手元のケア | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

手元のケア

 日曜日に青山のスパイラルガーデンへ東京造形大学部デザイン学科テキスタイル専攻有志主催の卒業制作展を見に行ってきました。以前お教室に通っていたS君がどうやら大学を無事卒業できるとの事で、お誘いを受けて行って来たのですが、なかなか良い作品が多く、『へ~』と感心しながらゆっくり眺めてきたのですが、テキスタイルも面白いですね。見るからに手の込んだもの達でしたが、実際に作るところを見たらもっと凄いのだろうな~と。明日17日まで開催されておりますので、お時間のある人は是非足を運んでみて下さいね。


 先週は金曜日の昼のクラスは女性が全員お休みだったので、男衆6人のクラスでした。女性がいないとちょっと淋しいですね。華がなくて。。。現在、お教室は男女比がほぼ半々。仕上がる靴の出来はどちらも甲乙付けがたく、靴づくりの歴史の中で、長いこと男性の仕事とされていたことが不思議です。時代と共に女性パワーが精神的にも肉体的にも社会的にも増強されているのでしょうね。男衆もがんばれよ(笑)。


 さて、先週はブラック・ワックスで汚れた手をどうやったら綺麗に落とすことが出来ますか?って質問を受けました。お風呂に入って、熱いお湯で洗うと落ちますが、どうやら生徒さんの中には、お風呂から出てから靴作りを始める人もいるらしく、すくい縫いや出し縫いなど、ワックスのついた糸を使う作業をする時に、汚れを気にして作業が進まない。。。という人もいるようです。私もブラック・ワックスで汚れた手は、たわしや軽石でごしごし擦って落としていた時があって、一時期指紋が消えていたのですが、最近はアロマ・オイルのグレープシード・オイルを手にたっぷりつけて、マッサージしながら落としています。かなり綺麗に落ちますし、手も潤います。どんなオイルでも良いと思いますが、グレープシードが一番安いので。。。


 重曹や、『きなりっこ』という粉石けんや、車などの整備士さんが使う『レタラクリーン』なども良いのでは?と意見が上がりましたが、なるべく保湿などの効果もあるほうが手に優しいかな。本当に靴作りは手が荒れるし、汚れる。以前、ワックスで汚れた手を良く洗わずに友人に会ったら『お前は炭鉱で働いているのか?』と言われたことがありますが(笑)、足元だけでなく、手元にも気を使いたいものです。この数年で私の手も、徐々に変形してきて、自分的には誇らしいのですが、綺麗な手をしている人を見ると『いいな~綺麗だな~』と思っている自分もいます。


 それから、糸をよる時にお教室で使っているwaxは、ビーズ・ワックスとタールを煮て混ぜ合わせた物を使っておりますが(イギリスから送ってもらっている)、タールは色も黒く、防腐剤にもなり、糸を縒る上で適度な粘着力もあり使い易いですが、タールは発がん性物質ですので、手は良く洗ってくださいね。日本では糸を縒る時には”チャン”という、松脂にビーズ・ワックスとオイルを少し混ぜた物を使います。こちらの方が安全ですが、糸が若干硬くなります。使い勝手がかなり違うので、私は使うのを渋っていますが、こちらも使ったことのない人は一度使ってみてください。ご希望の生徒さんがいれば、お教室で”チャン”の作り方を実演してみますよ。イギリスでは、ブラック・ワックスのほかには、ビーズワックスのみで糸を縒る人もいますので、家でお風呂上りに靴を縫いたい人にはこちらの方がお勧めです。糸の耐久性等の違いは若干んあると思いますが、本当に若干だと思います。ビーズワックスで出し縫いや、すくい縫いをして、縫い目がほどけた!という話は聞いたことがありませんので。


 ビスポーク靴を作る場合、一つ一つの工程や、材料において、最善&最高を目指す!というスタンスがありますので、2つ3つの選択網がある場合は金額や手間のかかりようよりも”どちらがより良いものか”ということを第一に考えて選択していくので、タールが入っているものを選んだ理由ですが、これでなければダメ!って言うことではありません。どのように選択していくかも、職人によって、物によって違ってきますし。現在は、幸いイギリスから取り寄せることが出来ますが、このブラック・ワックスを作ってくれている職人もいつまで作ってくれるかわからないですし、常にアンテナを張り巡らせて次の時代に対応できる材料を見つけ、選んでいかねばなりません。その為にも、一つ一つの工程を深く理解し、『何の為に、どんなものが必要か』ということも学んでいかないとね。糸はどんな状態が良いのか、どうすることによって強化されるのか、という素材の生かしようなどもね。はあ~深いね~。靴作りは飽きないね~。