけずに思いっきり叩けます。
ハンマーの持ち方は、柄のをこのように持つとコントロールしやすいのでこうです。↓
また、ハンマーは常に足元にこうやって立てて置いておきます。すぐに使えます。
ちなみにハンドソーン・ウェルテット製法の靴作りは、かなり力を入れて釣り込みし、汗だくで💦ハンドステッチをしますので、足でしっかり踏ん張れるように靴職人(底付け職人)の椅子は低めです。
個人差がありますが、椅子の座席の高さは35センチから45センチ位。お教室の椅子は40センチ。
この踏ん張りが力を入れるのに重要です。
ビスポーク靴はしっかりした革を使いますし、ハンド・ブロッキングに関してはプロレス技か?っというような格好で可能な限りの踏ん張りが必要ですものね。
ちなみにシューメーカー・ベンチ と呼ばれる 靴職人(底付け職人)の作業机は高さ45センチです。こちら↓
この机も学生の時に蚤の市で見つけイギリスから持ってきたもの。
イギリスの職人達はこのベンチの前で背中を丸めて靴を作ります。
ロブの職人達は身長が2mを超えている職人もおりますが、みんなこの高さのベンチ。椅子選びはみんな何度も座ってクッションで調節したりして、とにかくしっかり足が踏ん張れる自分の高さに調整します。
さて、ハンマーに話を戻します。
タックスは日本でよく使われますが、イギリスではブラッツというものを使用していました。
↑ 左がタックス、右がブラッツ
ブラッツは Rivet Driver リベット・ドライバーで打つのが基本で、ブラッツが滑らないように面が荒く、垂直に打ち込めるように面が平らで使いやすいです。タックス(リベット)を打つのも勿論やり易いです。
こちらがドライバー↓
↑断面。
リベット・ドライバーもラスティング・ピンサー同様、靴作りにしか使われない工具だと思います。
ドライバーも、手と一体化する工具。
このように持ちます。
私はハンマーの方をよく使用しますが、私の師匠のポールはやたらドライバーを使ってたような記憶が…
私が何かやらかした時は、このドライバーで私の頭を叩く振りをしてブラックジョークを炸裂してたのを思い出します。
私はハンマー持って防御のポーズ。
靴職人の周りは凶器が多い。。。。
ロンドン・ハンマーあります。↓