2024年3月29日(金)

 先月当ブログで言及した(★)NHKの朝ドラ「ブギウギ」が今日で最終回を迎えた。

 ★https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12841625888.html

 正直なところ、前回の記事を書いてから最終回に至るまでの終盤部分の出来は今ひとつで、やたらやかましい若いマネージャーを始めとする新たな登場人物やエピソードに必然性や説得力が感じられず、結果的にこのドラマを傑作や秀作とまで呼ぶことが出来ないまま終わってしまった。

 前回も指摘した主人公役の趣里という女優さんの歌唱力も、ステージの場面が要となる終盤部でさらにその弱さを露呈する結果となってしまい、あえて吹き替えを用いてでも歌手・福来スズ子の造型に誰もが納得するような存在感を持たせて欲しかった気がする。

 とは言え、モデルの笠置シヅ子にもともと興味があったこともあるものの、連続ドラマ嫌いの私に半年間の長きにわたって最後まで見続けたいと思わせてくれただけでも、良質な作品だったと言うことは出来るだろう。

 朝ドラの次回作「虎に翼」では、以前から良い女優さんだと思っていた伊藤沙莉という人が主役を演ずるそうなのだが、果たして「ブギウギ」のように継続して見ることが出来るかどうか・・・・・・。

 

*

 

 続いて本題に入るとすると、ここ一週間ほど、ザ・ビートルズ好きの間で「#ビートルズを語る資格」というハッシュタグ(★★)が話題になっているそうである。

★★https://twitter.com/hashtag/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%82%92%E8%AA%9E%E3%82%8B%E8%B3%87%E6%A0%BC?src=hashtag_click

 

 発端は、某音楽評論家がX(Twitter)で以下のようにつぶやいたことにあるらしい。

 

 

 一体何が「勝ち」なのかを始め、分かったような分からないような、それこそ「小学生みたいな」文章なのだが、数多くのザ・ビートルズ好きたちを憤激させた(らしい)のは、「ゴールド・レーベルのモノラル盤で持っていないヤツに、ビートルズを語る資格なんかないよ」という部分で、これに対して「そもそも音楽を語るのに資格なんか要るか!」や「いつからロックは金持ちの専有物になったのか」といった批判や、「こんなひどいメディアで聴いてきた自分には到底語る資格なんてない」といった自虐まで様々なつぶやきが溢れている。

 

 

 かく言う私は、「ゴールド・レーベルのモノラル盤」なるものがそもそも何なのか詳しく分かってはおらず(知識として知ってはいても実際に聴いたことがないため、何も知らないのと同じである)、この伝によるなら「語る資格」など微塵もないと言うしかない。

 そもそも過去40数年にわたって「ザ・ビートルズ好き」を自称して来たにもかかわらず、これまでレコード(ヴァイナル)で聴いたことのあるのは、(日本の)シングル盤「Let It Be/You Know My Name」と「Get Back/Don't Let Me Down」、そして「All You Need Is Love/Baby,You're a Rich Man」の6曲だけで、いずれも1981年公開の映画「悪霊島」に「Let It Be」と「Get Back」が挿入曲として用いられたことがきっかけで買ったものである。

 しかもこれらを聴いたのは我が家にあったかなり時代物(つまりオンボロ)のレコード・プレイヤーで、要するに音質がどうこう言えるようなレヴェルとは全く別次元の、単にこれらがどんな曲なのかを知ることが出来るだけの最低限な環境においてだった。

 さらに程なくこのオンボロ・プレイヤーが使い物にならなくなると、1980年代当時でも3,000円近くしたカセットテープをなけなしの小遣いをはたいて少しずつ買い集めるしかなく、だから1987年にザ・ビートルズのCDが発売になった時には、その音質の良さにひどく驚愕したものだった(などと書いている時点で、私などは上記の音楽評論家から嘲笑や侮蔑を向けられるだけに違いない)。

 以来私は彼らの曲をもっぱらCDで聴いて来たし、最近ではAmazonで買ったMP3版や、YouTubeにアップされた音源で聴くことが多い。そもそも根がひどい吝嗇家である私は、どんなに好きなものであっても自ずと支出限度額を設けてしまうので、(言ってしまえば)たかが音楽のアルバム1枚に30万円どころか1万円さえも出す気はない(しかもYouTubeなどの普及によってその額は日々どんどん低くなって行くのみである)。

