英国紳士靴デザイン パート1;ダービー | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

英国紳士靴デザイン パート1;ダービー

「靴」といわれて皆さんの頭の中にぱっと浮かぶのは、どのようなスタイルですか?私は茶色のダービーを思い浮かべます。


ダービーは外羽根式と呼ばれ、クウォーター(腰革)がヴァンプ(爪先革)の上に縫い付けられているスタイル。このスタイル、ロンドンのジョン・ロブではナビ・カット(NAVVY・CUT)と呼ばれています。NAVVYとはイギリスで肉体労働者を指し、彼らが作業ブーツとして外羽根式のブーツを履いていることからこのように呼ばれています。昔はハイキング用、ウォーキング用として履かれていましたが、今ではオフィスやフォーマルな場でも履かれていますし、ジーンズにも合わせやすいのでとても便利なスタイルです。しかも、女性でもこのスタイルは履きこなしやすく、(女性用はギブソンと呼ぶ)紐でぎゅーと締めたり、たっぷり緩めたり出来るので、コンフォート・シューズにもこのスタイルは多く使われています。


外羽根式の構成上ベローズ・タン(Bellows・tongue)と呼ばれる、フェーシングの裏に一枚の長いタンをつけることが出来、これによって砂埃や雨を靴の内側に入れない工夫も出来ます。


ダービーはカジュアル・シューズなので、基本的にはウェルトはスクウェア・ウェイストで仕上げ、ボリュームを持たせます。ダービー・ブーツの場合、ヒールの回りもウェルトをつけるシート・ウェルトでさらに重厚にしてもバランスが良いです。


話が少し外れますが、ビスポークの老舗が「shoes maker」でなく「boots maker」と看板を出しているのは、100年以上昔のイギリス人はほとんどがブーツを履いていたからです。ロンドンにある恐ろしいミュージアム「ロンドン ダンジョン」へ行った事がある方はお分かりでしょうが、一世紀ほど前のロンドンには下水システムがなく、糞尿はつぼに入れて窓から捨てる(怖!)という生活様式。そんなわけで、町中糞尿とねずみ(とその死骸)などで、とても靴など履いていては足からペストにかかってしまいそうだったらしいです。そんなわけで、ブーツに対して短靴(シューズ)はほんの一握りの金持ちにしかはけない物でした。短靴の上から足首を包むように履く(ボタンブーツの足首だけの物)」「スパッツ」は紳士の外出には欠かせないカバーだったようです。ところで、先ほど話に出た「ロンドン・ダンジョン」はかなり怖く、面白く、楽しめます。ビクトリアン時代の「匂い」(臭い!)の再現や、実際に行われていた拷問の数々(本当に恐ろしく、私は貧血で途中倒れました。ほんと!)実際にあった恐ろしい殺人事件の裁判状況や、昔のロンドンの町(恐ろしく、汚い!)の再現など、ロンドンへ行ったら是非どうぞ。私は観光名所へはほとんど行ったことがないのだけれど、ここだけは歴史を知る上でも行く価値あり!と思います。


さて話を戻して、ダービー。オックスフォード同様、少々ラインを変えると新たな顔を見せてくれます。まずは革を贅沢に使い、クウォーターとヴァンプを一枚革にしてフェーシングのみに革をつなげるホールカット・ダービー(Wholecut)。ステッチしていることを極力隠す製法の「フラット・シーム」はホールカットの時に限りなく革を一枚に見せる為にあみ出されたステッチ方法。

色々なステッチでレイク(エプロンまたはUーチップ)を飾ったノウィージョン(Nowegian)、フェーシングをV字型にカットしたヴィーフロント(V-front)、フェーシングをハイ・インステップからステイまで緩やかなカーブで落としていくハイ・ロウ(high-low)。このハイ・ロウのブーティー(bootee)がチャッカーブーツ。ちなみにブーティーとは、踝の上くらいの短めのブーツを言います。それ以上の長さの物はBOOTS。

これらのスタイルはどれもダービー同様紳士のカジュアルとしてはきこなしやすいスタイルです。