耳鳴と難聴との関係をみると、難聴の約50%が耳鳴りを訴え、逆に耳鳴りがある方の約90%に何らかの難聴がみられます。 耳鳴り疾患は、難聴が原因で生じていることが主流です。 今回は、耳鳴り主原因である難聴難聴についてまとめてみました

耳鳴と難聴との関係をみると、難聴の約50%が耳鳴りを訴え、逆に耳鳴りがある方の約90%に何らかの難聴がみられます。

耳鳴り疾患は、難聴が原因で生じていることが主流だと言われています。

今回は、耳鳴り主原因である難聴難聴についてまとめてみました。

 

 

耳が聞こえにくいメカニズムは?

主な原因は、加齢によって蝸牛の中にある有毛細胞がダメージを受け、その数が減少したり、聴毛が抜け落ちたりすることです。 

有毛細胞は、音を感知したり、増幅したりする役割がありますので、障害を受けると音の情報をうまく脳に送ることができなくなります。

難聴の重症度

耳鳴りの重症度は日本聴覚医学会で、25~39dBを軽度難聴、40~69dBを中等度難聴、70~89dBを高度難聴、90dB 以上を重度難聴に区分している。

耳鳴りの重症度ランク

程度 平均聴力
レベル
聞こえの状態
軽度 25dB~40 dB 小さな声や騒音下での会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。
会議などでの聞き取り改善の目的で、補聴器の適応も効果。
中等度 40dB~70dB 普通の大きさの会話の聞き間違いや聞き取り困難を自覚する。
補聴器の適応効果となる。
高度 70dB~90dB 非常に大きい声か補聴器を用いないと会話が聞こえない。しかし、聞こえても聞き取りに限界がある。
補聴器を使用しても言葉の聞き取りが難しい場合は人工内耳の装用が考慮される。
重度 90dB以上 補聴器でも、聞き取れないことが多い。
人工内耳の装用が考慮される。

難聴の種類

伝音難聴

外耳や中耳が正常に機能しなくなり音が伝わりにくくなる難聴です。 

慢性中耳炎や滲出性中耳炎など主に中耳の疾患でみられます。 伝音性難聴の場合は音を大きくすれば聞こえますので補聴器などを使えば音を聞くことができます。

感音難聴

加齢や大きな音の聞きすぎによる内耳の有毛細胞の機能低下や、内耳・聴神経・脳の中枢などの感音系の障害が原因とされています。

小さな音が聴き取りにくい、大きな音が響く・ひずむ、言葉が不明瞭などの症状が現れます。

混合性難聴

伝音性難聴と感音性難聴の両方の機能障害が合わさった難聴です。 

老人性難聴は多くの場合 混合性難聴で、どちらの度合いが強いかは人それぞれにより大きく異なります。 大音量で長時間音楽を聴き続けたりすることがその原因である場合が多くみられます。

難聴の発生要因(感音難聴)

加齢性難聴

加齢性難聴は、聴覚経路の生理的な加齢によって起こる難聴です。難聴の大多数は ”加齢性難聴” が原因だと言われています。

遺伝的な要因環境な要因が発症に影響すると考えられています。

遺伝的要因としては、黒人に比べ白人で難聴程度が 強く。性別的には女性は男性に比べで難聴が強い傾向があるようで、エストロゲンをはじめとする性ホルモンの影響があると言われています。

環境要因としては、騒音ばく露歴、喫煙、飲酒、糖尿病や循環器疾患の合併等が加齢性難聴を促進する因子とされています。

 

多くは50歳代以上で発症する両側性感音難聴で、難聴の進行は年間で多くが 10dB 程度までの進行と考えられます。

すなわち40歳未満での発症例では、若年発症型両側性感音難聴等の他疾患の可能性を考える必要性があります。

症状としては語音明瞭度の低下を認める例も多く、実際に音は聞こえても言葉として聞き取りにくいといった 症状を呈する方が多いようです。

騒音性難聴

騒音性難聴はある一定以上の騒音職場に継続的に従事 することにより発生してくる難聴です。

 爆発音やロックコンサートなど強大音のために急性に起こる難聴を音響外傷といいます。 低音成分より3000ヘルツ以上の高音成分の方が傷害を起こしやすいですが、主に傷害を受けるのは内耳の有毛細胞です。

 

騒音性難聴は、音圧が80dB未満であれば難聴に至る可能性は極めて低いと考えられて、日本では騒音障害防止のためのガイドラインにより85dBが許容基準と定められています。

85dB以上の騒音は難聴を発症するリスクが存在するが、このような職場でも短期の従事では騒音性難聴は発症しないと考えられ、5年以上などの職業従事により騒音性難聴は引き起こされる可能性を考えられています。

騒音性難聴を防ぐために、いくつかの対策が施されています。

① 騒音発生源に対する対策

音源の密閉化や低騒音性機械への切り替え等、強大音を発生する装置に対する対策です。

② 伝搬経路への対策

防音塀の設置や吸音材の利用に加えて、騒音発生源から作業者までの距離を長くすることによっても,実際の作業者に負荷される音圧レベルを軽減させます。

③ 作業者側の対策

騒音を発生する機械を遠隔操作によって操作を行う等の措置が取れれば、対策となり、耳栓やイヤーマ フの着用をします。

 

騒音性難聴は、有毛細胞の損傷が激しくなければ、耳栓を使う・定期的に耳を休めるなど耳の安静を図ることで症状は回復しますが、一度傷ついた聴毛や有毛細胞が再生することはありませんので損傷が激しい場合は聴力が戻らないことがあります。 

耳毒性物質による難聴

薬物により内耳障害の可能性があります。

代表的なものとしてアミノグリコシド系抗菌(ストレプトマイシン、 カナマイシン、ゲンタマイシンなど)やシスプラチン(白金製剤)と いう抗がん剤、アスピリン(サリチル酸剤)などの解熱消炎鎮痛、 フロセミドなどのループ利尿剤によって引き起こされます。

⑴ アミノグリコシド系抗菌薬による難聴 

アミノグリコシド系抗菌薬は、表在性皮膚感染症の治療において古くから使われています。

アミノグリコシド系抗菌薬による蝸牛毒性は、蝸牛基底回転の外有毛細胞が障害されやすいことが知られています。

⑵ シスプラチンによる難聴

シスプラチンとは シスプラチンはDNAなどの生体成分と結合して抗がん効果を発揮する抗がん剤です。 

シスプラチンによる内耳障害では、外有毛細胞が障害を受けることが知られ、特に外有毛細胞第1列が障害されやすいようです。

⑶ サリチル酸による難聴 

サリチル酸は、アスピリンの原材でもあります。

外有毛細胞へのサリチル酸の投与は外有毛細胞側壁に作用し,外有毛細胞の電気運動性を障害する可能性があります。

⑷ ループ利尿薬による難聴 

本薬剤は腎臓において Na/K/2Cl トランスポーターを阻害して利尿作用を生じ、内耳においても血管条において本トランスポーターを阻害し、一過性の難聴を来すと考えられています。

聴神経腫瘍

聴神経腫瘍の初期症状として最も多いのは聴力の低下、耳鳴りです。 

徐々に音が聞こえなくなるので、はじめは気づかないことも多く、時には電話の声が聞こえづらくなり発見されることもあります。 さらに、突然音が聞こえなくなる突発性難聴から見つかる場合もあります。

聴力低下が生じる確率は高くて、3年くらい観察すると2分の1か3分の1くらいの確率でその聴力は使えなくなるまで低下します。 

 

耳鳴り疾患のある方は、前提に ”難聴” の関わりを考える必要があるようですのでまとめてみました。