素材を料理
レディース靴ブランド”acoustic shoes"のサンプル作りをオーダー靴作りの合間に行っているのですが、1号完成!!
メインで作っているメンズの靴とは、”素材選び”も”製法”も”木型の作り”も全く別の靴を作ってみよう!と頭をまっさらにしてから企画してみました。
コンセプトは『柔らかく』『軽く』『足に吸い付く』靴。
カッチリした高級カーフを揉みに揉んで”八方揉み”して柔らかさを出し、耐久性もあり、肌理も細かく、しかも丈夫!!って革になりました。ライニングも耐久性、通気性と究極の柔らかさを備えたホースライニングを使用。
ホースライニングの難点は肌理が細かく丈夫ですが、トコ面がボサボサした素材で、やたらに伸びる。イギリスのビスポーク店でも使われる高級素材ですが、使用方法が難しいので知る人ぞ知るの素材!! 私はイギリスで使い慣れていたので、日本に帰って来てからも使い続けていますが、とても好きな素材です。足に問題がある方にもこの革にはいつも助けてくれる、秘蔵っ子。
今回は、革のふちの処理をバッグドエッジ(baged edge)という製法で縫いました。
”軽さ”と”足に吸い付くように”を実現するため、薄くて丈夫で柔らかい革をインソールに使用し、汗の蒸れも解消出来るようにしました。
また、ソールに衝撃吸収材を使用、驚く程の軽さと跳ね返りの良さを出せました。
さらに、足に吸い付くように、踵部はタイトな木型にして、踵擦れせずにぴったりフィットする為に踵部にスポンジを内臓。
足のボールジョイントに何の縫い目もなく包み込んでいるので、外反母趾の方でも痛くない!
難しいのはLOW INSTEPにある軟骨部分。 ここが当たると痛くなるので、パターンでギリギリの位置を探り、木型の緩み加減も工夫しました。緩くし過ぎると足への吸い付きが悪くなり踵が動くようになるので、ここの探りにはかなり時間が掛かりましたが、また木型の計算式が作れました。脳みそが破裂するかと思いましたが。。。
靴下感覚の足の一部になるような靴になりました。
この吸い付きの良さ!足もとの軽やかさ!をどうぞご覧下さいませ。
兎に角『素材選び』に時間がかかったな〜。(しみじみ。。)ありとあらゆる資材屋さんから、良さそうな物を片っ端から取り寄せ、水に浸してみたり、圧着の糊を何種類も試したり、革の揉み具合を何十通りも試してみたり、数種類を組み合わせてみたり、コンクリートに擦ってみたり、重いウェイトを高い位置から落としてみたり、折ったり、割ったり、熱を加えたり。。。
科学者気分で実験、実験、池井戸潤の小説『下町ロケット』『陸王』気分で(気分だけ💦ですが)かなり楽しかったです。
一つ一つ取り寄せた素材を眺めて『この素材の良さは何だろう?』と素材を手にしてから、料理をする感じで作ってみました。
『足に優しい靴』って何だろう?どんなだろう?って初心に戻って、頭をまっさらにする機会を持てたのは良い経験です。
また、コロナの影響で仕事のスケジュールが予想外の時間をくれて、タダでは立ち上がらないぞ!!となんか闘士のようなものが沸き上がってくれて、凄く集中出来ました。ハングリー精神はいつも味方になってくれるな〜、なんて思い出したり。
あまりに上手くいかない事ばかり続いた日は、空回りしながら徹夜で半泣きで、流してたラジオもどんどん放送終了していって、惨めな気持ちで朝日を浴びて。。。。(笑)なんて事もありましたが、やっと完成。ふ〜。デザインは他にも数種類描いたので、それも次々に作っていきます。
今夜のお酒は久しぶりに"HENDRICKS"を開けようっと!

