ブラック・ワックス・ボール | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

ブラック・ワックス・ボール

前々からお話していた、お教室のオープン・デイを8月5日(日曜日)に行います。生徒さん方の今まで作ってきた靴の展示を行いますので、8月に入りましたら展示するものをお持ち下さい。ご家族、お友達をお誘いの上、日頃の成果を発表いたしましょう~!また、お教室に興味のある方々も是非お立ち寄りくださいませ。



 さて、このところ蒸し暑い日が続いておりますが、靴を作りながら『夏の靴作りは大変だ~。』としみじみ感じております。私がクーラー嫌いなのが状況を悪化させていると思いますが、夏の暑さの中の靴作りは冬のそれとは色々と違ってきます。水に浸したソールやヒールも作業途中で乾くスピードが早いし、糸につけているワックスも溶け易く手にべたべたくっ付く。作業の3工程くらい先を計算してチャッチャか作業しなくては、革が最も作業しやすい状態を逃してしまう。ブラック・ワックス・ボールには少しビーズワックスを足して硬めにしてみたり、夏の靴作りは一手間かかる。


 そうそう、この糸作りに使う『ブラック・ワックス・ボール』について良く質問されますが、このボールは蜜蝋(ビーズワックス)と固形タールを混ぜ合わせたもの。日本では絶対に手に入らない。固形タールが日本にないから。。。(涙)。イギリスでもジョン・ロブでしか使ってないので、貴重です。ま、レアさで使っているわけでなく、日本のチャン(松脂)とは質感が違い、柔らかく糸に付けやすく、タールの黒い色もつくので糸を染める必要がない。それと、タールは防腐剤でもあるので糸が長持ちする。チャンだと気温によってぼろぼろ割れたり、ねとねと解けたり、どうも長持ちすると思えない。何十年も履ける靴にするには、こういうところにも注意が必要だ。


 このブラック・ワックス・ボールは現在もロブの職人のおじさんに作ってもらっている。タールと蜜蝋を鍋でぐつぐつと溶かし、良く混ざったら水の入ったバケツに流し入れて手でねちょねちょと丸めていって、冷えたら出来上がり。かなり匂いがきつい。新品道路の匂い。そもそも、このタールは道で道路工事をしているのを見つけては、作業員に『ちょっとタールを分けて~』とお願いしてブロックのものをもらってくる。日本でも道路工事現場を見つけて同じ事を頼んだが、日本ではなんと固形タールは使っていず、液体タールなので作れなかった。ところが。。。。。2年前に液体タールをビンに入れたままにしていたら、液体タールが分離して水分が上に、タールは下へ沈殿している!!もしかしたら、固形タールが手に入るかも!!とビンのふたを開けようとしたら、タールで固まって、蓋はびくともしない。私の怪力でも空かない。。。。下手にビンを動かすと、せっかく分離したものが混ざってしまう。。。(涙)。腕力自慢の方がいらしたら、どうぞこの蓋をあけてください~!(祈願)


 イギリスでタールは購入するものでなく、貰ってくるもの(笑)ですが、その他に『ガラス』もそうでした。日本でも良心的なガラスやさんは2ミリ厚(が一番使いやすい)のガラスの割れたものはありますか?と聞くとただでくれたりしますが、イギリスではお店の周りの画廊へ行って、絵を入れる額縁用のガラスの割れたものを貰ってくる。厚さも丁度良いし、画廊の人も処理に困るので喜んでくれる。私は使いっぱとして、よく画廊に貰いに行かされていましたが、画廊の人達に絵を見せてもらったり、色々教えてもらったりも出来て楽しかったな。


 靴作りには多くの材料と工具が使われ、それらを作る人達がいる。その他に、道路工事や画廊が関わっていたとは誰も知らないよね(笑)。人は誰も1人で生きていない。靴は1人では作れない。人との関わりは本当に大切です。