人生を楽しむ始めの一歩
8月15日(金)、16日(土)はお教室はお休みです。どうぞ、お間違えのないように。
BWSの夏のイベントが終わって、やっとのんびり靴製作だけしていたこの4日間。幸せ。。。
イベントは楽しいし、いろんな課題や問題点など、お教室の質を良くしていく為のアイデアが見つかったりして、実りも多いのですが、私はやっぱり靴を作っている時が一番楽しく、幸せです。ここしばらく、黒のオックスフォードの靴を立て続けに4足作っているのですが、今日その中の3足を並べて眺めて見たのですが、すべてまったく違う。それぞれ違う人間の木型から作っているし、オックスフォードといってもウィング キャップであったり、ストレート・チップであったりって点もあるけれど、何よりも違うのが、それぞれの靴の醸し出す雰囲気が違う。それぞれのお客様に似合うように、と思いながら作った形の違い。こんなに違うのか~と今更ながらビスポークの靴作りの楽しさを実感しました。たまに、初めてのお客様に『こちらのハウススタイルの定番は?』と聞かれることがありますが、ハウススタイルはない。時々ジョン・ロブ(ロンドン)らしい、トウシェープだのスタイルだのって雑誌等で見かけるけれど、本当はロブにもそんなのはない。木型職人とお客様とでトウシェープもソールの厚さも、ヒールの高さもアッパーのデザインも決めるし、それぞれの職人のセンスも技術もまちまちだし、木型は原型があるわけでなく、一人一人の足にあわせて、ヒールも踏まずもトウシェープも削りだしているので、すべての靴が違う靴。ビスポークのお店によっては原型の木型があって、その木型に付け足したり、削ったりしているところがあって、そういうお店だとトウシェープを数種類の中から選ぶ選択網はあるけれど、ビスポークって言ってもどこのお店の靴かすぐ分かったりする。それはそれで、かっこいいそのお店の自慢のトウシェープなので、購入する側も履いた自分を想像しやすいし、買いやすいと思うし、作る側も木型作りの手間が省けるので、良いことだと思う。でも、私がそういう作り方をせず、ハウススタイルを持たないのは、靴をお客様に溶け込ませるくらい自然に、履く人に似合った靴を作りたいから。誰かの考えたデザインでなく、お客様と話し合いながら考えたデザインで、お客様の足に合った靴。私の考えるビスポークの靴作りは職人とお客様の共同作業だと思っているから。
デザインを考える時、その場で決まらない時がたまにあって、そういう時はお客様にこちらが提案する靴のデザイン画を数枚と革のサンプルを数枚、次回お越しになる時までの”課題”として(笑)お渡しする時がありますが、皆さんお家でスーツを並べて、革と見比べ、デザインとにらめっこしながら、あーでもない、こーでもないと考えてくださって、納得できるデザインが決まったりする。『悩ませてすみません。。。』と私は思うのですが、お客様方は『楽しかったです!』と言って下さる。こうやって選んだ場合、作る前から靴に愛着を持って下さるので、こちらはプレッシャーが倍増しますが(笑)、出来上がった靴のお手入れ等にも俄然意気込みが違うらしいです。
私は、とにかく靴作りが好きで楽しいけれど、注文されるお客様にも、履いて楽しんで頂くだけでなく、注文する前も後も、靴を”オーダーする”ということを楽しんで頂きたい。外にでる前に必ず履く『靴』が素敵なものだったら、気の重い外出も楽しくなるかも知れないし、自分と一日生活を共にする靴が素敵なものだったら、その日一日が素敵な日になりそうだもの。そして、その素敵な靴が自分だけの世界にただ一足の靴だとしたら、どんなに足取り軽く、幸せな気分になるだろう。朝の第一歩目がどんなに気持ちよいだろう。生活を人生を楽しむ達人は、素敵な靴の履き心地から朝の一歩が始まると思う。