英語を学んでいると、ふと英語はアメリカではなくイギリスの言葉だなぁと感じることがあります。

まず、イギリス英語とアメリカ英語では発音が違います。

日本の英語教育はアメリカ英語中心なので、イギリス英語はちょっと聞き慣れないかもしれませんが、イギリスに行って(行かなくてもいいけど)、イギリス英語を聞くと、フランス語やドイツ語っぽく聞こえ、「イギリスってやっぱヨーロッパなんだ」と感じます。

 

<イギリス英語もヨーロッパの言語>

ところで、最近、thou とか thy とかいう単語が気になりました。

この単語、見たことのある人は多いと思います。

意味は何となく you っぽいな、と思いつつ、特に調べたりはしていませんでした。

英語の古文の「あなた」の意味かな、くらいの認識です。

you は、you/your/you/yours と活用しますが、thou は、thou/thy/thee/thine と活用するそうです。

と、ここまでは、中級以上の英語話者ならなんとなく知っているかと思います。

 

先日、thou/thy/thee/thine が出てくる文章を読んだので、この単語について調べてみました。

そうしたら、とても興味深いことが分かりました。

実は、もともと、thou は二人称単数、you は二人称複数の言葉だったそうです。

フランス語をかじったことのある方はご存じかと思いますが、フランス語では二人称単数が tu、二人称複数が vous という単語になり、二人称複数の vous は、丁寧な二人称単数としても使えます。

古英語でも同様に you を丁寧な二人称単数としても使えたようです。

こういうのを知ると、英語ってやっぱりヨーロッパの言語だなと思います。
 

<ヨーロッパと言えば、ローマ帝国>

さて、ではなぜ、二人称複数形が丁寧な二人称単数として使われるようになったか。

皆さんご存じの通り、古代ヨーロッパには、ローマ帝国というものがありました。

その、ローマ帝国は、途中で東西の2つに分裂しました。

そのため、ローマ皇帝(東西で2人いる)が、自身を指すとき、複数の代名詞を使ったらしいのです。

あくまで、説のようですけどね。

…という話は、すべて以下のページから得たものです。

興味がある方はぜひ読んでみてください。

ベルーガ個人としては、かなり興味深く読みました。

Alma Mater(https://almamatersjk.com/knowledge004thou/

 

<そしてヨーロッパと言えば、キリスト教社会>

さて、話は戻って、二人称代名詞の thou です。

これは、もともと、二人称単数だったということですが、(ベルーガが持つ)現代英語のイメージだと、古典や宗教的な文で使われる人称というイメージがあります。

ここでまた、上記のサイトに書いてあることの借用になりますが、モーセの十戒。

その一つの、「Thou shalt not murder(汝、殺めることなかれ)」というもので例示すると、thou は、「汝」と訳されています。

「汝」を、手元の「岩波国語辞典」で調べてみると、「文語の第二人称代名詞。…同輩以下に対して使う。」と書いてあります。

うん、Thou は、古典で使われるというイメージにぴったり。

神様が民衆に言っているのだから、同輩以下に対して使っているのにも合致する。

すばらしい。

この日本語訳考えたのベルーガ本人だけど、まあ、十戒は多かれ少なかれだいたいこんな訳になっているかと思います

 

<神様は身近な存在>

さて、前述のページでもう一つ紹介されているのが、主の祈りです。

ちょっと長いので、全文掲載はしませんが、クリスチャンの方だったらご存じかと思います。

その中から一文だけを取りあげると、「Thy kingdom come(御国を来らせ給え)」というのがあります。

意味は、「神の支配がこの地上にもたらされますように」のような感じでしょうか。

ここで注目したいのは、「御国」と訳された「Thy kingdom」です。

Thy は、your の意味ですので、「あなたの」。

これを「御国」と訳したのはなかなかいいですね。

 

ですが、思い出してください。

Thy (Thou) は、神様から民衆へのお告げで使われていましたよね。

「汝」という訳が与えられていました。

「同輩以下に対して使う。」

ハテ?

「汝の国」って目上の神様に言うと違和感ありますよね。

でも、英語では神様→民衆の方向で使われたのと同じ thy が使われています。

英語話者の中では、神様は同輩以下の存在?

え?

唯一神なのに?

 

そんなことを感じたので調べてみると、以下のブログに書いてあることが理由に近い気がしました。

「すぐ身近に感じている存在なので」

「親しみの表現と尊敬の表現とはぜんぜん関係がなくて、日本語のように、尊敬の表現をつかうと親しみがなくなってしまうなどということはない」

ま、これはこの記事の著者が引用した人の意見で、しかもドイツ語では、の例なんですけど、イギリスだってヨーロッパだし、英語も似たような感覚なのかもしれません。

hellog~英語史ブログ(https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2014-06-05-1.html

 

<英語を理解するには、西洋史や宗教史、他の欧州言語の知識も必要>

なんか、サブタイトルが長くなりましたが、英語は、ヨーロッパに位置するイギリスの言葉であって、古代ローマに始まる長大なヨーロッパ史と無関係ではなく、西欧世界を支配するキリスト教とも密接に関係しているんだな、ということがおぼろげながら分かりました。

こういうの、学校英語の授業では教わらないけど、重要かも。

とはいえ、ベルーガは高校の時は世界史が苦手だったから、説明されても、どう感じたかわからないですが。

 

それから、ベルーガは、「どうしたら英語ができるようになりますか」って聞かれたら「フランス語勉強すればいいと思うよ」と答えているのですが、まさに、ここに書いたようなこと。

英語では、活用や用法が単純化してしまっていますが、フランス語をかじると、主格と目的格の you が違って見えてきたり、動詞の主語がはっきり見えてきたりします(しました)。

 

もちろんアメリカにも敬虔なキリスト教徒はいますし、彼らが話す英語もイギリス英語と比べて、通じないほど変化しているわけではないですが、英語はやはり、ヨーロッパにあるイギリスという国の言葉なんだなって思いました

 

なんか、thou から、久しぶりに言語オタっぽいことをいろいろと考えてしまいました。

最初に引用したブログを読んでから、その日の夜は夢に単数形とか複数形とか出てきたような気がします

といっても、まだ表面的な情報を調べただけですけどね。