つり込み
先週の教室は、つり込み作業の人達が多く、大きなため息と、全身に力を込める為のうめき声と、『もうこれ以上は無理そう。。。』などの弱音と共に、3時間のクラスが終わる頃には皆さん、若干痩せてやつれていました(笑)。教室に通うようになってから『痩せた』という人も今まで数人おりますので、『靴作りで痩せる!』ダイエット本でも、出版しようかと頭をよぎります(笑)。
つり込みは実際、かなり力を使います。そもそも、厚さ1.2ミリの繊維の密なカーフを生徒さん達にも使って貰っているので、初心者は大変かと思いますが、このぐらいの革を使わないと耐久性に乏しいし、履いているうちに革が伸びてくる。革が伸びては、折角足にあわせて木型を作ったのに何にもならなくなってしまいます。靴屋さんで靴を買うときに『ちょっときつい。。。』と言うと『履いているうちに革が伸びますから大丈夫!』等と言われますが、ビスポークの場合、アッパーの革が伸びては困ります。木型の大きさのまま、キープしていかないと。履いているうちにソールやフィラーのコルクが沈んで足入れした時のタイトさが無くなるのは、より足の形状を反映し、足にフィットしていきますが、アッパーの革が伸びて緩くなるのとは違う。
だから、つり込みはこれ以上革が伸びない!って位、しっかり革を伸ばしてゆかねばなりません。つり込みをする時にもしっかりと革を伸ばす為に工夫が色々とありますが、まず、踵部にアッパーを沿わせるときは、木型のトップにアッパーのトップを合わせてから前方をつり込みします。前方がしっかり木型に吸い付くようにつり込みし終わった後、踵部トップのアッパーを実際の踵の位置まで下ろしていきます。こうすることによって、さらに革が引っ張られ、しっかりと木型に吸い付いていきます。さらに細かいことを言うと、つり込みをする時に打つ25mmの釘をしっかりと半分の長さまで打ち込み、若干木型の面より外側よりの角度に打ち込むと、釘を倒す時にさらにタイトに革が木型に釣り込まれます。釣り込む時は全体重をワニを握っている手に乗せるようにするためにも、ちゃんと低い椅子に座って、足で踏ん張らなくてはなりません。だから椅子の高さも大切です。こんな感じで一本一本の釘を力をこめて丁寧に打ち込んでいくので、汗もかきますし痩せるわけです(笑)。
実際、私は高校生の時握力が”7キロ”で測定している先生に『おまえ、ふざけるなよ!』と言われましたが、何度やってもその位の数値でしたが、今や私の二の腕の筋肉は生徒さんが慄くほどに発達しました。靴作りを始めたばかりの時は先輩達に馬鹿にされて、悔しくてダンベルで鍛えたこともありましたが、何でも日々の積み重ねですね。今はうめくほど大変でも、だんだん要領もつかめてきますので、諦めずに頑張っていきましょう!
このところ、嬉しいことが沢山ありまして、かなりテンション上がっています。前にブログでイギリスの1936年に書かれた”靴作りマニュアル本”をハーバード大学出の方から、翻訳して下さるというというお申し出を頂き、アンビリーバブル!!と感激してしまいましたが、既に生徒のOさんがCDRに入れてくださり、翻訳も始まっています。かなり細かく書かれていますので、翻訳が終わったら、益々突っ込んで靴作りに生かせて、更なる進化が出来ることでしょう。本当に色々な方達に助けられてBWSは靴作り探求者たちの地下組織!!(笑)として発展しています。どの国のビスポーク工房にも負けない伝統を受け継ぎ、進化させて今後も勉強していきます!!
12月26日(土)にはイギリスからロブ・パリのパタンナーの黒木氏が来日してまたパターン講座をしていただく事になりました。他にはロブ・ロンドンのマイケル氏が生徒の足から、木型を作って下さるとのお申し出もあり、第2回”マイケル氏製作の木型争奪あみだ大会”も今月末に開催します!!昨年あみだで優勝した人の木型はとても美しく、皆でうらやましがりましたが、今年は誰がゲットするかな?お楽しみに!!
そんな嬉しいこと続きで、工房内で根詰めて仕事をしていましたが、そろそろストレスも溜まって来ましたので、土曜日の夜は久しぶりに友人が経営する大塚のJAZZ BAR”ドンファン”へ。もう、この店はとっても和めて、笑い通しで、音楽三昧!!友人のバンドが2ステージ行った後、『聞き足りない!』と言えば残っていたミュージシャンがセッションしてくれるし、『甘いとろける曲が聞きたい!』と言えば、オーナーが弾き語りでとろけさせてくれるし、お酒もつまみも美味しいし、大塚のヘブンです。結局お店を出たら朝だった。。。。二日酔いが昨日は酷かったが、今週もエネルギーを蓄えたので、いい靴作るぞ!!