良い靴と幸せ | ”Bench work study" Hand sewn welted製法の靴作り教室

良い靴と幸せ

 もう9月だったわね。。。オーダーに追われ気味で、例年に比べ遊ぶ時間も本読む時間も映画観る時間も少ないな今年。夏も旅行に行けなかったし。。。でも、なぜか外出日数は少ないのに、どこかに出ると良い出会いがあり、しかも広がっていって、今までしたいと思っていなかった事に挑戦してみよう!という気になったり、自分から異業種のクリエーターに『一緒にこんな事してみません?』とお誘いしたり、今年の私はひと味違う。人との交流って本当に大切ね。しかも楽しいし。

 

 物を作る人、アーティスト、イベントを企画したりする人と知り合う機会が多いのですが、刺激を与えてくれたり、勉強になる人、長くつき合える人って自己紹介する前になんかピン!と来ます。第一印象って本当不思議です。

 

 でも生徒さんとは、第一印象じゃ全然分からない。最初から、生徒と講師、弟子と師匠という役割があって生徒や弟子ってかなり気を使っているのか、どこまで心を開いていいのか探る時間が全員あるようで、1ヶ月もしない間に『5年位いるよね?』って思う程の人も入れば、1年位経つのに凄く遠慮して丁寧な敬語を崩さない人もいて『もう私のキャラばれてるよね?大丈夫だから、心をひらいてよ〜』と思う事もあります。最初は波長が合わず会話も噛み合なかった生徒さんも、数年も経つとお互いの『取り扱い説明書』を把握出来るようになり、誰にでも良さがあってそれを知ってしまうと一気に心が開きます。

 

 毎週3時間か6時間(18時間の生徒さんもいる!)同じ空間を共有して、『靴を作り上げる』という同じ目標もっているので、生徒さん同士も面白いコンビが出来上がってたり、資材調達の達人と崇められたり、これは絶対あの人知っている、修理の事ならあの人、バイクの事ならあの人、健康の事ならあの人、転職の相談はあの人。。。ってそれぞれ役割が出来てきて、ちょっとした『村』っぽいな〜と最近感じます。こんな小さな村から出てやる!って海外へ靴作りに行く人も居るし、海外へ出る夢を持って村で頑張っている人も居る。異端児も居いるし、居るだけで面白い人も。

 

 足もね、人の性格や顔のように全部違ってて、個性様々。だから靴との良い出会いで、生き生きする足、輝く足、自分のセンスとマッチする足、ワクワクさせてくれる足に変化する。それぞれの足の願いって、みんな違います。

 

 『良い靴って何ですか?』とよく質問されますが、『幸せって何ですか?』と聞かれているのと同じに思います。

 

 人それぞれですよね。自分が何を望んでいるのか?自分は何を欲しているのか?を自分で知る事が『良い靴』を知る事も『幸せって何?』を知る事にも大切なのだと思います。

 

 勝手に『これが良い靴だ!』と誰かに決めつけられて、『そうか、良い靴はこれか』と疑いも無く思ってしまうのが、一番足に窮屈な思いをさせる。(幸せも同じ。)色んな足を知って、色んな足の思い、履き手の思いを知る事も、靴作りにおいて大切だな〜と思います。なかなか難しい事でありますが、職人が1人前になるのに10年も掛かるのは、技術や知識だけでは得られない、こういう経験を積む時間なんだと思います。そんなの何十年も掛かりますよ。正解も完璧もゴールも無いのだから。100人居たら、100人の想いがある訳で、それに一つ一つ寄り添う事が『BESPOKE』なのだから。果てしない。。。。

 

 じっくり『人』、『足』とつき合う時間、大切にしたいです。