The 靴マニュアル
今週はシューぺディックの先生とコラボで作製した靴のお受け渡しが済み、その後の結果報告頂きながら、調子を見ている段階です。仮縫い数の多さを更新した1足で思い入れも多く、お客様にも本当に真剣にお付合い頂き感謝の気持ちがいっぱいです。
ビスポーク靴は、お受け渡しして直ぐ『完璧な履き心地』というのは殆どなく、履き始めはソールがまだ硬くそりが出てこないので、フィッティングがタイトに感じたり、『指が少しあたっている様な。。。。ないような。。。』と感じる方がいたり、ソールとインソールの間に詰めているコルクが足の圧力での沈みがまだでなかったりで、空間が少ない感じがしたり。。。踝が若干あたる。。。などがありますが、大体2週間から4ヶ月の間にインソールが足裏の形状にコルクと共に沈み、ソールの返りも良くなって、タイト感も解消されていきます。『調子を見ている段階』とはそういうことなのですが、この段階はお客様が靴を”仕上げている”時期と言えるでしょう。この時期職人はじっと我慢して報告を待つのみ。毎足とても気になるの期間です。
足入れ直後から工房で見送るまで『わーぴったり!すごーい!!』等と言われたりした時の方が、不安になったりもするので、何度も『緩い感じがしたり、指が赤くなるくらい擦れたりしたら、即連絡して下さい!』と念を押してお伝えします。1足目はお客様の歩きの癖や骨の動きも把握しづらいのですが、仮縫いをしているので、修正といってもちょっちょっと木型に手を加えて、再度木型を靴に入れなおして型付けしたり、アッパー部の調整をしたりで問題は解消するので、たいした手間はかかりませんが、ここで『ちょっちょっと』の修正を加えることによって、歩きの癖などが把握できますので、大事な仕上げ作業です。
他には、今まで靴紐を結びっぱなしで靴の脱ぎ履きをしていた。。。というお客様の仮縫いフィッッティングがあり、こういう方はたまにいらっしゃって、仮縫いフィッティングの時『きつい!え!こんなに圧迫感が!』と足入れした時におっしゃりますが、そのまま履いて頂いて10分位世間話をしていると『なんか、圧迫感が感じなくなり、踏まずも心地いいです!』と感じ方が変わってくる。で、その後履いて来た靴に履き替えると『うわ~この靴ゆるゆる』(笑)と。今までの靴の選び方と、正しい靴の選び方を実感して頂ける瞬間です。
今週は生徒さんも展示会でヤル気を出したのか、靴の書籍を教室の『図書館』と名づけている本棚(笑)の前で並んで立ち読みしている人達も多く、『玄人好みの靴本』を引っ張り出して見せたりしていたのですが、やっぱりイギリスの本が皆の興味の引くところ。。。私の宝物として特別な輝きを放っている全12巻の『靴作りマニュアル』。1934年に書かれた本で、昔コードウェーナーズ・カレッジで教科書として使われていた本で、かなり詳しく書かれている。月型(STIFFNER)について4ページにわたって書かれているような狂った本です。私は10年位前に古本屋で探して探して見つからず、やっとイギリスのネットオークションで見つけ、1冊100ポンド(当時2万円位)だったのを、『高い!』って悩んでいるうちに誰かに買われてしまい、後悔の日々を送りながら毎日毎日ネットで探してたら、1冊300ポンド(当時6万円位)で『パターンの作り方・編』が出て、へそくりを全部使って購入。この調子で残り11冊を揃えるなんて不可能。。。。って思ってて、職人の先輩に話したら『もしかして、それってグリーンの本?この位の大きさの』って言うので『なんで知ってるの?』って聞くと、『昔ミシンを買ったとき、ミシン屋さんがくれた』と言うではありませんか!!!で、残りの11冊を借りて、自宅にコピー機を買って、来る日も来る日もその本をコピーし続けました。(一冊150ページから300ページ!涙)自分で一枚一枚折って、製本して仕上がった本です。きちが○沙汰の涙ぐましい努力の結晶。
作り方としては、ビスポークの作り方も既製靴の作り方も採寸方法から木型の作り方、パターン、クロージング、メイキング、ハンド・ソーン・メイキング、リペア、お店の作り方、ディスプレイの仕方、価格設定の仕方まで載っているのですが、80年位前の本なので、私の作っている制作方法の方がずっと古く、手が込んでいます。私としては物足りない感もありますが、一工程、一素材についての説明の豊富さにはイギリス人のこだわり、探究心、パイオニアとしての誇りが漲っていて、これ以上の『靴本』はありえないと思いますし、靴作りの奥の深さの恐ろしさを感じさせられます。私はいつかこの本を上回る本を残したいな~とエベレスト級の高い夢を持ってますが、まだまだ経験を積まないとね。実践が一番の勉強でありますし、ある程度のレベルに達しないと、この本も全部を吸収できない。頭でっかちでも手がついていかないですものね。
生徒達には『ユキさん訳して!頼むからこの本訳して!』と言われてますが、『そんな時間あるわけないでしょ!』です。生徒のOさんがCDーROMにしてくれるそうですので、生徒の皆さん英語を勉強してコツコツ読んでみては如何でしょう。絶対、誰も読みきれないと確信してます!(笑)私も全部読んでないし、これ読み始めると不眠症が治るから。。。。でも、拾い読みでもかなり勉強になります。
とりあえず、私が生徒さんに教えている靴作りは180年前から作り続けられている製法ですので、『靴マニュアル』の内容より『レア』ってことで、来週も靴作り頑張ろう!!(笑)
P.S、 今回のような内容をブログで書くと、教室の生徒さん以外からもお問い合わせが殺到しますが、申し訳ありませんが、対応できる時間も労力も私にはございませんので、どうぞお問い合わせなどはご遠慮下さいませ。このブログは教室内の対応範囲で書かせて頂いておりますので、どうぞご了承下さいませ。