旅 | ”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室

靴職人という「男の仕事」(と長年されていた)をしていると、「女性だと苦労したでしょう?」とか、「男だったら。。。と思ったりするのでは?」などと、聞かれたことがあるが、それはまったくなかった。大体私は、「欲しい欲しい」とばかり言うフェミニストは大嫌いで、小さい男女の条件差などにぶちぶちというくらいだったら、自分で勝ち取ればよいじゃないか!と思う。イスラム教のような宗教でなく、選挙権も持っている日本では、女であることは痛くも痒くもないし、私は女でよかったと思っている。しかし、ただ一つだけ「男だったら、絶対したかった。。。」と思うことがある。


 それは、自転車での一人旅で世界中を回ること。雑誌やテレビで見たイギリスと実際のイギリスはぜんぜん違かった。アフリカ人の友人から聞いたアフリカの様子も違うし、スペイン人の友人に案内されて訪れたスペインも。「百聞は一見にしかず。」実際体験し、この目で見ないと解らない事が日本の外にはごろごろしている。この「ごろごろ」を拾い集める事が出来るなんて、心にとても贅沢な生活である。自転車の一人旅は自然を肌で感じ、生きるために自転車をこぎ、多くの人たちに会える。しかし、野宿も多く、得体の知れない人間や動物もいる中で、いくら体を鍛えて、ムキムキ筋肉で「近寄ると、私の空手チョップを食らうわよ!」と言っても、「女」であると難しい。


 だから、ワイルドな旅をしている人を私は憧れの目で見てしまう。男友達が一人でメキシコを旅して遭遇した危険な話が大好きで、私は酒の肴に何度彼に同じ話をさせただろう。。。

 

 世界9万5千キロを7年半かけて、自転車で旅した日本人がいる。2003年に帰国した、私と同じ歳の青年。彼はその旅の5年間、在英日本人向けの週間フリーペーパー「英国ニュースダイジェスト」に旅模様を連載していた。毎週旅路であった様々な事柄、出会った人々、その国々の習慣。。。毎週本当に楽しみに読んでいた。ページの端には世界地図に彼の通った跡を線で引いたものが載っていて、それを見るだけでもわくわくしたものです。月に1回くらいは読みながら、泣いてしまうこともあった。帰国後、この連載が本に(「行かずに死ねるか!」 石田ゆうすけ:著書  実業之日本社 出版)なったが、本に載ったのは連載のほんの一部で(連載は膨大な量のため)残念だったが、それでも十分に笑いあり、涙あり。元気をくれて、旅がしたくなる本です。


 ものすごい数の日本人が毎年海外旅行に出かける。そして、お決まりの観光地へ行き、お土産屋でお金を落とし、外国を味わった気になる。そんな人たちの旅行話ほど退屈なものはない。本当の旅というものがしたい。昔の人々は歩いて何処にでも旅をした。芭蕉のように俳句を詠みながら旅をするような、身のある旅を1年ぐらいかけてしたいものだ。


 話は変わるが、「国際人」なんてばかばかしい言い方をするのは日本人のみではないだろうか?難民も受け入れず、外国人が就労ビザを得るのもとてもとても難しい国。そんな日本でどうして他国との本当の交流が出来るのであろうか?大体、日本人の多くは愚かにも「難民」がどのような人たちかも知らない。(私も外国に出るまでは恥ずかしいことに知らなかった。)ただの貧乏人くらいに思っているのではないだろうか?日本に帰ってきて「靴難民」なんて言葉を聞いたが、こんな言葉を作った人も、無知の一人であろう。たかが、靴を仕事に出来ないくらいで「難民」などと言うのは。では、「難民」とはどのような人たちなのであろうか?それは「人権の最後の最後まで奪われた人々」。国内紛争などによって、自分の国の政府から、住民票、身分証明書、家、財産、国籍までも取り上げられてしまった人々。生きている証明がないから、何処の国へも行けない。そして、自分の国へいると迫害されてしまう。難民には、医者や弁護士や大学教授だっている。そんな肩書きは、最悪の支配欲、政権欲、統制欲の前では無力だ。現在の難民の数は世界中で千八百万ないし二千万人以上と言われている。その人々が行き場に困っている。食べ物も水もなく、マラリアなどの病気に犯され。こんな状態の人々を見て見ぬ振りをし続けている。政治の風向きでちょこっとお金を送ったりする。「共存」とか「和平」は日本人の大好きな言葉だが、戦争を始めるより何十倍も、「平和の糸口」を見つけることは難しい。


 さて、私に何が出来るか?何も出来ない。無力感に打ちひしがれる。ただ、選挙権は持っている。そして、自分の意見を持っていれば、目の前に問題が突きつけられたとき、「イエス」か「ノー」をはっきり叫ぶことが出来る。政治に無関心でいることは、間接的に欲に狂った人殺しのろくでなしに加担していることであると思う。