今日は、大阪城ホールで“大阪一日限り”の「ザ・フー」のコンサートが開催された。
日本では、ビートルズやローリング・ストーンズの陰に隠れてさほど知名度の上がらなかった、1964年デビューのブリティッシュロックバンド…「ザ・フー」の事が、僕は学生の頃から大好きだった。
ザ・フーのロックには、過激さの底に“内省的なもの”が感じられた。
史上初のロックオペラ『トミー』にまず衝撃を受け、アルバムを買いあさった。
特に、ロックオペラとしては第二作目となるアルバム『四重人格』には、依存するくらいに惚れ込んだ。
『四重人格』の、刺々しさの奥に広がるナイーブな世界観は、僕のバックボーンともなった。
そのザ・フーの来日コンサートを観る機会に、今回やっと恵まれたのである!
「ザ・フー」と言っても、オリジナルメンバーだった二人(ドラムのキース・ムーンとベースのジョン・エントウィッスル)は既に他界している為、‘看板’はボーカルのロジャー・ダルトリーと、リードギター(そして、ザ・フーの殆どの曲の作者でもある)のピート・タウンゼントの二人。
バックは、リンゴ・スターの息子であるザック・スターキーや、ピート・タウンゼントの実弟のサイモン・タウンゼントら若い世代が務め、ジジイ二人(ロジャー・ダルトリー64歳、ピート・タウンゼント63歳)をサポートする。
…そう、二人は“ジジイ”なのだ。
それは今回、正直少し不安であった。
「憧れのスターの老いさらばえた姿」を見る事になるのではないかと。
確かに二人は、ジジイだった。
でも、「カッコいいジジイ」だった。
若い頃は、ステージ上でギターを叩き壊すなどのパフォーマンスで、大暴れを繰り広げていたザ・フー。
さすがにもうそこまでの破壊的な事は出来ないだろうが、ロジャーはマイクを空中にグルグル振り回してはキャッチし、ピートは腕をブンブン振り回しながらギターをかき鳴らす…そんな姿に、何だか涙が滲んできてしまった。
デビュー翌年に発表された「マイ・ジェネレーション」で「年取る前に死にたいぜ」と歌い、円熟期の「ユー・ベター・ユー・ベット」では「次に古臭くなるのは誰だ?」と、自嘲気味に“年相応のロック”に取り組み続けたザ・フーは、恐らく今【老い】を楽しみながら、ロックとの蜜月を楽しんでいるのだろう。
スタンド席は空席もちらほらと見られたが…そこら辺りも、ある意味「ザ・フー」らしい。
コンサートの時にしか再結成されず、スタジオ録音のニューアルバムというものが出ない為、往年のヒットナンバーばかりの選曲だったが…それでも、ポール・マッカートニーのコンサートでもジョージ・ハリスンのコンサートでも泣いたりしなかった僕が、今回は嬉しさに涙が零れて仕方なかった。
僕の大事なバックボーンを作ってくれた“恩人”の肉声と生演奏を聴けた、嬉しい嬉しい夜だった。
「ロックよ、長生きせよ!」