 

 

 その後もこの音楽評論家は、

 

 というコメントに対して、

 

 とか、

 
 などと書いて、ザ・ビートルズ好きたちをさらに挑発し続けた。

 

 要は今回の資格云々発言自体がいわゆる「炎上商法」であることを自ら白状した格好なのだが、そうこうするうちに、ザ・ビートルズ研究家である某氏がこの音楽評論家に「真意」を問うという趣旨らしい以下の動画がアップされた(もっとも動画をアップしているのは音楽評論家の方のようなので、思いがけず反響の大きかった今回の事態をなんとか収拾しようという意図があるのかも知れない)。

 

 

 もっとも対談相手に遠慮でもしているのか、この動画における音楽評論家の発言はX(Twitter)での挑発的な物言いとは打って変わって実に歯切れが悪く、正直何を言いたいのかよく分からない曖昧模糊とした言葉を繰り返すのみである。 

 X(Twitter)でつぶやいた時には感情に任せてつい放言してしまったものの、一旦冷静な状態に立ち返ってみると自らの発言を正当化するのに苦慮しているとでも言ったところだろうか。あるいは端から弁明するつもりなど毛頭もなく、この動画すらをも自著の販促ツールと考えているだけなのだろうか。

 そもそも上のつぶやきにしても「ビートルズ・ファンたち」などという呼びかけではなく、ろくに知りもしないくせにネットで集めた情報を元に記事を書き散らかしている似非ジャーナリストや似非専門家に向けてのものであったなら、それなりの説得力を持ちえただろう。

 あるいはファン向けの発言であったとしても、いわゆる「ビートルズ商法」に簡単に籠絡されることなく、音源を厳選してより良いメディアで聴いた方が彼らの音楽の本質に迫れるだろうといった内容だったなら、今回のような物議は醸さずに済んだだろう。もっともそれでは「炎上商法」の効果は薄れてしまうだけなのだろうが・・・・・・。

 

 今回のX(Twitter)でのやり取りに関して、「やっぱりビートルズやロックのオタクは実に面倒臭い」、「大上段に構えたこうした物言いは単なる「老害」でしかない」、「所詮自分はこんな音源しか聴いて来なかったと言いながら、ちゃっかり手持ちのレア音源を披露して自慢合戦している人が多い」などといった意見が溢れているのだが、個人的にはこの音楽評論家のことをほとんど知らず、これまで著書や記事も全く読んだこともないこともあり、上に紹介したような2、3の「つぶやき」だけでこの人についてあれこれ批評したり判断したりするつもりはない(ととりあえず言っておこう)。

 

 ただ、如何に高音質でレアな音源だとしても、そのことで語ることが出来るのは音質や稀少性についてであって、音楽そのものについて語るには音質や稀少価値は(全くないとは言わないものの)本質的に関係ないはずである。

 そしてもしオリジナル音源やオリジナル演奏にしか真の価値はないといったことを突き詰めてしまうなら、同時代に生で演奏に接したことのある人間しか「語る資格」を持たないことになってしまい、クラシック音楽を始めとする過去の音楽について現代の我々は何も語ることが出来なくなってしまうだけだろう(むろん上記の音楽評論家にしても然りである)。

 

 語る資格のあるなし云々よりも個人的に収穫だったのは「今回のやり取りを見ていて以下のYMOの曲(?)を思い出した」というコメントで、このケッサク極まりない曲を耳にして、これまで決して真面目に聴いて来たとは言えないYMOの音楽を改めて聴き直してみようかと思っているところである(特に伊武雅刀が素晴らしい)。

 

 

 これは後日の追記だが、ドケチでアルバム1枚に大枚をはたく気のさらさらない私も、件の「ゴールド・レーベルのモノラル盤」なるものを一度は聴いてみたいと思わないでもない。どこかの中古レコード店なり試聴会などで聴ける機会が訪れれば良いのだが、そもそもレコード(ヴァイナル)に全く関心のない私がそうしたお店に近づく機会は今後も皆無と言って間違いなく、おそらく生涯「ゴールド・レーベルのモノラル盤」を聴く機会は訪れないのだろう。嗚呼・・・・・・。