さよなら『茂庵寄席』 | 桂米紫のブログ

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米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。

先週の土曜日……つまり2022年9月24日(土)、ある落語会が、最終回を迎えました。

その落語会とは、『茂庵寄席』。

京都市左京区にある吉田山の山頂「カフェ茂庵」で、長年続いてきた落語会です。

過去のスケジュール帳を紐解いてみたところ、記念すべき第一回目は、1999年5月16日(日)。
回数にして90回、23年続いた会ということになります。

現オーナーのお祖父様が大正時代に作られた茶苑の食堂棟を、外観はほぼそのままの状態で改装し、京都の隠れ家的カフェとして人気を博していた「茂庵」。
ちなみに2004年には、京都市の登録有形文化財に登録されています。

そのカフェが今年の8月をもって閉店し、それに伴い落語会も最終回となった次第。


最終回は、YouTube米朝事務所チャンネル『㊙ワールドニュース』の相方・桂吉の丞を助演に迎えて、昼夜ネタを変え二席ずつ四席の、『茂庵寄席』としては初の二回公演。
有り難いことに、一部・二部とも予約で完売。お席を増やしての、大入り満員御礼の公演となりました。


演目は以下の通りでした。

●第一部 14時開演
吉の丞「時うどん」
米紫「宗論」
中入り
吉の丞「稲荷俥」
米紫「まめだ」

●第二部 17時開演
吉の丞「ふぐ鍋」
米紫「秘伝書」
中入り
吉の丞「千早ふる」
米紫「三年目」

それぞれ、「宗論」&「秘伝書」という笑いの多いネタと、「まめだ」&「三年目」というちょっと切ない秋のネタをセレクトして、『茂庵寄席』に出会えた喜びと、それが終わる寂しさを、ちょっぴり意識してみたつもりです。


でもね、実はね。

これまでずっと茂庵に置いていた、見台と銅鑼と太鼓のバチを、まだ持ち帰ってないのですよ。

これはまだハッキリとは言えませんし……というかまだ何も決まっていないことなので何とも言えないのですが、ひょっとするともしかすると、また別の形で人寄り場所として「茂庵」が再始動することが、あるかもしれません。

だから見台も銅鑼も太鼓のバチも、置いたままにしておきました。


建物の外観、内装、ロケーション、オーナーさん始めスタッフさん達のお人柄、それから何よりお客様の反応……『茂庵寄席』は、全てが完璧なまでに最高な会でした。


またいつか再開できる日が来ることを……そしてあの素敵な場所で皆様と再会できる日が来ることを、心の底から願ってやみません。


でも、一先ずはさようなら。

ありがとう、『茂庵寄席』。

また逢う日まで。