去年の11月に5・6年生対象に落語をやらせて戴いた、長岡京市の「長岡第六小学校」の生徒達から、落語の感想文が届きました。
小学生の子供達からの感想文って、何だかとっても真っ直ぐで純粋で、嬉しいもんです。
どの感想文もとても嬉しく心に響いたのですが…中でも特にグッときたものと面白かったものを、ちょっとピックアップしてみますね。
長文になりますけど…暇な人だけお付き合い下さい。
小学校で落語をやるというのは、つまり落語の事を本当に何にも一切知らない子達の、落語初体験になる訳で…当然こんな感想もあります。
「私は落語が初めてだったので、楽しみでした。最初はざぶとんが1まいずつ増えていくと思ってました」(5年生女子)
大丈夫だよ。
大人でも、あの「笑点」の大喜利が“落語”だと思ってる人、結構いるから。
でもそんな“落語初体験”だからこそ、こちらの責任も重大な訳で…。
「落語は昔のイメージがあるけれど、今時みたいにおもしろかったです」(5年生女子)
「最初ぼくは、落語のことをバカにしていました。すみません。でも今回の落語を聞いて、予想とは違いました。まんざいよりおもしろかったです」(5年生男子)
こんな感想は、本当に嬉しいですね!
小学校公演では、まさにそう思ってもらえる事を一番に考えて演じていますから。
中にはすごく丁寧に、
「私の中で落語の印象は、ざぶとんに座って何かむずかしい事を喋ってるだけのものだと思ってました。でも米紫さんの姿を見て、思わず“落語家の皆さん、ごめんなさい。落語がこんなに面白いとは思ってもいませんでした”と感じました」(5年生女子)
と、落語家全員に謝ってくれている子もいました。
当日僕は子供向けの落語の解説と小咄、あと落語の演目は「動物園」という、子供さんにも分りやすい笑いの多い噺を演じさせて戴いたんですが…何でもその前日に、学校行事で4年生の児童達が、同じ「動物園」を劇形式で、全校生徒の前で発表してたらしいんですね。
それを踏まえた感想が、こちら…。
「前の日、4年生の人たち全いんで“動物園”のえんぎを見せてくれました。でも米紫さんは、4年生をうわ回るくらいのえんぎでとてもすばらしかったです」(5年生女子)
良かった! 上回ってて本当に良かった! 下回ってたらどうしようかと思いました!!
小咄は、一番簡単な「鳩がなんか落としていったで。ふーん」や、「隣の家に囲いができたで。へぇー」という…言わばダジャレ的で分りやすいものから聞いてもらったんですが、それについてはこんな感想がありました。
「米紫さんの短い話に出てきたダジャレは、古川先生よりもずっとランクが上でした」(5年生男子)
そうか。古川先生は、ダジャレが好きなのだね。
で、だいたいいつもスベッているのだね。
僕、古川先生の事なんにも知らないけど…なんとなく分かっちゃいましたよ。
中にはこんな“比較”もありまして…。
「私のおじいちゃんの友達よりおもしろかったです」(5年生女子)
誰なん!? ねえ、誰なん!?
おじいちゃんの友達が、僕よりキャリアが上のプロの落語家さんだとしたら、そりゃすごく嬉しい事ですよね。
でもそれがただの“町内の陽気なオッサン”なのだとしたら、それ程の名誉でもないような気がします。
5年生と6年生って一年違うだけだけど、やはり子供の一年って大きいんですね。
40歳と41歳なんてどちらも「ただのオッサン」で、何の変化もありませんけどね。
5年生の感想文は、何だかよりストレートです。
「生で落語を聞くととてもおもしろく、なみだが出るほどおもしろかったです」(5年生男子)
「すごくおもしろい話がいっぱいあって、ずっと笑っていました」(5年生女子)
「“落語ってこんなにおもしろいし、聞いていて楽しくなるんだ”と思いました。なんか元気が出ました」(5年生男子)
「米紫さんの落語を見て、ふだんあまり笑わない子も笑っていたので、すごいなと、改めて思いました」(5年生女子)
…と、直球で面白さを伝えてくれて、こちらも素直に嬉しいです!
中でも可愛かったのが、
「しょう来のゆめがかわりそうなぐらいおもしろかったです。私も帰る時に落語をやってみたけど、なかなかうまくできませんでした」(5年生女子)
という、この子。
そのまま真っ直ぐ大人になりなさいよ。
間違っても、悪い落語家なんかに捕まるんじゃないよ。
その点6年生は、やっぱり感想文もしっかりしていて、目の付け所が違うな…という子もちらほら。
「落語は修業のつみ重ねでできていくもので、昔からの伝統が300年たった今でもまだ受けつがれているのは、すごいと思いました」(6年生男子)
そう! そうなんですよ! 300年の伝統を受け継ぎつつ、時代にも合わせながら次の世代に伝えていく事こそが、僕らの使命なのですよ!
「ざぶとん1枚の上でいろいろな人や動物の役を1人でやっていて、よく見るとすごくおもしろいおしばいだと思いました」(6年生女子)
そう! そうなんですよ! 落語は様々な登場人物や、景色、そこに生きる人達の体温や息づかいまで一人で表現する、究極の一人芝居なのですよ!
「そこまでいくのには、たくさんの苦労をしたと思います。ししょうの元で3年間修業をする。それもほとんど休みがないのに修業を続けたと言っていた時に、夢を目指して頑張っているのはすごいと思いました」(6年生女子)
そう! そうなんですよ! 辛い事もありましたし、辞めたいと思った事もありましたけど…落語が好きだから続けてこられたんですよ!
ほんまにエエ事書いてくれるなぁ…と思ったらこの子、僕への宛名が「柱米紫さんへ」になってました。
「桂」やからな。そこ、「桂」やから。
そして、何だかこちらが照れてしまうぐらいに、すごくすごく褒めてくれている子もいて…
「落語ははじめて見たのですが、はじめてがこの機会で良かったと思います。なぜかというと、はじめて見たのが“桂米紫さん”だったからです。米紫さんはすごく面白くて、すごく笑ってしまいました」(5年生女子)
「一人一人をえんじ分けているので、とてもそんけいしました。それに、いろいろなネタをかんがえてみんなを笑わせられるところもすごいと思いました。あと、長六小の五・六年の心もつかんでいたので、天才だなぁと思いました」(5年生女子)
“天才”って。“天才”って。
生涯で初めて言われたよ!!
それ、もっと下さい。
けど、ちょっと末恐ろしいような文面の子もおりまして…
「いろんな役を一人でこなして、あんなん私にはできないと思います。だから米紫さんは想像力が豊かですね。若い私が負けちゃいます。米紫さんは40さいですよね? すごく若く見えます。34か35ぐらいだと思いました」(5年生女子)
おい、こら。
おっちゃんちょっと、喜んでもーたやないか。
今回の公演では落語の話以外にも、子供達に向けて“夢”の話も喋らせて戴きました。
最後に、今回一番グッと来た感想文を。
「面白い落語以外に、将来の夢の話もしてくれてうれしかったです。私も、今頑張ってる音楽と英語を伸ばし、自分が熱中できる夢を見つけます。この先どこかで立ち止まったら、今日の落語を思い出して元気をもらい、再び立ち上がります。これからも落語を通して、人々に笑みを届けて下さい」(6年生女子)
僕もこの先、もしもどこかで立ち止まりそうになる事があれば…その時は、君達の感想文を思い出したいと思います。