Cooky | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

Cooky

 本日は午前中にちょろっと仕事して、友人が腎臓移植手術をしたのでお見舞いに。20年位彼を知っているが、始めて見る顔色の良さ。まだチューブが腕についていたけれど、自分でトイレにも歩いて行けてたし、相づちを入れる好きも無い程良くしゃべって笑っていたので、本当にホッとした。現代の医療技術の進歩はすごいな~。一ヶ月後には退院出来るようで、3ヶ月後には仕事にも復帰出来るみたい。良かった!心配事が1つ減った。何よりも命が大切だもの。彼のエグい手術の話を『もういいよ~。やめてよ~。』と言いながら聞いてたのだけれど、人間の身体って本当に不思議ね。8時間もの手術によく耐えてくれました。お医者様って本当に大変だわね。命を救っちゃうんだから。腎臓を提供してくれた彼の親戚は既に退院して遊んでたけれど、彼にも感謝です。友人はチーズがたっぷり乗ったボロネースが食べたい!って目を輝かせていた。5年間食事制限が凄まじかったから、5年振りに食べたバナナの美味しさは格別だったって。それ聞いて、なんか涙が出た。

 大きな心配事は去り、工房に戻って仕事。仕事の心配事が山積み(笑)。今週来た修理の靴のダメージの凄まじさ。ヒールが殆ど無くなっている靴。『もーお見せするのも恥ずかしい。。。』とおっしゃってましたが、かなりのお気に入りで何とかなるなら、お金に糸目は付けません。。。とのこと。ヒールどころか、踵のアッパーも減っている。どうやって歩いていたんだろう?って靴。こんな靴始めて見た。修理屋さんの生徒に見せたけれど、誰も見た事無いって。でも、なんとかしましょう。勉強、勉強。踵の芯の補給を入れて、アッパーを丁寧に継ぎ接ぎし。。。。かなり難しい。今夜は徹夜かな。

 他には、私が以前作った靴を大切に大切にしてくれてたのですが、何かでオリーブオイルで革を磨くと良い聞いて、たっぷり塗ってみたらなんか革が変になってしまい、急いでお湯につけて落とそうと。。。。ここまで聞いて私の血の気がサーと下がるのを感じ。。。目の前がクラクラ。。。
革をお湯につけたら、革は縮みます!!絶対絶対ダメダメです!で、靴が縮み、半泣きでお店にご来店。とても優しい、柔らかいお客様でいつも笑顔が素敵でしたのに、しぼんでおられました。なんとかしなくちゃです。縮んだ靴は水につけて革をふやかし、元の木型にハンマーでガンガン叩きながら頑張って入れて、革がのびて完全に乾くまで2週間程待つ。待っている間、革が乾燥しない様に、何度も何度も保湿クリームを塗って、鹿の骨でダメージを受けた革を丁寧に撫でてギン面の浮きを修正。ってのをします。

 こういう知識は先輩達から習った。色んな凄い知識と技を教えてくれていた大好きな先輩がいた。
ロブの職人の中でも一番の異端児で、オリジナル ヒッピー。その名もCooky(クッキー)。私がロブで働いている時に、自分の工房を失い(大家さんから追い出される)、私の仕事机の前に引っ越して来た。イージー ライダーか!って感じのアメリカンな装いで、いつも巻きたばこをふかしていた。私が真面目に仕事をしていると、『ユキはさ、中国に帰りたく無いの?』『日本人だって何度言ったら分かるのよ!』『ふふふ、お酒飲む?』とお酒のボトルを机の下から出して来たりするので、一日中冗談の喧嘩をしながら仕事していた。昔、パリに旅行に行って帰りの旅費が無くなって、しばらくパリの橋の下に住んで、そこでサンダルを作って売って、やっと帰って来れた。とか、変な話が多かった(笑)。働く時間も適当だし、よくクビにならないもんだ。と思っていたが、15歳からロブで働いていて、愛嬌があるから何をしても皆がおおめに見ていた。彼の底付は素晴らしかった。今や飛ぶ鳥も落とす勢いのDean Girlingの師匠でもある。私より10歳以上も年上だったけれど、私と同期のSannaと一緒に週末も遊んだりしていた。彼からは仕事の細かい事も、楽しさも、力を抜く事も、頭で考えないで、手で考えるって事も教えて貰った。そんなクッキーが今月亡くなったと、元同僚が教えてくれた。彼が再び自分の工房を構えて私の仕事机の前から去る日に、『ケルト人から貰ったお守り』というネックレスをくれた。ヒッピーの話も沢山聞いた。宇宙人の話や、ストーンヘンジの話も、昔のロンドンの風景も、尊敬する先輩職人達の話も、沢山沢山。一番大好きだった先輩。一番大好きだったお兄ちゃん。彼の人生は奇想天外で本が一冊書けるくらい。もう一度会いたかったな。色んな難解な修理やオーダーが来たとき、クッキーの発想が私の中から出てくる。凄い事だな。クッキーが私に残してくれたものは、ケルト人のお守りと共に、ずーとずーとそばにあるんだと思うとね、クッキーはまだ生きてるんですよね。

 Cooky 沢山沢山ありがとう。貴方が安らかに眠るとは思わないけれど、あの世でもマイペースに楽しんでいる事を願ってます。