2023年11月3日(金)

 11月に入り、今年も余すところ2ヶ月となってしまった。

 

 

 最初に毎月のことながら、今日は亡き愛犬の月命日である。

 上と下の写真および動画は、アパートの入口にあるちょっとした庭の上をウロウロする愛犬の様子である。既に10年以上前になるが、周囲に誰もいないのを良いことに、リードをはずして愛犬をしばし勝手に歩かせた次第。当時はリード着用を規定する法律がなかったこともあるものの、自分でもマナー違反は重々承知の上で、少しだけでも自由に歩かせてあげたかったというのが本心である。

 人間であれ動物であれ魂の存在も死後の世界も信じてはいないものの、一方で心のどこかでは今も愛犬がこの動画のようにあちこち自由に走り回っていることをひそかに願ってもいる。RIP.

 

 

 さて、前回およびしばらく前の記事(★)で言及したザ・ビートルズ最後の新曲「Now and Then」と、デビュー曲「Love Me Do」のシングル版2023リミックスがとうとう発表になった。

https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12826196912.html

 https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12808206939.html

 

 どんな曲であるかは、以下で実際にお聴きになって各自ご判断いただきたいと思うが、私自身は(事前に予想していたように)最初に耳にした瞬間から少なからぬ失望を禁じ得なかったというのが正直なところである。

 

 上の過去記事にも書いたことだが、以前からYouTubeなどで聴くことの出来たジョン・レノンによるデモ自体が私には優れているとは思えず、特に「I don't wanna lose you」という歌詞以降の中間部分(★★)はジョン・レノンの歌声もピアノもところどころ音程がはずれ、そのままではとても公式発表できるような演奏水準ではないとしか思えなかった。

★★ 以下の動画の1分25秒以降2分11秒前後まで。いつ削除されるか分からないので、複数貼付しておく。

 今回この曲を「最後の新曲」として発表するにあたり、現存メンバーのポール・マッカートニーやリンゴ・スターを始めとする関係者たちも、やはりこの部分を残すのは無理だと判断したのか、上記パートをバッサリ削った上でストリングスやベース、コーラスなどを加えた上、間奏部分を新たに追加して曲を完成させている(この「Bメロ」部分こそが原曲の「サビ」であって、核心部分を削除した暴挙は許しがたいという意見も(特にビートルズ・マニアの間で)あるようだが、歌や演奏のクオリティが余りに低過ぎて使用に耐えなかったのだろうと、私はあくまでこの決断を支持したいと思う)。

 その意味では原曲の使用可能な部分を出来るだけ生かしながら、それなりの形に仕上げた(そこそこうまくやった)とは言えるだろう。少なくとも初めてデモ演奏を聴いた時ほどの失望を覚えずに済んだことだけは確かである。

 

 AIを活用してバックのピアノ演奏と分離させたことで、ジョン・レノンの歌声は元のデモ演奏より格段にクリアになっているし、ポール・マッカートニーのカウントダウンから始まるこの曲は全体的にもそれなりにまとまった作品にはなっている。何度も聴き返しているうちに耳に馴染んで来て、今では「それほど悪くない」とさえ思えるものの、しかしそれでもこれを「傑作」と呼ぶのは厳しく、とりわけザ・ビートルズの傑作の数々と比べてしまうとなんとも物足りないと言うしかない(1995~96年の「アンソロジー」プロジェクトの一環で、やはりジョン・レノンが残したデモ演奏をもとに作られた「Free as a Bird」や「Real Love」と比べても見劣りがする)。

 

 今回この「Now and Then」が発表されることになった経緯については、昨日YouTubeで公開された上の動画を見て頂ければと思うが(日本語字幕あり)、私がもうひとつ気に食わないのは、今回のシングル盤のカヴァーに用いられているデザインである(下の画像参照)。

 

 

 果たしてこれが最終的なカヴァー・デザインなのか、それとも明日発表になる映画監督のピーター・ジャクソンが担当した「Now and Then」のミュージック・ビデオ(★★★)などで正式なデザインが追加発表になるのか分からないものの、もし仮にこれが最終的なカヴァーだとしたら、センスのかけらも何もない無惨なデザイン(とすら言えない代物)だと言うしかない。

★★★ 以下参照。

 そこでインターネットであれこれ検索していると、とあるサイトに今回発売になるシングル盤のカヴァー画像として以下のようなイメージが掲載されているのを見つけたのだが、もしこれが最終的なデザインであるなら、まだしも多少は美的センスがあると言えるかも知れない。果たしてどうなるか刮目して待ちたいと思うが、正直余り期待できそうにないのも確かである。

→その後、公式サイトでも下の画像が見られるようになり、レコードやCDの裏カヴァーにこの画像が用いられているようである。めでたしめでたし。それにしてもなんで上のようなダサいデザインを表カヴァーにしたのか全く理解不能で、現役時代のザ・ビートルズならば、このようなセンスのない代物の使用は許可していなかっただろう。

 

 

 ちなみに両A面扱いで「Now and Then」と共に発表になったデビュー曲「Love Me Do」のシングル版2023リミックスは以下の通りである。

 

 個人的には「Now and Then」よりも、最新技術を用いた「Love Me Do」の「リアル・ステレオ・ミックス」の方に遙かに期待を寄せていたのだが、実際に聴いてみるとヴォーカルや演奏は綺麗に分離されているものの、事前に期待していたような「ステレオ感」が感じられず、これまた大いに失望させられたと言うしかない。

 「Love Me Do」のリミックス具合がこの程度だとするなら、11月10日に発売になる(私も予約購入してしまった)「赤盤」「青盤」の2023リミックスも大したことがないのではないかと心配になってしまう。

 

 ともあれ、過去のデモ録音や別ヴァージョンなどは(未発見のものも含めて)今後も発掘され公開されていくだろうものの、ザ・ビートルズの「新曲」はこれで完全に打ち止めとなってしまった訳である。果たして最後の「新曲」が「Now and Then」で良かったのかどうか意見は分かれるだろうが、「最後の新曲」発表という話題に多少なりともワクワクさせられたことは間違いない。

 今後どれだけ長く付き合っていけるか分からないものの、バッハやモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどのクラシック音楽と共に、ザ・ビートルズの音楽を死ぬまで聴き続けていくことだけは間違いなく、幸いにして何百回、何千回繰り返し聴いても少しも飽くことのない(むしろ聴くたびに新たな発見がある)傑作・名作の数々が我々には残されている。

 そして今回、たとえ傑作や名作の名に値しないような作品だとしても、ザ・ビートルズの公式曲がまたひとつ増えたことは素直に喜びたいと思っている。Peace & Love ! (© Ringo Starr)