梅干しの危機 | 想像と創造の毎日

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  夏に漬けた梅は、塩辛さと酸っぱさが馴染み、だいぶまろやかな味になってきた。

  しかし本当は3年から5年熟成させたものが美味しいという。

  


  梅の産地の道の駅などで売っている梅干しや漬物などがピンチだそうだ。

  食品衛生法の改正により、大幅な施設の改善を余儀なくされ、そのためには多額の費用が必要となり、主に地元のおばあちゃんである製造者がこれを機会に辞めてしまう人が出てくるだろうというのだ。



  梅干しは元々、塩分濃度を高くすれば、保存が効くものである。

  しかし、家庭で消費する分には問題なくても、知らない人に売るとなると絶対に食中毒は出せないから、製造過程を明確にし、菌が混入しない施設を整えなくてはならなくなったのだろう。

  その分、塩だけの梅干しはこれからさらに値上がりすると見られる。


 またスーパーの梅干しは、昨今の減塩嗜好で、塩分濃度が低く、また甘いものが消費者から求められるため、糖分を加えたり、低くなった塩分の保存性を補うため、添加物が追加される。


  本物の梅干しを安く食べるためには、もう自分で作る以外にない。

  

  しかし作ると言っても、そんなに手間のかかるものではないと思う。

  梅を洗って、アクを抜いて、ヘタを取り、塩で漬けるだけだ。 

  しかも、その際に副産物として出る梅酢は、他の野菜の漬物やドレッシングや酢飯の合わせ酢に使用出来る。

 

 梅を氷砂糖で漬ければ梅シロップにもなる。


 

  梅酢は水で薄めて、お好みで砂糖を加え、今回は長芋を漬けた。



  そして、ご飯に混ぜて酢飯を作り、細巻きにする。



   これは、手作り沢庵を巻いたもの。



  そもそも漬け物は、昔は買うものではなく、作るもだった。


  この辺では梅は手に入らなかったから、近くの商店の人が漬けたものを買っていたと思う。

  大きな樽に入ったものを店頭で量り売りしてくれて、それがすこぶる真っ赤(これは人工の着色料だったと思われるが)で、ひどく酸っぱかったのだが、とても美味しかった。

 

  食を他人の手に預けてきたくせに、何かあると全ての責任を造り手に背負わせる。

  造り手も買い手も互いの顔が見えないから、どちらのことも想像できなくなる。

  そういうことが、どんどん食文化を衰退させていくのだろう。

   

  しかしそうなることによって改めて、食の安全と作る喜び、食べる楽しみは人々の手に戻るのかもしれない。