本物を作ろう!
さてさて、今週もなんだかんだとお教室も終了。体調不良でお休みの方が多かったですが、皆様どうぞお大事に!
今週は自分で作った木型のフィッティング(仮縫い)を終え、普通は仮縫い靴は破棄してしまうのですが、『もったいない』と言って、セメンテット用のウェルトをつけて、ゴム底をつけて、十分履ける靴にしていた生徒さんもいました。『なんか、これで満足しちゃった!』と喜んでいましたが、ちゃんとシャンクやサイド・ライニング入れて、革底の履き良さと、比べてみるのも良いですよ!以前にも、同じ木型でセメンテット製法の靴とハンド・ソーン製法の靴を作った生徒さんが、履き心地の違いをびっくりしていましたが、これは理屈で幾ら説明しても、体感してもらわないと分からないことなので、是非試してもらいたいです。
その他にも、1足目の木型を抜いた生徒さんも2名いました。一人は足の薄くて細い方なので、中に敷物を入れて調整しなくてはならなかったですが、もう一人の生徒さんはかなりフィットしていて、『あ~、ほうほう。。へ~。。』など、一歩づつ丁寧に床を踏みしめながら、意味不明な単語を発していたかと思ったら、教室に履いて来ていた靴を指差して、『この靴って全然あっていなかったんだ!全然あってない!!』と、自分で作った靴のフィット感の良さを不思議がっておりました。良かった、よかった。
ただ、靴の本当のフィッティングが分かるのは数ヶ月歩いた後に分かります。最初は革が硬く、ソールのそりが悪い為と、インソールもなじんでいない為と、アッパーにしわがまだ入らない為に、その靴が本当に心地よくなるまでには至らない。逆に、足入れの時は『ぴったり!』と思っても、なじんできたら指に当たる部分なども出てきたりするので、靴を最後に完成させるのは、靴の持ち主の仕事となります。勿論、その後に再度職人が修正を重ねるのですが。。。ですから、完璧に靴が完成するには、靴の製作が終わった後、数ヶ月を要します。大体、4ヶ月履いてみて、なお問題がなければ、『完璧なフィッティング』となります。
4ヶ月位履くと、フィラーのコルクもインソールもあるべき形に形成されますし、ソールも返りが良くなり、その結果紐の締めの位置も定まって来ます。足入れの時に12ミリ位、羽(フェーシング)が開いていた場合、丁度良いと思われる6ミリ位の開きに収まります。ですから、最初から開きが6ミリしかない場合、なじんでくると羽が全部閉じてしまい、羽の調整が出来なくなってしまうので、こういった場合はふつう、中敷に厚いものを入れて底からスペースを上げることを殆どの靴屋さんはしています。私の場合は、底に厚い中敷を入れるとせっかくの木型の形状を失ってしまうのを避けるために、タンを取り外してタンの中にふんわり感が心地よいフォームを入れます。そうすることにより、木型のボトムのフィッティングを変えることなく、羽の開きを出すことが出来ます。手間は掛かりますが、木型から全部一人で作っているわけですから、今更そんな手間の一つや二つ、何てことないですよね。
手間を省かないという事で思い出しましたが、今週の教室でも生徒さんが『一つ雑に作業すると、どんどん雑が広がっていく。。。』って言ってましたが、それは確かです。真っ直ぐにすべきところを、『あ~面倒くさい!』といい加減にしてしまうと、後々いくら叩いても削っても”真っ直ぐ”にはなりません。インソール作りをいい加減にすると、ウェルトがゆがみ、ソールがゆがむ。釣り込みをいい加減にすると、アッパーはゆがみ、しわが入り、ウェルトもゆがみ、ソールもゆがみ、ヒールの積み上げが過酷になったりもする。手抜きは全部自分の後々の作業をどんどん困難にするだけでなく、仕上がりも今ひとつになる。これは、すべての物づくりについて言えることでしょうね。早く、大量に出来るからと言って農薬をふんだんに使った野菜は畑をだめにし、人間の体に害を与える。製法の甘い服はすぐにほつれてくるし、家具も電化製品も手間を省くとろくな物にならない。作り手はどうすれば良いのもが出来るかって知っているのに、コスト削減、手間削減ってばかりやっている昨今、せっかく自分の靴を作るのですから、思う存分手間暇かけて、本物の物づくりをしていきましょうね。本物と本格派は全然違いますよ。