-氷霧- | 仮面の下は暗闇。

仮面の下は暗闇。

理解はいらない。

誰もが避ける霧の中
触れれば傷つき
吸えば血を吐き
無数の氷の礫が無数に漂う

遠くから響く
安否を窺う声と心配の声
誰一人として一歩踏み出さず
安全圏からの声だけが虚しく広がる
音は氷の礫に乱反射し
霧の中を駆け巡る

嗚呼 煩わしい
嗚呼 五月蠅い
何の足しにもならぬその音は
無情に消えてゆく


野次馬だけが増えていく
見えたとて 見抜いたとて
到底届かぬ霧の奥
見えたならその眼は灼かれ
聞いたならその耳は爛れ
口にしたなら忽ち崩れよう

近づく者は全て
凍てつく氷像に変えてしまおう
どうせなんの役にも立たぬなら
せめて飾りとしてここに建てておこう

嗚呼 喧しい
嗚呼 五月蠅い
何の足しにもならぬその言葉は
無情に散ってゆく


私の温度は日増しに下がり
絶対零度の風を纏う
そうなれば最早 誰も近づけぬ
何もかもを凍らせて
一つ一つ打ち砕いて行こう


嗚呼 煩わしい
嗚呼 五月蠅い
何の足しにもならぬその者達は
無情に散ってゆく
私の足元に転がり落ちてゆく