木型作り | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

木型作り

 朝夕、蝉の声を聞きながら夏を感じております。過酷な『ビール坂』を登る時が最高で、右手に富士山を見つつ蝉の声を聞くと、子供の頃の夏休みを思い出します。『ビール坂』は野川を渡ってすぐの所にあるのですが、そこに昔はビール工場があって、工場が移転した後はプール付きのレストランに変わり、従兄弟が遊びに来たりするとそのレストランに連れて行って貰ってました。親達はレストランでディナーを食べている間、私達子供は貸切のように人のいないプールではしゃぎまわってました。夜のプールで遊ぶのがあまりに楽しかったので、そのレストランで何を食べたのか?果たして子供は食事を与えられていたのか?って位、記憶がありませんが、その後、レストランはテニスコートになり、現在はバス停と市営だか区営だかの貸しホールに。時代の移り変わりを感じつつ、あのレストランにはまた行ってみたかったな~と、蝉の声を聞きながらノスタルジックに。

 今週は同業者の方が、木型を見せて欲しいと訪ねていらして、木型についてあれこれ談義。20年以上注文靴を作られている方ですが、まだまだ疑問が多いようで、木型を作っている職人を色々と訪ね歩いて日々勉強し続けているようで、頭の下がる思いでした。お互いの木型を見せ合いながら行っている工夫や問題点などを話しました。その方がおしゃっていました。『私が靴作りを学んだときは、誰に聞いても教えてくれなかった。特に木型は誰も教えてくれず、はっきりと知っている人もいなかった。』

でも、見せて頂いた木型は本当に沢山の経験と工夫を凝らしたもので、日々努力し続けていることが伺え、私も勉強になりましたし、沢山刺激も頂きました。ホント、木型は難しいです。私の木型については『ここまでやりますか!積み上げが過酷ですね。』と丹念に底部の形状を眺めて感心して頂きましたが、生徒もこの木型で靴作りをしていると言ったら、驚いてました。やっぱり、積み上げ大変だものね。BWSは!!(笑)。


 結構、同業者の方達には、私がお客様に作る靴と全く同じ手順で、何も省略せずに生徒に全部教えている。と言うと驚かれますが、そう言われてみると、省略せずに靴を作ってしまう生徒さん達は凄いな!と、改めて思います。普段はデスク・ワークの人達だったり、物など作ったことがない人が殆どなのに!みんな偉いね(笑)。

 木型は既製靴の基準での作り方は日本でも昔から行われているけれど、”ビスポークの木型”とはまるっきり別物で、一から見よう見まねで作れるものではない。ましてや独学でそうそう出来るものではなく、特に土踏まずの形状や底部の形状は、実際に目の前で手取り足取り習っても、習得するのに数年はかかる。理論として理解するにも、実際に自分で履いて、自分で靴を作ってみないとどこがどのように歩きやアッパーに影響を与えるのかということが、理解し難い。木型からハンドソーン・ウェルテッドを知らないと、『これ見よがしな』『金持ち相手の』『どうだ、参ったか製法』等と言うトンチンカンな輩になってしまう。この製法が、足と歩きに人間工学的にもっとも理にかなっていて、それのみを追求した結果、手間隙が際限なくかかることにより、高額になってしまうという点を理解してもらえない。また、技術をもった者が、門外不出などと言った日には、後に残すことが出来ない。長い間、職人達が一足一足作る中で得た経験と工夫の積み重ねを受け継ぎつつ、各々向上心を持って更なる改良を施し作られている製法を、なんとしてでも残していかねばならないと、強く思いました。

 時代は変り、風景は変わるけれど、人は歩き、靴を履く。人の足は全員違い、歩き方の癖も違う。万人に合う靴などこの世に存在しない。

 現在木型を製作中の生徒さん達、気を抜かず、この位でいいや。。。と手を抜かず、せっかく作る”自分だけの足に合う”自分だけの木型作りに魂込めて学んでいきましょうね。会社の上司から靴作りを頼まれて、製作中の生徒さんも現在2名おりますが、自分の木型以上に頑張ろうね。リストラとかに繋がらないように。。。。