☆ナアさん夫妻からの素材提供
店の近所に住んでいるナアさん夫妻は私にとって、とても有難い存在である。
『嫌なこと言うなぁ』
と私はよく思っているけど、ほめてもくれるし、励ましてもくれる。
お互いソレゾレの想いがある。
見解が全て一致してはいないが、良いに付け悪いに付け真っすぐに私に忠告してくれる。
言っていることの意味は理解できるが実感できないことも多い。
が、近頃つくづく実感するのは『人のつながり』である。
私とナアさん夫妻も『パン』という素材のお蔭でつながりを持てた。
赤の他人に、これ程優しく厳しくあれこれ言われると、とても有難いと感じる。
2人から見れば頼りない弟みたいなものではないのだろうか。
『あなたとあなたのパンに出会えたお蔭で食べる楽しみや幅が広がった』
と言ってくれたことが嬉しかった。今でも知人の方々に私のパンを紹介してくれたりしてくれている。
そんなナアさん夫婦から紫芋を戴いたのは2007年の冬だった。
ご主人のお兄さんが三浦半島に暮らして自分でまかなう分の農産物を作っているそうで、そのおすそ分けであった。
その頃はドライフルーツや果実からしか酵母を取っていなかった。
穀物から酵母を取って培養することは全く知らなかったので本で勉強し始めた。
その結果、すりおろして小麦粉や水を混ぜて発酵させる方法を知るが配合が解らず、かなり失敗した。
すごく酸っぱいパンが出来たり、ペッタンコだったり・・・・。
ある日、閃いた!!
レーズン酵母で培養して作る時と同じ割合にしてみたらどうだろう??
なんと、これがうまくいった!!
2008年10月末
この紫芋を今年も戴いた。私が酵母の素材にしたいと言うことで急いで送って戴いた。
ナアさんのご主人のお兄さんもパン素材になると言うことで楽しみにして下さっている様子である。
じゃあ、作ってみよう!!
紫芋を 『 おろしがね 』 ですりおろし、国産小麦と水、この3点は同量で砂糖10g、自然塩少々をボールに入れ、シャモジで混ぜ合わせる。時々混ぜながら3日間培養する。
初日。
変化なし。
二日目の朝。
容積(カサ)が高くなっている。かき混ぜると白っぽい表面がブルーベリー色に染まっていく。発酵しているなと感じつつも、あまり吹いてこない。気泡が出ない。香りは少しあるのだが、やや不安。
三日目。
前日とあまり変化が無く、時折かき混ぜながら様子を見守る。
四日目。
とにかくやってみよう!と仕込む。
吸水が以外と多く、少しずつ水を加えつつ柔らかさを整える。発酵させても今ひとつ力が弱い気がする。
3時間程発酵させて、とりあえずガス抜きをする。約40分後分割。そして成型するが、どうやろうか・・・・。ホイロで十分発酵を待つがイメージの発酵に至っていない。が、指で触れると芯が抜けているので蒸気をタップリかけて釜へ入れてみる。
さあ、出来栄えは??
約25分、思っていたより釜で伸びてくれた。
なんとか、それなりの焼き上がり。次に食パンを焼いたが、コレもまずまず。
今までと少し違う流れでパンが出来た。
紫芋の状態もあるだろうが、去年の培養は気泡がかなり出ていた。よく吹いていた。
今年は、とにかく気泡が少なくて培養の目安が初日から2日にかけての容積(カサ)の高さと香りであった。
ご近所の常連さんのN醤油の奥さんが予約していた米パンと同時に、紫芋の食パンを買ってくれた。
娘さんが、うちのパンを気に入ってくれているそうで、何時も沢山買って戴いている。
夕方、N醤油のおやじさん(社長)が店の前を通った時に顔が合った。おやじさんは店に入ってきて
『さっきのパン美味いねぇ。本当に美味いねぇ。これが本当のパンやね。売れるやろ?』
『売れません・・・・。』
『みんな知らんのやな。』
3日前、米パンの注文に来られた時、培養中の紫芋の種を見せて『こんな風に作るんです。』と私が能書きを話していた。
おやじさんは私のパンづくりに興味を持ってくれているようである。
素晴らしい人柄のおやじさんに誉められて、とても嬉しい気分になった。自分のこしらえたものを評価してくれる方々が居
る。
私はパンが売れ、お客さんに喜んでもらえてうれしい。お客さんは、良いもの、美味しいものを買えて嬉しい。
『 お互いが利を得た 』 ことになるのではないか。
おやじさんの商いの考えに、これがあると従業員の方から以前聞いたことがあった。
自分の利だけを求めず、相手にも儲けてもらうことで信用が築かれていく、そして仕事が回りだすと、少し前に読んだ本に書いてあった。
これからは "個" の時代と言われている。
モノを売るということが難しくなるが、私のこしらえるパンを必要とされる方々を見い出したり、互いの良さを生かすことで生まれる新しい魅力を持った商品を作るなどしながら、"小さい商い" を沢山出来ればと願っている。
自家製酵母のパンづくりは、やっぱり楽しくて面白い!!