1999年(西暦2017年)7の月

空から恐怖の大王(核ミサイル?!)が

降ってくるだろう

アンゴルモアの大王(救世主!)を

よみがえらす為に

その前後マルス(軍事力!)は

幸福の名(核抑止力の名の元!)の元に

支配するだろう

(諸世紀第10巻72番)


『人類を救う"別のもの"を追って!』


「それは起こるでありましょう。

それはたったひとつの場合を除いて避けられませぬ。

それはかつてない大戦乱となって、このミリネールの終わるころ(この千年紀の終わるころ、つまり20世紀末)、世界を火と破滅でおおうでありましょう。

ただ、いまも申しましたように、ひとつだけ、それを避けられる場合がございます。

その条件が満たされさえすれば、そのような破滅の大戦乱が起こることはなくなると思われます。

と申しますのは、もし…………………………」


「もし、"別のもの"が現われれば、ということですね?」


「そうです、王妃様。

よくおぼえておいででした。

たしか去年の冬、わたくしはブロワのお城でこう申し上げました。

………………このミリネールのどんづまり、1999年7の月、空から"恐怖の大王"が降ってきて世界は大破局をむかえると。

しかし、もしもそのとき、"別のもの"が現われていれば、"恐怖の大王"は降らず、破滅は避けられるであろうと。

あれとおなじことです。

"恐怖の大王"が降る前、このミリネールの終わるころ、世界は巨大なマルス(軍備・軍国主義)におおわれ、そのためかつてない大戦乱が惹き起こされます。

しかし、もしもそのとき、すでに"別のもの"が現われていれば、さすがの巨大なマルスも魔力を失い、大戦乱も起こらずに済む、とわたくしには感じられるのです。」


「それは結構なことじゃ。

まれな大予言者のそなたがそう感じたからには、きっとそうなるでありましょう。」

「なれどノストラダムス殿。

そなたはあのとき、こうも言いましたね。

そのかんじんの"別のもの"の正体が、そなた自身にもまるでつかめなくて困ると……………………」


「仰せのとおりです。」

「それが現われさえすれば、このミリネール末期の人々も必ず破滅から救われるのですから、その"別のもの"の正体、わたくしとしてもぜひ予知したいのです。

……………しかし、残念ながら、まだよく見えてまいりませぬ。」


「まだよく見えぬと?

では、少しは見えてきたわけですか?」


「はい、ほんの少しは……………………………」


「ほう、それは聞きのがせぬ。」

「ほんの少しでもそれを教えてたもれ。

早う申してみなさい。」


「はい…………………ではほんの少し、いま見えておりますことだけ……………………………………」


「王妃様、ただいまシュノンソーからの使いがまいりました。

宴の用意をととのえてお待ちするゆえ、王妃様に、ぜひシュノンソーへもお立ち寄りをと……………」


「なるほど、おもしろい、相手になろうぞ。

馬引け!」


と右のような話が少しでも残っていた(侍女の日記などをもとに古い研究者たちが伝えた)おかげで、ノストラダムスが第三次大戦をどうとらえていたか、推測することはできる。

(「ノストラダムスの大予言IV」五島勉より!)


『"恐怖の大王"の前に"別のもの"が現われれば

………………………』


「しかし、そなたはあのとき、"ただし"と言いましたね。

1999年7の月、世界は滅びる、救いはどこにもない、"ただし"と………………………」


「そう………………そうでございました。

たしかにそう申しました。

1999年、恐怖の大王が降る、救いなどどこからも来ない。

ただし、と。」


「そのあとを聞きたい。」

「"ただし"どうなのです?

そなたはあのあと何を言おうとしたのです?」


「しいて申せと仰せられるなら、お教えいたしましょう。

…………………わたくしはあのとき、こう申し上げようと思ったのです。

ただし、もし"別のもの"が………………と。」


「別のもの?」


「はい。」


「それはなんじゃ?」


「わかりませぬ。

…………………それはまだ、遠い霧のかなたにあります。

果たして現われるかどうかもわかりませぬ。

ただ、もしも終わりの前………………恐怖の大王が降る前に、その"別のもの"が現われれば………」


「現われれば?」


「そうすれば、おそらく人間は………………1999年7の月にも、きっと滅びずに済むであろう、と。」


「それは喜ばしいこと。

その正体を知りたいものじゃ。

その"別のもの"とは人間ですか?」


「………………………………………」


「新しい救世主のような?」


「………………………………………」


「申しなさい。

そなたは未来が見えると言った。

"恐怖の大王"のほかはなんでも。

ならばその"別のもの"も見えているのでしょう?」


「いいえ。」

「終わりのころのありさまでわたくしに見えるのは、大地震や飢えや戦いや………………不思議な乗りものや光る鳥………………そして"大王"が降ったあとの惨状…………それだけです。

"大王"が見えないのと同様、その"別のもの"も見えませぬ。

ただ、もし"別のもの"が現われれば、そうした終わりのむごいありさまも消えていくように思われるのです。

………………そのときも戦いや欠乏は起こり、人々は苦しむでしょうが、"恐怖の大王"は降らず、"光の反対のもの"も襲っては来ない………………。

そして人間は、苦しみながらもつづいていくでありましょう。

終わりはたぶん、先に延ばせるでありましょう。

"別のもの"が現われれさえすれば……………」


「別のもの」が現われていれば、最終の戦いは起こらず、恐怖の大王は降らず、もしかすると第三次大戦は食い止められ、人類は大異変を切り抜けて生きのびられる、という暗示ではなかったのか。

「別のもの」は、それほど大きな力を持っているわけだ。

………………では、それは何か?

ノストラダムスの全予言をひっくりかえし、(したがって聖書やキリストの言葉さえもひっくりかえすほどの)それほど大きな力を持つ「別のもの」とは?

ノストラダムスはこれについて、なんの資料も残してくれなかった!

(「ノストラダムスの大予言II」五島勉より!)


晩年の彼(ノストラダムス)は病気がちで、体が膨れあがり、ボロボロにただれる奇怪な症状に苦しんだ。

彼としては『諸世紀』の増補版を書きあげる新しいプランを持っていたらしいが、もうそれどころではなかった。

ほとんどベットに横たわったきりだった。

だが、その苦しみの最中、1563年の冬のある夜、彼は不意に右手を伸ばして、何かを指さし、「おお、見える、あれだ、おお!」と低くうめいた。

「なんですの?何が見えますの?」

彼の2番目の妻、アンヌが駆け寄って聞いた。

ノストラダムスは、しかし答えず、何かかすかにつぶやいたまま、昏睡に落ちた。

つぶやきはついに聞き取れなかった。

そしてあくる朝、妻と友人たちが寝室に入っていったとき、彼はデスクとベッドのあいだで…………

何を書き残そうとしたのか、ペンをつかもうとした姿勢のままつめたくなっていた。

その顔には、絶望の果て、わずかに何かの希望を見つけたような、しかしそれを信じていないような、それでもそれにすがるほかなかったような、謎に満ちた皮肉な微笑が浮かんでいた!

(「ノストラダムスの大予言II」五島勉より!)

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