エナメルの靴
暑いんだか、寒いんだか、はっきりして欲しい天気がつづき、先週から仕事も年末並みの忙しさで、ちょっと体調不良ぎみですが、皆さんお元気ですか?仕事が忙しいことは良いことと思うようにしてるので、まあ良いのですが、体調が優れないと集中力が欠けるので、集中力が落ちてきたな!と感じたら、駅ビルの本屋へ行って気分転換するようにしています。なぜか、元気が出てくる。立ち読みが良いことか、悪いことか、と悩むところですが、気になった本をぱらっとめくると、結構面白い言葉や気づかせてくれる文章に出会ったりする。
本日は題名がいまいち覚えていないのですが、 『クリエーター症候群』(だったかな?)をめくったら、”芸術家と職人”の違いについて書いてあって、「芸術家の作るものは、作る人が主体で、職人の作るものは、使う人が主体。」とか、そりゃそうだ~ってことの他に、芸術家にたいして『職人ぽい作品』って言うことは最大の屈辱にあたる。。。(笑)みたいなことが書かれてて面白かった。職人は日用品を作って、生活と直結しているものづくりだからね。他にはアーティストって言葉はアルチザンの後にできたらしく、大昔は、絵描きや彫刻家もアルチザンと呼んでいたらしいです。歴史的にも面白いですね。でも、閉めくくりに『職人のものづくりの中には、強く主張や表現するのではなく、さりげなく遊び心が加えられた技があり、職人の方が大人かも知れない。。』とか書かれてあり、『ふふふ』と不気味な笑みを一人浮かべ、仕事に戻りました。この本やっぱ買おうかな?(笑)
そうなのよ。職人の面白さは、眉間にしわを寄せて険しい顔をしながら仕事をしていても、やっぱり、生活は楽しい方がよいわけだから、さりげなく楽しいことをしたいと、内面ワクワクしながらものづくりをしているのです。だから、私の知っている職人友達は皆、変にキャラクターの濃い人が多く、みんな明るくて面白いのだ。背中丸めて、下向いて暗そうに仕事しているけれど。。。(笑)
そんな気分転換をしながら本日作っているのは、エナメルの靴。エナメルの靴のオーダーはめったにない。(イギリスだと結構ありますが。。。)この間、友人の靴職人にエナメルで作るんだ~と言ったら、『え!!エナメル!!日本人で?ホント?どんなお客さんなの?』と凄くびっくりされた。その位、エナメルの靴のオーダーは日本では少ない。なぜかと言うと、エナメルの紳士靴は、究極のドレス・シューズだからです。エナメルの靴を履くと言うことは、タキシードを着ると言う事と、ほぼ同じ事です。ヨーロッパのような社交界がある国ですと、紳士たるもののワードローブには欠かせないものですが、日本ではどれ位の人がタキシードを着る機会を持っているのでしょうか?しかも、オーダーされた方は私服もスーツも本当におしゃれで、会話もウィットに富んでるし、イギリスの紳士の中に入っても、全然見劣りしない方。タキシードもビシッと決めるんだろうな~と思うと、もう、エナメルの靴作るのも楽しくってしょうがない。エナメルは他の革と違い、革を選ぶのも結構難しいし、ちょっと他の革とは、かってが違うので、やりずらいところもあるのですが、めったにない苦難はウェルカムです。勉強になるもの。
エナメルの革はクロムなめしの革に樹脂をスプレーで、しかも手作業で吹き付けていくので、ところどころの革の厚さが違く、同じ厚さの部分を探すのが大変。そして、樹脂でコーティングするので、原皮は傷があろうと、トラがあろうと、綺麗にエナメルになってしまうわけで、原皮が良いものをエナメルにすることはまずない。だから、綺麗なところだと思って裁断しても、気をつけないと強くつり込みしたら、傷が浮かんで来たりするので、ハンドソーンでエナメルを作る場合、普段使わないテクニックを要します。裁断のテクニックも必要だし。だから、かえってやりがいがあります。メンズより、レディースの場合もっと気軽に履けるから、自分のエナメルの靴が作りたくなちゃった!雨の日でも安心だし。メンズもおしゃれな人はもっと気軽に履いてもらいたい素材ですけれどね。デザインしだいかな?エナメル普及にがんばってみるかな?遊び心がね、職人の長所ですから。。。(笑)