今回の参詣は、板橋区西台の天祖神社へ。

ここは都営三田線『西台駅』から南へ1kmほどのところ。戸建て住宅が圧倒的に多い住宅街で地名の通り高台にある街です。

 

 

 

 

神明鳥居

当社の鳥居は丸い額束(がくづか)がはめ込まれためずらしい姿をしています。

額束とは笠木(上の横木)と貫き(下の横木)の間の部分で、神明鳥居では額束があること自体めずらしいのですが、太陽神でもある天照を表しているのかもしれません。

柱には「天下泰平」「國家安穏」、裏に「寛政八丙辰年六月吉日(1796)」とあります。

 

 

 

 

狛犬

鳥居の両脇にあります。

どちらも吽形に見えるし阿形にも見えます。

台座部にはそれぞれ「豊島郡」「西䑓村」とあります。

 

 

 

 

一般的に神社が建つのは生活圏の平地か台地の頂上、または隔絶した山の上なのに、当社は高台の中でも一段低いところに鎮座されていて、見下ろす景色が特にめずらしいです。

 

 

 

 

手水舎

「昭和六十年八月吉日」とあります。西暦で1985年。

 

 

 

 

狛犬2

右が阿形で左が吽形。持ち物はなし。

台座に「平成十年十月吉日(1998)」とあります。

 

 

 

 

神社の創建年代は不明ですが、元は円墳の上に祀られた祠があったのを起源としているそうです。古墳の上に祀られる神社というと、たまに須賀神社・第六天社・八幡神社・金山神社なんてのもありますが、圧倒的に稲荷が多く、当社もまた珍しい部類。

 

御由緒

境内掲示より字体改行などそのまま記載

天祖神社

 御祭神は天照皇大神です。創建の年代は不詳

ですが、伝承によれば円墳の上に営まれた祠を

起源にするといわれています。明治二年(一八

六九)に書かれた社寺取調下案に「西台村十社

之内 一村鎮守式外神明神社」と記されている

ように、西台村の鎮守で江戸時代には神明神社

または神明社と呼ばれていました。天祖神社と

社号が改められたのは明治六年のことです。

 境内には、区内で広く信仰されていた木曽御

嶽山に関連する石祠や木曽御嶽塚、寛政八年(一

七九六)に造立された神明型としては区内最古

の鳥居、本殿左奥には石祠に中国の故事(鯉の

滝のぼり・韓信の股くぐり・カメ割りの唐絵)が

彫られた「天王さま」と呼ばれる八雲神社など、

多くの石造物があります。また、明治七年に京

徳観音堂付近から発掘された石棒(性器)は、

農耕・子孫繁栄、咳止めの神として信仰されて

います。

 そのほか、西台の井戸掘り職人が奉納した「井

戸掘り絵馬」をはじめてとして、平成二十八年度

に区登録有形民俗文化財となった絵馬・扁額が

多数保管されています。

 平成三十年三月

 板橋区教育委員会


 

 

 

神楽殿

舞台に掲げられている扁額には「哲洲謹書」と見えます。誰かまではわかりません。

とてもきれいな神楽殿です。

 

 

 

 

稲荷神社

本社殿左側、高台の上に鎮座されています。

ここの紅葉もそうなんだけど、当天祖神社の境内はどこも木の植え方が絶妙に綺麗。かなり昔から計画的に造成されているように思えます。

 

 

 

 

そしてこの稲荷、本社より高い位置にあって、綺麗に造成された土台に恭しく祀られているところから見ても、ただの境内末社ではなく摂社ではないかと思えます。つまりこの稲荷が本来の地主神であるんじゃないかな。

 

 

 

 

狐像

右が巻物を咥え、左が宝珠を咥えています。

「昭和六十年八月吉日(1985)」とあります。

 

 

 

 

朱色と漆喰(たぶんモルタル)とのコントラストが綺麗ですが、都内の神社はもとより特に境内社では見られないとても贅沢な造りです。

 

 

 

 

境内末社

本社殿と稲荷神社の間にあります。

 

 

 

 

おしわぶきさま

末社の参道左側にあります。

石神信仰は特に諏訪地方に多く見られ、古代から続いていた謎の信仰なのですが、「ミシャグジ」「ジャグジ」などと呼ばれ、江戸においても「しゃくじん(石神)」「釈神」「勝軍神」「社宮司」としていくつかの書籍に登場します。

石神→せき神→咳神(咳止め)として信仰されたり、せき止め神→塞き止め神(塞の神)→道祖神と音転で信仰形態もいろいろ派生しているようで、「しわぶき」も咳のことです。

「しゃもじ」もシャクジの変化で奉納されるようになったものだろうと思うのですが、石神を石棒や男根、蛇などに見立て「しゃもじ」も音転と、そのシンボリックな形にも由来があるんじゃないかな。

 

 

 

 

シャグジには「三狐神」という字を当てるケースもあり、三狐はミケツと読め、ミケツ(御食津/御饌津)はウカノミタマノカミのこと。稲荷神社は総本社の伏見稲荷大社のある西日本より東日本に多く、鎮守(外部からもたらされた神)の摂社(地主神)は稲荷であることが多いなど、シャグジと稲荷の関連がありそうで気になります。

 

 

 

 

八雲神社

階段上がって一番右側にあります。石製の祠としてはかなり立派。

ご祭神 建速須佐之男命

ご神徳 救いの神・疫病除け 家庭円満・農耕の守護神

 

 

 

 

三社宮

左隣に三社造りの石祠がありますが、こちらは何の神社かわかりません。足元には力石があって右は「奉納 天王 三十八〆(142.5kg)」、左は「奉納 天王 三十二〆(120kg)」とあります。

 

 

 

 

三社宮

そのまた左隣には杵築神社・伊勢神宮・春日神社の三社があります。

 

杵築神社

ご祭神 大己貴命(大国主命)

ご神徳 福の神・縁結びの神 家庭円満

 

伊勢神宮

ご祭神 天照皇太神

ご神徳 衣食住の生活を守る神 家庭円満・家内安全の神

 

春日神社

ご祭神 天児屋根命

ご神徳 音・芸・文字の神

 

 

 

 

水神社

三社宮の左隣にあります。

 

ご祭神 弥都波能賈神

ご神徳 安産・農耕 水難除

 

 

 

富士浅間神社

水神社の背後、一段高くなったところにあります。

 

ご祭神 木花咲耶姫命

ご神徳 農耕・疫病除・登山守護 芸事・美の神・花道

 

 

 

 

御嶽神社

最初の鳥居前まで引き返すと向かって左側に鎮座しています。

 

ご祭神 日本武尊

ご神徳 防災・盗難除 除災招福

 

 

 

富士塚

石碑に御嶽山とあるので、頂上に鎮座しているこちらも御嶽神社と思われます。

 

 

 

 

一山霊神 普寛霊神 覺明霊神 一心霊神 廣山霊神 御玉霊神、眞音霊神 和儀霊神、三笠山大神といった石碑が立っています。

 

 

 

 

写真はすべて、2020.12.6 撮影

 

備考

社号 天祖神社

創建

祭神

祭日

末社 稲荷神社 富士浅間神社 八雲神社 杵築神社
    伊勢神宮 春日神社 御嶽神社 水神社

社務所 

所在地 東京都板橋区西台2-6-29

その他