ぶどうの実がいつのまにか大きくなっていた。
ぶどうは花が地味である。
小さな粒のような花を咲かせる。
花びらは蓋のようになっていて、それが落ちると雌蕊とそれを取り囲む雄蕊が顔を出す。
ぶどうの花は風媒花といい、虫の力を借りなくても風の力で受粉できる。
ぶどうの房の上部の花を枝から切り離して、下の部分だけを残し、粒を大きく育てる。
ぶどうの葉は、ギザギザである。
このギザギザは鋸歯と呼ぶそうだ。
鋸歯は、光合成の働きを上げるためという理由の他に、このギザギザの先には水孔があり、余剰な水分を放出する機能もあるという。
しかしそれだけで葉の形がギザギザになるというのは理由としては弱いらしい。
生き物の形は、必然の結果ではなく、特に良くも悪くもないのでそうなっているという解釈が多いそうだ。
ぶどうの葉っぱのギザギザの先端に丸い小さな雫がしがみついているみたいで愛おしい。
葉っぱの卵みたいにも見える。
水の雫は、生き物の表面に弾かれたときに丸くなる。
零れ落ちて、弾けて、形を失うまいと必死だ。
水には形がないのに、そのときばかりはこんなに可愛らしい姿になるのだから、不思議だ。